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サラの日記70(ルセット先生の製菓コートからは、バターと砂糖と小麦粉の、甘くて優しい匂いがしました。)

銀菓神暦2015年6月15日

放課後、大きい方の製菓室に居たら、
「見た……?」ってルセット先生が覗き込むように。
あのことだよね……って思いながら うなずいたら、
「じゃあ、行こうか」って。

どこに行くんだろうと思いながら、言われるがままに付いて行きました。

植物館の、この間 銀菓宝果を見た鳥居にルセット先生が手をかざすと、鳥居の下に異次元時空間ゲートが現れました。
本物を見るのは初めてだったけど、すぐにゲートだって分かりました。

ルセット先生が小さな声で、「見付かったら学則違反だから早く入って」と。
何が何だか分からなくて戸惑っていたら、ルセット先生が ぎゅっと手を引いてくれました。
ゲートの中は息苦しくて、空気が重くて、何も見えなくて、
ルセット先生の手を離さないように一生懸命握っていました。

「見て」とルセット先生の声が聞こえて、いつの間にか ぎゅっと閉じていた目を開けました。
大学の植物館と繋がっている、四次元時空間施設の温室の中でした。

白い花がたくさん。
あの写真の木と同じ。
初めての匂い。
サラノキ。

ルセット先生が「大丈夫? 気分悪くない?」って言ってくださった途端に気分が悪くなって、血の気が引いていくのを感じて、その場に座り込んでしまいました。
「ごめん。ゲートは ちょっと早過ぎたかな」って言いながら、ルセット先生も隣りに座って、ゆっくり背中をさすってくださいました。

ルセット先生の優しい声が続きました。
「銀菓神使 代々の慣習なんだ……。ルセットのパートナーはアロゼ。でも、そのことでサラさんを辛いことに巻き込んでしまうかもしれない。今ならまだ……やめられる。これは学則違反ぎりぎり、グレーゾーンの情報」
私の様子をうかがうような間(ま)が空いて、「僕には強制できない。サラさんに決めて欲しい。……やめても……構わない」と。

ルセット先生と離れたくないと思いました。
「やめない」って言いながら、一生懸命、何度も首を横に振りました。
ゲート初体験で気分が悪いのか、首を振り過ぎて気分が悪いのか分からないぐらいに。

「じゃあ……、僕が何をすることになっても信じていて……」
そう言ったルセット先生の横顔には、優しい微笑みと、少しだけ悲しい影が見えました。
血の気が戻らなくて気が遠くなっていくのを感じながら、ゆっくり縦に首を振りました。

気が付いたら、薄暗くなり始めたサラノキの前で、ルセット先生の肩に頭を置いていました。
ルセット先生の製菓コートからは、バターと砂糖と小麦粉の、甘くて優しい匂いがしました。

サラノキの下で、ルセット先生と私は、銀菓神使として、パートナーであることの契りを結びました。
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