サラの日記230(「『仮』か……。『仮』じゃあ まだ任せられない。早く本物になれ」)

銀菓神暦2015年11月22日

研究室はお休み。

「サラちゃん、今日 時間ある?」
ジャックさんが部屋を訪ねてきました。
「うん。あるけど?」
そう答えると、ジャックさんは いたずらっ子のような顔をして にやっと笑いました。
「んじゃ、月まで付き合ってよ」
「月? ……グラセさんのところ?」
「うん。ね? 兄貴の居ない間に」
返事に困っているうちに、ジャックさんに ぐいぐい手を引かれて屋上の鳥居の前に着きました。
そのまま、ジャックさんのペースで月の支局に到着。

「あれ? 珍しいお客さんだね」
入口の窓から中を覗いている私たちに気付いたグラセさんは、中に案内してくださいました。

「ルセットは?」
グラセさんは そう言いながら、お茶を淹れてくださいました。
「留守神なんです」
私がそう答えると、ジャックさんが、
「鬼の居ぬ間に、グラセさんに報告」
なんて言い出しました。
「ん? 何だい?」
グラセさんもソファに座られました。
「仮称号、取りました。もう無称号だとは言わせない。グラセさんが月勤務の間、地球でのタツキちゃんは俺が守る」
ジャックさんはグラセさんに向かって、前のめりの姿勢で険しい表情をしました。
するとグラセさんは顎に手をやって、ゆっくりとした口調で、低い声で、
「『仮』か……。『仮』じゃあ まだ任せられない。早く本物になれ」
とジャックさんを にらみました。
ジャックさんがそのまま固まっていると、グラセさんは、
「なーんてね」
って笑ってた。