サラの日記178(ジャックさんはさっきの姿勢のまま、タツキちゃんの涙を指で拭って(ぬぐって)いました。)

銀菓神暦2015年10月1日

ジャックさん、本当は外出できるほどには回復していなかったのですが、1人にしておくと、また何をしでかすか分からないので、ルセット先生が強制的に大学院に連れて行かれました。
で、私は見張り役を仰せ(おおせ)付かりました。

タツキちゃんは心配そうに何度も何度もジャックさんの方を見ていて、それに気付いたジャックさんはタツキちゃんの隣りの席に座りました。
私はその後ろの席に座って、2人の様子を見ていました。

「昨日……、来なかったね」
タツキちゃんがジャックさんに話し掛けました。
「ん。ちょっと無茶しちゃってさ。起き上がれなくて」
ジャックさんは机に伏せて、顔だけタツキちゃんの方に向けました。
「ありがとう。大好き。でも もう……やめてね。元気なジャックさんと、仲間でいられるだけでいい。ね? 元気なジャックさんでいて」
タツキちゃんはジャックさんの髪を、ゆっくり、ゆっくり、優しく撫でていました。
「……分かった。でも、あと1回だけ。あと1回だけ格好つけさせて。あと1回だけグラセさんとやったら……それで……」
「……うん」
タツキちゃんの瞳からは涙が流れていたけれど、その口元には穏やかな微笑みが浮かんでいました。
ジャックさんはさっきの姿勢のまま、タツキちゃんの涙を指で拭って(ぬぐって)いました。

2人の様子を見ながら、色んなことが頭の中に浮かんでは消え、消えては浮かび……。

――2人を何かで包み込んで、銀菓神界の外に連れ出してしまいたい――
そう思った瞬間、本当にジャックさんとタツキちゃんの頭上から たくさんの黄金色の光の粒が舞い降りて来て、2人を包み込み始めました。
びっくりして、舞い降りて来る光の粒をただただ見上げていると、
「『祝福のアロゼ』だ」
と、ルセット先生が教室に入って来られました。
「『祝福のアロゼ』に包まれた2人は、相手を想う気持ちを銀菓神使の力に変換できるようになる。……セカンド・パートナーだ」
ルセット先生がそう言い終わると、たまたま教室に居合わせただけの、誰だか分かんない人たちまで、2人を拍手で祝福してくれました。

ルセット先生は私の横に来て、
「やっちゃったね、サラ? グラセが妬(や)かなきゃいいけどね」
って ささやかれました。
――あ!――
って思ったけど、わざとじゃないもん。勝手に出て来ちゃったんだもん。『祝福のアロゼ』なんて知らなかったもん。