サラの日記141(「うん。沙羅双樹の学名はShorea robusta(ショレア・ロブスタ)っていうんだけど、そこから取って、ソレア」)

銀菓神暦2015年8月25日

朝の実家の工房で、
これまで、呼ばなければならないような用事も無かったので、呼んだことが無かったのだけど、何となく呼んでみたくなって、ルセット先生を、「オーグ」って呼んでみました。
そしたら、ルセット先生は、私のことを「ソレア」と呼び返してこられました。

「ソレア?」
「うん。沙羅双樹の学名はShorea robusta(ショレア・ロブスタ)っていうんだけど、そこから取って、ソレア」
「ソレアね……。ありがとう。気に入った」
「どういたしまして」

そんなことをしていたら、父が、――口を動かすよりも手を動かせ――というような視線を送ってきたので、ルセット先生と私は、しゅんとして下を向いて、せっせと作業しました。

今日はスモモのジャムを炊きました。
実の重量の半分ぐらいの砂糖と、少しのレモン汁を入れて、全体が均等に赤くなって、目的の硬さの少し手前になったら、できあがり。
今日炊いたのは、直径20cmぐらいの片手鍋1つ分で、火を入れてから炊き終わるまでに1時間ぐらい掛かりました。
早朝の涼しい時間帯は、ジャムを炊くのに最適です。
この時期のジャム炊きは、日が昇ってしまうと灼熱地獄です。
ジャムを入れる瓶と蓋を煮沸するのも。
実家の工房では、要冷蔵・要冷凍ものの作業以外は、基本、自然のままの室温です。暑い……。

夏場だけでも工房全体に冷房を入れればいいのかもしれないけれど、実家のように、家族経営の規模のお店では、経費がかさんで苦しくなります。
整った環境に慣れていらっしゃるルセット先生には厳しいんじゃないかな……って心配だけど、ルセット先生はいつも穏やかに、無駄な動き無く、きれいに作業をこなされます。安心して、遠慮なく、ルセット先生を頼ってしまう。

大学院、今日はメランジェ先生がお休みだったので、久しぶりにルセット先生と地下の製菓室で過ごしました。
延し棒横笛の練習をたくさんしました。
初めて延し棒横笛を手にした時は、肩は凝るし、手はだるいし、息は苦しいし、こんなの絶対吹けないと思いましたが、今は、あの頃よりは身体に馴染んで、音を出すことを楽しく感じます。低い音なら何とかまともに出るようになってきました。
高い音は苦手です。
ルセット先生が言われるには、高い音は低い音よりも力を抜かないと出ないらしいのですが、私は高い音になるほど力が入ってしまいます。肩も首も腕も、力が入り過ぎて、かちかちになっていたら、ルセット先生が大笑いしながらほぐしてくださいました。
ルセット先生が延し棒横笛を吹かれている時の肩を触ってみたら、全然固まってなかった。

不意に、ルセット先生が、人差し指で私の唇に触れられました。
「高い音の時も、このまんまの柔らかさで吹いてみて」

肩や首や腕から力が抜けて、吹き易くなったのを感じました。