サラの日記152(このジャムを炊くことのできる職人を探している)

銀菓神暦2015年9月5日

朝、実家の工房で作業していたら、母に呼ばれました。
昨日の夕方、栗色の髪の女の子がやって来て、この店のジャムを炊いている職人に会いたいという申し出があったそうです。
何か不手際があったのかとたずねてみると、不手際ではなくて、このジャムを炊くことのできる職人を探しているとのことだったそうです。
母は、ジャムは見習いの職人が炊いていて、早朝にしか工房に居ないと答えると、また日を改めて来ると言われたそうです。
ジャックさんの力になろうと思って、私の方が栗色の髪の女の子を捜していたつもりなのに、私も栗色の髪の女の子に探されていたようです。
本当はすぐにでもルセット先生に話したいぐらい嬉しいできごとだったのですが、ジャックさんのことが絡んでいるので、まだルセット先生には話していません。

ルセット先生は、実家の工房での仕事が終わったあとは、ずっと自室の机に向かっていらっしゃいました。
新学期の準備が大詰めなのだそうです。
私は、ルセット先生の隣りで、ルセット先生のじゃまにならないように、メランジェ先生に頂いた食用植物の図鑑を広げていましたが、頭の中は栗色の髪の女の子のことでいっぱいでした。
もちろん、そのことをルセット先生に読まれないように気を付けながら……。

だけど……。
「サラ。なんかいいことあった?」
って、ルセット先生に聞かれてしまいました。
「ん? ううん、別に。あ、この図鑑が面白くて……」
って、ごまかした。

ルセット先生が意識をブロックしている時の感覚は分かるけど、自分がブロックしている時にどうなってるのかは、自分では確認のしようがない。
もしかしたら、ちゃんとブロックできてなくて、ルセット先生には読めちゃってるのかもしれない。
まあ、ルセット先生にばれちゃったら、それはそれで別にいい。
ばれちゃった方が楽かも……。
だけど、ルセット先生はそれ以上は何も聞かずに、ただ穏やかに にっこりして、また机の書類に戻られました。
ルセット先生と一緒に何かするのも楽しくて幸せだけど、
こうやってだた隣りに居て、それぞれのことをしているのも……なんかいい。