サラの日記311(……僕が、……崩してしまう)

銀菓神暦2016年2月11日

朝、2年生の棟の方へ向かっていたら、後ろでルセット先生の気配がしました。
でも、振り返ってみると誰も居ませんでした。

ケンジさんは心配してくださっていました。
「あまり頻繁にここへ来ない方がいいですよ。ルセット先生が勘違いされるかもしれません」
「……」
「これを」
と、ケンジさんは私の手に何かを握らせてくださいました。
手を開いてみると、木の枝を削って作った、小さな鳥居のチャームが付いたペンダントでした。
「これは?」
「銀菓神使ミエットの力を届けるための鳥居です」
ケンジさんは そう言いながら、私の手から鳥居のペンダントを取ると、私にペンダントを掛けてくださいました。
アグルムの聖石のペンダントよりも少し長くて、服の下にすっぽり隠れました。
急に寂しくなりました。
「もう……会えないってことですか?」
「これ以上僕に関わらない方がいい。サラさんがこれまで積み重ねてきた想いが崩れてしまいます。……僕が、……崩してしまう」
「もう少し……、ケンジさんの色んな話を聞きたいんです」
一瞬の沈黙のあと、ケンジさんは ゆっくり首を横に振りました。