サラの日記280(たまには王子らしい考え方するのね)

銀菓神暦2016年1月11日

ジャックさんは朝から眠そうでした。
ゾエさんのところに行けなかった代わりに、夜通し(よどおし)ゾエさんと意識体で交信していたそうです。

「夜通しって、何をそんなに話すの?」
「うーん。色々。嫌いな食べ物の話とか、嫌いな色の話とか、嫌いな匂いの話とか、嫌いな先生の話とか、嫌いな科目の話とか……」
「ん? なんで嫌いなことの話ばかりなの?」
「んー。ゾエちゃんは俺に好きなことは何かって聞いてくれるんだけどさ、好きなことって、そんな改まって聞かなくても分かるじゃん。分かんなくても困ることって あんま無いしさ。けどさ、嫌いなものは聞いとかないと、無理して合わせてもらってても分かんないじゃん」
「そっかぁ……。そう言えば私、ミシェルの嫌いなものってなんにも知らないな……」
「いいんじゃない? サラちゃん達は。まさか、兄貴とちょっとぐらい好みが違ったからって争いになったりしないだろ? 俺さぁ、異文化のお姫様相手じゃん。不安なんだよ。そういうこと、ちゃんと聞いとかないと。もちろんゾエちゃんに個人的関心があるから色々知りたいってのが1番なんだけどさ、やっぱ分かんないじゃん、プラクミーヌのことって」
「ふぅーん。たまには王子らしい考え方するのね」
「失礼だな!」
ジャックさんは両手で机をバン!と叩いて立ち上がりましたが、目をきょろっとさせて笑っていました。

「ジャックさーん!」
タツキちゃんが手を振って、にこにこしながら教室に入って来ました。
「こちらの姫は楽なんだ。全部態度で示してくれる」
ジャックさんはウインクしながら小さな声でそう言い残して、タツキちゃんと手を繋いで教室を出て行きました。