サラの日記319(「じゃあ、話をしよう」)

銀菓神暦2016年2月19日

眠れないまま夜が明けました。
でも、起き上がる気力は無くて、そのまま横になっていました。
「今日は出掛けないの?」
ルセット先生が私の髪を撫でながら声を掛けてくださいました。
「うん……」
「じゃあ、話をしよう」
ルセット先生は、私の中に、カリンさんの闇の部分が暴走して実体化してしまった怪物と闘っていた様子を流してこられました。
そして、こんなことを聞かれました。
「カリンの笛の波動に何かが足りないと思ったことは?」
「……透明で、邪の気配がなくて・……、あ……」
「うん。カリンが無意識に自分の中から追い出してしまっていた闇の部分は、浄化してカリンの中に戻した。これからのカリンの波動は強くなる。透明なだけでは出せなかった力が出せるようになる……はずだよ、理屈では。カリンが、闇や邪を持った自分を受け入れられるようになれば、僕たちのアウトサイド・パートナーになることも受け入れてくれるはずだ」
「ねぇ……」
「ん?」
「ミシェルが、そこまでしてまでカリンさんをアウトサイド・パートナーにしたいのはなぜ? カリンさんが想ってくれているから? それとも、カリンさんには私たちの得になる力があるから?」
「……両方だよ。放っておけないんだ。だけど、近付き過ぎるのは違うと感じる。……サラは、カリンがアウトサイド・パートナーになるのは嫌か?」
「ううん。嫌じゃない。カリンさんなら居て欲しい。妬いてる(やいてる)わけじゃないの。ただ、パートナー以外の人を受け入れる時の気持ちってどんな感じなんだろうって思って……」
「何かあった?」
ルセット先生は私の方に寝返りを打たれました。
私は小さくうなずいて、初めてケンジさんに声を掛けられた日から昨日までのことを、ルセット先生の意識体に流しました。
ルセット先生は目を閉じて、しばらく何かを考えていらっしゃるような様子でしたが、
「正直なところ、ミエットを受け入れるのには抵抗がある。おそらく、ミエットもルセットを受け入れることに抵抗があるはずだ。でも、ケンジはいい奴だ。サラが望むのなら、反対はしない。モンテ先生のおっしゃる通り、ミエットとアロゼの相性はいい。それに、僕に万が一のことがあった時、サラを守る手立てを作っておくことも僕の責任だ。だから、サラとケンジがよく話し合って決めればいい。それと……。気付かなかった。何度も倒れまでして……。ありがとう」
と微笑んでくださいました。

独りだと、色々悩んで自分の気持ちもよく分からなくなっていくのに、
ルセット先生と話していると、そんなことは とても小さなことだと思えてくる。
『永遠(とわ)の記憶の呪縛』によって、約500年前の、闇の銀菓神だった頃の記憶を持っているルセット先生が今も持ち続けている闇の力は、人を陥れる(おとしいれる)ためのものじゃない。人の闇を救うためのもの。
闇の銀菓神と一対の、光の銀菓神だったという私の中に、もしも光の力が残っているのだとしたら、
私は その力で何ができるだろう……。