サラの日記286(守りたいんだ。カリンを。)

銀菓神暦2016年1月17日

研究室はお休み。
朝、ルセット先生と2人で実家の菓子工房に手伝いに行って帰って来たら、
ジャックさんはゾエさんのところへ出掛けたあとでした。

「僕らもどこかに行こうか」
ルセット先生が にっこりしながら誘ってくださいました。
「いいの? ポンカンの収穫、手伝いに行った方がいいんじゃない?」
「いつも行ってるんだ。今日ぐらい暇をもらっても大丈夫だよ。それに、今日はサラと2人だけがいい」
ルセット先生はそう言うと、私の手を取られました。
――あれっ? 菓子職人の手じゃない――
一瞬そう思いました。
ルセット先生は、手の質感が変わってしまうほどの何かをしているの?
<今日は何も聞かないで>
ルセット先生から そんなメッセージが流れて来るのと同時に、
私の唇はルセット先生の唇でふさがれました。

屋上の鳥居を抜けて、着いたところは どこかの橋の上でした。
見下ろすと、水の流れのところどころに小さな渦ができています。
目線を遠くに移すと、小さな島が いくつか見えます。
ルセット先生は橋の欄干に手を付いて、黙って遠くを見続けていました。
ルセット先生は何も言われなかったけれど、遠くに見える島の1つがカリンさんの居る島だということは すぐに分かりました。
カリンさんの、透明で優しい波動が、私の中のルセット先生の意識体に、避けようもなく伝わって来るから。

ルセット先生は私に、
今、何をどう感じているのか、
その全てを見せてくれている。

<守りたいんだ。カリンを。このまま、透明なままでいて欲しい>

ルセット先生の表情を確かめようとしたけど、
ルセット先生は いつの間にか銀菓神使スーツを着装されていました。
でも、……泣いてる。