サラの日記724(……いい……よ。今行……く)

銀菓神暦2017年3月30日

<ミシェル? ミシェル?>
<……>
<ミシェル?>
<……サラ……>
<繋がりにくくなってきたわね>
<……そうだね……。……大丈夫?>
<うん、大丈夫>
<……よし。それで……こそ……僕の奥さんだ>
<いつくぐるの?>
<……何事も……無け……れば………二、三日……中に>
<うん。……手を繋いで欲しい。繋がっていられるうちに>
<……いい……よ。今行……く>

サラの日記723(おいおい、どっちだよ、サラ)

銀菓神暦2017年3月29日

<今日はね、船内の畑の当番だったんだ>
<船では何を作ってるの?>
<なんでも。色々作ってるよ。ほとんどは食料用だけど、観賞用の区画もあるよ>
<タンパク源は?>
<動物性のものは地球から持って出たものだけ。植物性のものは、地球から持って出たものが尽きたあとも畑で作れるよ。この船すごいんだ。火星での生活拠点に使える仕様に造られてる。まあ、地球からの食料が尽きる前には地球に帰って来たいものだけどね>
<じゃあ、火星に新しく建設したりはしないの?>
<うーん、どうかなぁ……。船の限られたスペースでの生活に耐えられる人には不要だろうね。でも、自由を求める人は新しい住まい造りを始めたりするかもしれないね>
<ミシェルはどっちの人?>
<僕は……、そうだなぁ……、建てちゃおうかなぁ>
<建てちゃうの? 建てちゃうんだ……>
<どうした?>
<心配だから……。何か事故でもあった時に、……心配だから>
<じゃ、やっぱり建てるのやめよっかな>
<えーっ? やめちゃうの?>
<おいおい、どっちだよ、サラ>
<……どっちでもいいの。ただ、無事に帰って来て>
<うん。分かってる>

サラの日記722(あ、だけどさ、あまり気にし過ぎるな。)

銀菓神暦2017年3月28日

<サラ。いいか? 信用していいのはカリンとシュウくんだけだ。他は……疑えとは言わないが、用心しておいた方がいい>
<ジャックさんも? ジャックさんも信用しちゃだめなの?>
<……分からない。けど、分からないものは、完全な白でないものは、信じ過ぎてしまわない方がいい。銀菓神局も、信じ過ぎない方がいい>
<……>
<ただ営利の追求のためだけに、銀菓神界をかき回そうとしてる者たちが居ることは確かなんだ。……正体はつかめないんだけど、局と密に通じている者かもしれない>
<うん……>
<銀菓宝果は任せたよ。あれは銀菓神界の源。万が一の時は、花綵(はなづな)アグルムのことよりも銀菓宝果の方を守って欲しい。国は僕らが頑張ればもう一度立て直すことができるが、銀菓宝果は一度失ってしまったらもう戻らない>
<はい>
<あ、だけどさ、あまり気にし過ぎるな。サラはすぐに顔に出る>
<……>
<これまで通りに、いつも通りにしてればいいよ>
<うん……>
<何かあれば、小さな彼女が きっと力になってくれる。半分は僕の血を引いてる>
<……>
<僕が居ない間のことは、あらかじめ、できるだけの手を回してある。僕の想定内なら、サラが困るようなことは何も起こらない>
<うん……。……ねえ、ミシェル>
<ん?>
<ミシェルは、……分かってるのに行く……ううん、なんでもない>
<……サラが今思ってる通りだよ。僕に火星勤務の辞令が出たのは、どこかの誰かさんからしてみれば、……挑戦状なんだよ。『止められるものなら止めてみな』ってね>

サラの日記721(今日はいつもより薄いの)

銀菓神暦2017年3月27日

<ミシェル? 今日はいつもより薄いの>
<薄い? 何が?>
<交信の感じ方っていうのかな……>
<そっか。サラには隠せないね>
<もうそろそろなの? 交信、できなくなるの>
<いや、まだ大丈夫だよ>
<じゃあ、どうして薄いの?>
<星間移動用鳥居の準備が始まったんだ。力の一部を、少しずつ別の場所にプールしてる>
<そうなのね……。もうすぐなのね>
<サラ。そんなに寂しそうにしないで。心配で気持ちがぶれてしまう>
<うん……>
<大丈夫だよ。さっさと行ってさっさと帰ってくる。さっさとこの仕事を終わらせて、僕たちを一緒に居させたがらない奴らの陰謀もあばいてくるよ>
<うん……>
<サラから、色んなのがあふれてる>
<うん……>
<一粒も残らず受け止めたい>
<うん……>

アロゼの休憩室72「春休みを迎えました。」

サラちゃんたちの世界でもそうですが、
我が家も春休みを迎えました。
娘の春休みにあわせ、私もパートの仕事のお休みをいただいたのですが、
やりたいこと、やらないといけないことがたくさんたまっていて、
あっという間に過ぎてしまいそうな予感がしています。

ただいま、落花生を楽しむ、とあるグッズを作成中。
完成まで今しばらくお待ちください。

サラの日記720(手刀方式の集団バージョン)

銀菓神暦2017年3月26日

<ねえ、ミシェル?>
<ん?>
<星間移動用鳥居って安全なの?>
<んー。自分たち次第……かな。鳥居は、地球圏でやってる手刀方式の集団バージョンで出すわけだからね>
<え? 手刀方式の集団バージョン? そんな不安定なので行っちゃうわけ?>
<うん、行っちゃうわけ。あ、でも大丈夫だよ。みんな経験五年以上の中堅だから>
<中堅? ベテランの人はいないの?>
<んー。新人ではもちろんだめだし、ベテランでもだめなんだ。ベテランさんには年齢的なものからくる不具合が……>
<……そうなのね>
<あ、でも、船長はベテランさんだよ。何かあれば心強いアドバイスは受けられる>
<ふーん。そうなのね……>

