サラの日記322(ルセット先生は、言いたいことは分かるだろうとでも言うかのように、私の顔を きょろっとした目で見つめられました。)

銀菓神暦2016年2月22日

早朝の、実家の工房での手伝いから戻って来ると、
「あんまり休んでばっかりもいられないからね」
と、ルセット先生は研究室に出掛ける支度をされていました。
心配なので、今日はずっとルセット先生の研究室に一緒に居ました。
訪ねて来る人はいなくて、静かな1日でした。

なんとなく、雰囲気で打ち明けました。
「あのね。ノート、見ちゃったの。何が書かれているのかは全然分からなかったんだけど……」
ルセット先生は、いつものように静かに微笑みながら言われました。
「知ってる。サラが触ったと教えてくれた。あと、どこまで知ったのかも」
「えっ? 誰か見ていた人が居たの?」
驚いている私を見て、ルセット先生の口元がさっきまでよりも大きく緩みました。
「誰にも……んー、人には見られてないよ」
「どういうこと? ちゃんと教えて!」
「んー……。あれは闇の銀菓神の力で書いたノートなんだ。今の僕はもう闇の銀菓神ではないから、正しくは闇の銀菓神だった時の力の欠片(かけら)で書いた……ってことになるのかな。誰かが触ると僕に分かるようになってる」
「でも、あんなに不用心に置いておいていいの?」
「あれは闇の銀菓神の力のある者にしか読めないんだよ。そうでない人が見ても、ただの真っ白なノート。もし何かが書いてあると見える人が居たとしても、……解読は無理だろうな。まだ教えていない」
ルセット先生は、言いたいことは分かるだろうとでも言うかのように、私の顔を きょろっとした目で見つめられました。
そんなルセット先生を見ながら、あのノートを読めるようになりたいような、なりたくないような、複雑で不安な気持ちになっていたら、
「大丈夫だよ。サラはまだ知らなくていい。教えるつもりもない。サラの中の僕の意識体のせいで、何かが書かれているのが見えてしまっただけだよ」
と、ルセット先生はもう一度にっこりされました。
でも、『教えるつもりもない』と言われると、ちょっぴりがっかりです。
中途半端ですっきりしません。