サラの日記513(外に出ることしか考えていなかったので……)

銀菓神暦2016年8月31日

メランジェ先生からご提案いただきました。
「夏休みが明けたら、学部の方で教育実習してみませんか?」
「教育……実習ですか?」
急な話に戸惑っている私に、メランジェ先生は続けられます。
「学部の講師としてこのキャンパスに残りませんか?」
「え、あの……」
メランジェ先生は、私が何かを話すのを待っていらっしゃいます。
「あの……、あの……。外に出ることしか考えていなかったので……」
「そうですね。私も、サラさんには、外へ出るための指導ばかりしていました。ですが、外に出るのはもう少し先でもいいのではないかと……」
「私、まだ外に出るには早いんですか? 勉強が足りないってことですか?」
「いえいえ、そうではないのですよ。サラさんならどこへ行かれても、きっときちんとお勤めでしょう。ただの年寄りのわがままです。手放すのが惜しくなった……とでも言うのですかね。悪い癖です。ルセット先生のことも、そうやって引き止めました。もっとも、彼は、私に言われなくてもここに残っていたでしょうがね」
メランジェ先生は穏やかな笑みを浮かべながら、準備室の方へ入っていかれました。