サラの日記719(星間移動用鳥居までには間に合わせるから)

銀菓神暦2017年3月25日

<サラに言っておかないといけないことがあるんだ>
<何?>
<地球の磁気圏を抜けたら、星間移動用鳥居をくぐるんだ>
<星間移動用鳥居?>
<うん。このままの速度だと、片道だけで何ヶ月も掛かっちゃうからね。……でさ、星間移動用鳥居をくぐると……>
<うん、分かってる。もう、繋げなくなるのね>
<うん……>
<あ、そうだ。ミシェル、昨日言いかけてたことがあるでしょ? 何?>
<あ、うん。子どもの名前。ミドルネームにさ、ブルジョンはどう?>
<ブルジョン? つぼみとか芽生えって意味の?>
<うん>
<分かった。そうするわ。私も気に入ったから。で、ファーストネームは?>
<もうちょっと待ってて。星間移動用鳥居までには間に合わせるから>
<うん>

サラの日記718(ミシェルは心配する?)

銀菓神暦2017年3月24日

<ミシェル? 交代の時間で合ってた?>
<お、うん。……ちょっと待って。今終わる。……どうした?>
<あのね。シュウちゃんが部屋に来たの。……気にする?>
<シュウくんが? 何かあったの?>
<ううん。何もなくて、ただおしゃべりしに来たの>
<ちょっと待ってて。シュウくんの意識体を覗いてみるから……>
<うん……>
<……えーっと、シュウくんは……。んー……。ん、大丈夫だよ。サラを一人にしておくのが心配で来てくれただけ……かな。サラが心配しているようなことは……多分無いよ>
<ミシェルは? ミシェルは心配する?>
<心配しないよ。シュウくんを信頼してる。……それと、……サラを信頼してる>
<うん……>
<あ、それよりさ……。あ、ごめん。呼び出されてるんだ。行かなきゃ>
<うん。じゃあ、またね>

サラの日記717(許すってなんなんだよ。許すって。)

銀菓神暦2017年3月23日

<今日は何してた?>
<……ミシェル、ちゃんと繋いでくれてた?>
<繋いでたよ。ずっと>
<じゃあ、どうしてそんなこと訊くの?>
<繋いでたよ。繋いでたけど、なんとなく訊いてみただけだよ>
<じゃあ、今日、私が何してたか言ってみて>
<サラは今日、シュークリームをたくさん焼いて、クリームもたくさん炊いて……>
<いいわ。許してあげる>
<許すってなんなんだよ。許すって。僕、何も悪いことしてないよね?>
<うん。ミシェルは何も悪いことしてない。ちゃんとずっと繋いでいてくれてた。だから許してあげる。で、ミシェルは? 今日は何をしてた?>
<船の中の設備の使い方を色々勉強してた。やっぱり、もらってたマニュアルだけじゃ分かんないことだらけだよ。この分じゃ、火星に着いてからも分かんないことだらけだろうな……>

サラの日記716(あったかい……。)

銀菓神暦2017年3月22日

<ミシェル? 今日はね、桜餅をたくさん作ったのよ。でも、よく売れたのは桜餅じゃなくて>
<シュークリーム?>
<うん!>
<桜、咲いた?>
<うん。少しずつね>
<……名前さぁ。サクラにしようか……。それとも、モモとかウメがいいかな>
<もう、ミシェルったら。生まれてくるのは秋なのよ?>
<秋か……。じゃあさ、ミドルネームに春の花の名を入れよう>
<ミドルネームに? ミドルネームにはお義父さまやお義母さまの>
<いいよ。もうそういうのは考えなくていいよ。僕たちだけで決めてしまおう。新しい時代をつくろう>
<……ミシェル、ずるいわ>
<ずるい?>
<だって、この子が生まれる頃、ミシェルはきっと、まだ火星勤務中よ。直接申し出ることになるのは私だもの>
<大丈夫だよ。僕が銀菓神使になったことも、僕がサラを選んだことも、僕が火星に行くことも、全部許してきてくれた最強の両親だ>
<そうかなぁ……>
<そうだよ。そして、サラにとってはもっと最悪なことに、僕は、そんななんでも来いの両親の血を継いでる。……いきなり一人にしてごめん……>
<……うん。……でも大丈夫。もう慣れちゃったわ。ミシェルは最初っからそうだったもの>
<……泣かないで。……そうだ。ここならまだ……>
<あったかい……。すぐ近くに居るみたい……>

サラの日記715(中心部はとっても温かいのに、)

銀菓神暦2017年3月21日

<ねえ、ミシェル? 今、ミシェルには何が見える?>
<地球の、全体が見えるようになったよ>
<月は?>
<ん……、月は見えないな。今ここからは>
<そっかぁ……。ね……、私たち、月までは飛べるじゃない?>
<うん>
<月まで飛んで、ミシェルが乗ってる船に飛べるかな……>
<えっ? だ、だめだよ! そんな危ないこと>
<大丈夫。ちょっと思っただけ。本当にはしないから>
<うん……。ね、サラ>
<なあに?>
<緊張してる?>
<ん? どうして?>
<サラの心が、……中心部はとっても温かいのに、表面がかちかちに固まってるのを感じる>
<大丈夫。中心部が温かいのなら、そのうち溶けるわ>
<ありがとう。強くなったね>
<うん……>
<……じゃ、そろそろ交代の時間だ>
<うん。でも、繋げておいて。お願い>
<もちろん。じゃあ、また>
<うん。また>