サラの日記77(いつの間にか銀菓神使スーツを着装しているルセット先生のマスクの唇が、優しく重なっていました。)

銀菓神暦2015年6月22日

地下の鳥居で、異次元時空間ゲートを自分の繋げたい場所に繋ぐ練習をしました。
行き先は、私の希望で、前にルセット先生が見せてくださった写真にあった、自生の草がたくさん生えているところ。
この間の大失敗みたいに渾身の力を込めなくても、普通サイズのゲートが出せました。
ゲートに入るのも、前みたいには気分が悪くなったりしませんでした。

ゲートの向こうの草は、ふかふかの絨毯(じゅうたん)みたいに茂っていて、嬉しくなって寝っ転がりました。
ところどころに大きな雲が浮かぶ青い空がどこまでも広がっていて、
目を閉じると、風の音と草の匂いが、心地良く何度も通り抜けて行きました。

唇に、冷たくて硬いものが触れているのを感じて、
何だろうと思って目を開けました。

いつの間にか銀菓神使スーツを着装しているルセット先生のマスクの唇が、
優しく重なっていました。

「言えないんだ。サラを巻き込む学則違反になってしまうから。でも、……伝えたい」
ルセット先生はマスクの唇を重ねたままでした。
無機質なマスクの向こう側から、ルセット先生の温かさと、優しさと、淋しさと、
それからもっと奥深くにある闇のようなものが、ゆっくり伝わって来るような気がしました。

「……伝わってる」
胸のずっと奥深くから湧き出てくる、何の涙だか分からない涙が、ゆっくり、ゆっくり、流れて行きました。

ルセット先生は着装のまま私の横に寝っ転がって、
私の手を握って、空を見上げていらっしゃいました。
先生の手、着装のままでも、優しくて温かいのが伝わって来ました。
マスクの下の表情は分からなかったけれど、
先生、泣いてた……
……ような気がする。

ルセット先生は戻りのゲートに入る時も着装のままで、
帰りに送ってくださった時も着装のままでした。

いつもなら「ずるい」って思っただろうけど、
今日は、「そのままでいいよ」って、「そのままでいて」って、
そう思いました。