サラの日記414(闇の隙間(すきま)から光が差してるみたいに)

銀菓神暦2016年5月24日

夕方、ルセット先生と一緒に帰ろうと思って研究室を覗きに行くと、銀菓神使スーツを何度も着装したり解除したりしているルセット先生の姿が見えました。

「どうしたの? 銀菓神使スーツ、何かおかしいの?」
「うーん……」
ルセット先生は着装した姿をステンレスのボールに映して、首元に手をやっています。

「ねえサラ。ルセットの力だけで着装しても、ここが白いままなんだ……」
ルセット先生が首元に手をやったまま私の方を向きます。
「やっぱり……」
私がもらしたその言葉に、ルセット先生は「えっ?」と反応します。

「実は昨日、ミシェルの意識体を覗いてみたの。そしたら、漆(うるし)の曙塗(あけぼのぬり)みたいになってたの」
「漆の曙塗? ……って何?」
ルセット先生は着装を解除されました。
「カリンさんが作ってくれた横笛みたいな漆の塗り方。朱漆(しゅうるし)の上に黒漆を塗って、部分的に下の朱が見えるように研ぎ(とぎ)出す塗り方。ミシェルの意識体、前は真っ暗闇だったのに、昨日見てみたら曙塗みたいになってた。闇の隙間(すきま)から光が差してるみたいに」

ルセット先生はしばらく黙り込んだあと、ぽつりとこう言われました。
「怖いよサラ。自分が変わっていくのが怖い」
「……私のことは、たくさん変えてきたくせに」
冗談半分にそう言うと、ルセット先生はいつものように穏やかに微笑んでくださいました。