サラの日記182(朝、私が目を覚ました時にはもう、ルセット先生の姿はありませんでした。)

銀菓神暦2015年10月5日

ルセット先生とグラセさんは1週間の自宅謹慎、ジャックさんとタツキちゃんと私は1週間の停学処分になりました。

だけど、
朝、私が目を覚ました時にはもう、ルセット先生の姿はありませんでした。
ベッドから降りようとすると、太腿(ふともも)に、昨日、葉っぱの小刀を刺した痛みがよみがえりました。

マリーさんにお願いして、ジャックさんのそばに居させてもらうことにしました。
ジャックさんの呼吸、血圧、傷の様子に異常はありませんでしたが、ジャックさんは昨日のあれから1度も目を開けていませんでした。

お昼過ぎになって、ジャックさんは目を覚ましました。
「……ねぇ、サラちゃん」
「あ! ジャックさん!」
「ゾエちゃんは? どこ?」
ジャックさんは部屋の中をぐるっと見回しました。
「帰った……よ?」
そう言いながら、気を失っていたはずのジャックさんがどうしてゾエちゃんのことを知っているんだろう……と不思議でした。
「帰っちゃったんだ……」
ジャックさんはゆっくり目を閉じました。
「お水、飲む?」
グラスを差し出したら、ジャックさんはゆっくり目を開けました。
ジャックさんが上半身を起こすのを手伝って、グラスを手渡したら、ジャックさんが話し始めました。

「真っ暗でなんにも見えなくてさ……。困ってたんだ。どっちに向いて歩けばいいのか分からなくて。……じっとしてたら、ぼんやりと明かりが見えて・……、でもやっぱり暗くて……。そしたらさ、そのぼんやりとした明かりの中から、ゾエちゃんの声が聞こえたんだ。「こっちこっち」って。……ゾエちゃんが伸ばしてくれた手に届いて、なんかほっとして、そのまま眠っちまってた。あ、グラセさんは? 大丈夫?」
「うん。ジャックさんよりは まし」
「兄貴は?」
「あ、それが……、朝から居ないの。ちょっと捜してくる」
椅子から立ち上がった瞬間、太腿に痛みが走りました。
「痛っ!」
「サラちゃん、どうかした?」
「ううん、大丈夫。捜してくる」

もう一度部屋に戻って捜してみたけど、ルセット先生はいませんでした。

屋上の鳥居に手をかざして、心当たりの場所を映し出してみましたが、ルセット先生はいませんでした。
昔のルセット先生の家やミカン畑にも、ルセット先生の姿はありませんでした。

<ミシェル、どこ? ジャックさん、目が覚めたよ>
しばらく待ってみたけれど、返事はありませんでした。
ルセット先生の意識を読もうと集中してみましたが、ブロックしている時のように何も感じませんでした。

多分……ブロックしてる。
どこに行っちゃったんだろう……。
……ゾエさん?
いつもの鳥居じゃなくて、手刀で切った鳥居を使ってた……。
あれは緊急事態だったから? それとも……。

月が柔らかな光を放ち始めても、ルセット先生はまだ戻って来られません。