サラの日記199(ジャックさんは柿をほおばりながら、青い空に浮かぶ白い月を指差しました。)

銀菓神暦2015年10月22日

お昼休み。中庭のベンチに座っていたら、後ろから誰かの手が伸びてきました。
外皮が緑っぽいミカンを持った手。

「極早生(ごくわせ)。ちょっと酸っぱいかもしんないけど」
ジャックさんでした。
ジャックさんの手には もう1つ、オレンジ色の何かが握られていました。
――柿?――
「えっ? ジャックさん、プラクミーヌに行ったの?」
びっくりして聞いたら、
「違うよ。これは俺んとこで育ててるやつ。柑橘ばっかじゃ つまんないじゃん? 今年はなかなかいい出来だと思うんだけどな……。食べてみる?」
って、その場で柿をむき始めました。

柿は苦手だと思ってたけど、ジャックさんの柿なんだな……って思いながら食べると おいしかった。

ジャックさんは柿をほおばりながら、青い空に浮かぶ白い月を指差しました。
「今朝行ってきたよ。たまたま今日ミカンと柿持って来てたからさ、丁度よかったよ。支局に差し入れできた」
「え? あの建物、人が居るの?」
夏休みに体験した『月行き』の恐怖がよみがえりました。
「え? 居るよぉ。グラセさん、月の支局長だよ?」
ジャックさんは、私が月の支局のことを全然知らないことに驚いていました。

「サラちゃん、支局の建物に入らなかったんだ」
「うん……。怖くて、すぐ戻って来ちゃった」
「んじゃ、俺が仮称号取ったら一緒に行こうぜ。グラセさんに、『もう無称号じゃねえよ』って、『地球でのタツキちゃんは俺が守ってやる』って言いに行くんだ」
「けんかしないでね。私、月で癒しのアロゼとかって絶対無理だから……」
「分かってるって。もうサラちゃんには迷惑かけないよ」
ジャックさんは私の肩をポンポンと軽くたたきました。