サラの日記78(ルセット先生の腕に導かれるままに抱き寄せられました。)

銀菓神暦2015年6月23日

メランジェ製菓室で、いつものようにシロップに木べらを入れていたら、
鍋の中いっぱいに光の粒が、まるで天の川のように湧いてきました。
見られてはいけないような気がしました。
メランジェ先生が部屋に入って来られ、
――お願い、静まって……――
そう願いました。
メランジェ先生が鍋を覗きに来られ、もうだめかな……と思って目をつぶりました。
メランジェ先生は、「ちゃんと見てないと焦げますよ」って通り過ぎて行かれ、
鍋の中を見ると、キャラメル化したシロップが煙を出そうとしているところでした。

昨日のことを思い返すと、放課後、地下に行くことをためらいました。
でも、
――きっとルセット先生も同じ。私がいつものように……――
その気持ちだけを頼りに、地下の製菓室の扉を開けました。

――真っ暗……――
そう思いながらぐるっと見渡してみると、一番奥の作業台にだけ照明が点いているのが見えました。
ルセット先生と目が合って、そのまま少しの時間が経ちました。

「もう……来てもらえないかと思った……」とルセット先生が口を開きました。
空調の音だけが静かに聞こえる時間が流れました。

「来ます! パートナーだから!」
頭で考えるよりも先に、勢いよくそんな言葉が飛び出していました。
ルセット先生の、さっきまでの硬い表情がふっと和らいで(やわらいで)、
「ありがとう」って、いつものルセット先生の笑顔が見えました。

だけど、次の瞬間、ルセット先生の表情から、再び笑みが無くなりました。
「サラ……。秘伝のソースを作れるようになって欲しい。できるだけ早く」
それからまた、にっこり笑ったルセット先生が、
「できるよ。できるまで教える」と。

「サラ……。これから秘伝のソースのレシピを教えるから、……怖がらないでじっとしてて」
ルセット先生はそう言うと、銀菓神使スーツを着装されました。
銀菓神使スーツの着装を目の前でちゃんと見たのは初めてでした。
きらきら揺れる光の粒が全身から溢れ出して、光が治まると、そこには着装したルセット先生がいらっしゃいました。
ルセット先生の腕に導かれるままに抱き寄せられました。
ルセット先生の腕が背中に回って、それからもっとぎゅっと……。
「サラ……。伝わってる……?」
紙に書かれたような理路整然としたものではない、色々な感情も伴った、でも、レシピだと分かるものが伝わってくるのを感じながら、ゆっくりうなずきました。
「サラ……、心で憶える(おぼえる)んだ……。このレシピは、この世界で、僕とサラしか知らない……」

ルセット先生の腕がゆっくりほどけて、ルセット先生は着装を解除されました。

――じゃあ、ルセット先生はこのレシピを誰から? どこから?――
と思いましたが、聞くことじゃない……と感じました。

「疲れた?」
ルセット先生が聞いてくださったので、
首を横に振ると、
「疲れないのは……いいパートナーだ。サラ」って、にっこりしてくださいました。