サラの日記188(朝から退院の準備をしていました。)

銀菓神暦2015年10月11日

朝から退院の準備をしていました。
と言っても、手荷物程度のことだけど。

病室のドアをノックする音が聞こえたので、ウィルさんが迎えに来てくださったんだと思って、荷物の中をごそごそしたまま、
「ウィルさん? どうぞ入って」
と返事をしました。
でも、誰も入って来る様子が無くて、ウィルさんじゃないのかな? とドアの方を振り返った瞬間、ゆっくりドアが開いて……、
ドアの向こうにはルセット先生が立っていらっしゃいました。

なんにも考えずに、ルセット先生の胸に飛び込んでいました。

「ごめんね、サラ。銀菓神局からの特命だったんだ」
ルセット先生の、いつも通りに穏やかな声が聞こえました。

ルセット先生の1週間分の意識が、大きな流れになって、私の中に入って来ました。
「今、サラに伝えられることはこれだけ。あとは極秘事項」
伝わって来たのは、銀菓神局の施設の中で、ゾエさんに何かを教えているルセット先生。
「うん。分かった」
急に居なくなってしまった理由が、銀菓神局の特命だったってことと、ちゃんと無事だったってことが分かれば、それで充分だと思いました。

「身体は大丈夫?」
ルセット先生の両手が、私の全身を確かめるように、優しく動きました。
「うん、大丈夫」

銀菓神局からの特命。
1親等内の親族(つまり、配偶者、自身の父母、配偶者の父母、自身の子、配偶者の子、自身の子の配偶者、配偶者の子の配偶者)には、特命で出掛ける1日前から留守にする旨を話しておくことができるのだそうです。
でも、私たちはまだ婚約状態なので、話すことができなかったのだそうです。
急な特命だったので、王と王妃にも黙って出掛け、ルセット先生がどこに行ってしまったのか、誰も知らないという状況になっていたみたいです。

明日は久しぶりの大学院です。