サラの日記221(もしも言葉というものが、想いを詰め込むための入れ物なのならば、)

銀菓神暦2015年11月13日

早朝。
実家の工房に着いたらシュウちゃんが待っていました。
いつもなら運び終わっているはずの果物を、
ゆっくり、ゆっくり運んで待っていました。
ルセット先生が一緒なのも構わずに、私に声を掛けてきました。

「疲れてない? 元気?」

もしも言葉というものが、想いを詰め込むための入れ物なのならば、
シュウちゃんの言葉からは、
幼なじみの情を超えた、触れると砂の様に崩れてしまいそうに繊細な想いが溢れていました。
口を開けば一緒に崩れてしまいそうで、黙って小さくうなずきました。
多分、この自分では制御のできない、どうしようもない感情は、
ルセット先生の中にある私の意識を通して、ルセット先生に伝わってしまっています。

「おーい、シュウ。早くしろよー」
出入口の向こう側で、樫野のおじさんの声が聞こえました。

「またね」
シュウちゃんは にっこりしながら私に手を挙げ、ルセット先生に会釈をすると、駆け足で工房から出て行きました。

今日のジャムは販売用にはしたくないなって思いました。
ジャムの中に、おいしさとは反対のアロゼが入ってしまったかもしれない。
気持ちが大丈夫になったら加工用に炊き直します。