サラの日記331(使い方を誤れば……、あるいは故意に、ルセット先生やサラさんに危害を加えることもできてしまいます。)

銀菓神暦2016年3月2日

昨日の雪から一変。
風はまだ冷たいけれど、ぽかぽかして気持ちの良い天気です。
中庭のベンチに座って、のし棒横笛と西瀬忍の手入れをしていました。
太陽の光を浴びて、のし棒横笛と西瀬忍も気持ち良さそうです。

ルセット先生がやって来られました。
「ちょっと借りていい?」
ルセット先生は、のし棒横笛を吹き始められました。
私も、西瀬忍で その音に合わせました。

1年生の棟の屋上に人影が見えました。
太陽がまぶしくて、はっきりは見えなかったのだけど、あの背格好はケンジさんでした。
ケンジさんに届いて欲しいと願いながら、西瀬忍を吹きました。
ルセット先生も、私のそんな様子に気付いてくださっているようでした。

ルセット先生が、屋上のケンジさんに向かって手招きされました。
しばらくすると、ケンジさんの姿は屋上から消えて、私たちの前に現れました。

ルセット先生は言われます。
「サラのセカンド・パートナーになって欲しい。過去の歴史はケンジには関係ない」
ケンジさんは、ゆっくり首を横に振って、目を伏せられました。
ケンジさんは目を伏せたまま、静かに口を開かれました。
「先日のことで、ルセット先生もお気付きのはずです。何世代もの時間を経た今でも、銀菓神使ミエットの力は、銀菓神使ルセットの力に害を及ぼしてしまいます。使い方を誤れば……、あるいは故意に、ルセット先生やサラさんに危害を加えることもできてしまいます。私にそのつもりが無くても、ミエットの力がそうしてしまうかもしれません。……セカンド・パートナーのお話は、……お受けできません」
「……サラだけでいいんだ。僕のことは考えなくていい。サラだけ守ってやって欲しい」
ルセット先生は、つぶやくように そう言われました。
「ルセット先生は、どうしてそんなにお人よしなんですか!」
ケンジさんが声を荒げます。
「ケンジが……」
ルセット先生は少し声を詰まらされましたが、すぐにその続きを、ほとんど叫びながら一息に吐き出されました。
「ケンジがプラクミーヌの王族だからだ! プラクミーヌの陰の王子、ケンジ・エタン・ド・プラクミーヌ! 君の立場なら分かるだろ! 今の僕の気持ちが!」
「……ご存じだったのですね」
ケンジさんは、ルセット先生の勢いに押し倒されたかのように、その場に座り込まれました。
「力になって欲しい。サラにだけでいい」
ルセット先生はケンジさんの方を真っ直ぐ見詰めて、そう言われました。
「……考えさせてください。国のことが関わるとなると、ますます私の気持ちだけでは……」
「分かった。いい返事を待ってる」
ルセット先生がそう言われると、ケンジさんはゆっくり歩いて行かれました。