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サラの日記312(空気ではないものを伝わって届く音です。)

銀菓神暦2016年2月12日

2年生の棟の屋上に行ってみたけれど、ケンジさんの姿はありませんでした。
それでも ひょっとしたら……と思って、ずっと屋上に居ました。
泣きたくても、泣くことはできませんでした。
泣き顔を見せたら、ルセット先生に知られてしまうから。

外に流すことのできない涙が、心の中で川になって、渦を作りながら荒れていました。
西瀬忍(にしせしのべ)を吹きました。
これまではルセット先生のために吹いてきた西瀬忍を、自分のために吹きました。
これまでは、遠くへ遠くへ……と吹いてきた西瀬忍を、自分の中に向けて吹きました。

西瀬忍の音に合わせて、遠くで別の笛の音が聞こえたような気がしました。
聞いたことのない音色です。
のし棒横笛でも、カリンさんの音でもない、荒っぽくて不器用な感じの音。
耳をすましても聞こえないのに、西瀬忍を自分の中に向けて吹いていると聞こえてきます。
空気ではないものを伝わって届く音です。
不思議な音色を追っているうちに、
心の中の涙の川は渦を巻くのをやめて、細く、弱々しい流れになっていました。

西日が強くなり始めた頃、ルセット先生からメッセージが流れてきました。
<サラ? どこに居る? まだ構内?>
柔らかな雰囲気のするメッセージでした。
<うん……>
<研究室においで。一緒に帰ろう>

ルセット先生の研究室に着くと、ルセット先生は私にもたれかかるようにして、私をぎゅっと抱きしめられました。
ルセット先生から、泥臭い、生臭い匂いがただよってきました。
「どうしたの?」
「終わった」
「何が?」
「カ……が……」
ルセット先生は何かを言いかけて、そのままその場に倒れ込まれました。
医務室の先生に助けていただいて、ウィルさんに迎えに来ていただきました。
ルセット先生はずっと眠り続けられています。
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