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サラの日記127(僕の分の領地を手放した。)

銀菓神暦2015年8月11日

お昼頃のことでした。
<サラ? 話したいことがあるんだ>
いつもより、少しトーンの低いルセット先生。
<……何?>
<僕ん家に来て。ウィルが迎えに行く>
<分かった>

胸にはアグルムの聖石のペンダント。
何も怖くない。
私は、独りじゃない。
でも、嫌な予感がする。

ルセット先生は、私の顔を見るなり、私をきつく抱き締められました。
「サラ。僕の分の領地を手放した。プラクミーヌに譲渡した」
「……住んでる人たちは?」
「父の分とジャックの分は、花綵アグルムとして残っているから、そこに移ってもらってる」
ルセット先生の手には、ぎゅっと力が入って、泣いていらっしゃいました。

私を抱き締めたまま、ルセット先生は続けられました。
「僕には何も無い。当面は、父やジャックに助けてもらう生活になる。サラはどうしたい?」

私は、今できる精一杯のにっこりで、ルセット先生を見詰めました。
「ミシェルが、そこまでして私を選んでくれたなら、ミシェルに付いて行くしかないじゃない? 国同士の難しいことはよく分からないけど、ミシェルと一緒に居られるようになったってことは、何となく分かる」 
ルセット先生の腕を少しほどいて、少し背伸びをして、不安そうな その唇に、キスしました。
「泣かないで、ミシェル。せっかく一緒に居られるようになったのに。ね?」
私は、ルセット先生の涙を指で拭い(ぬぐい)ました。
ルセット先生は、少し口角を上げて、キスを返してくださいました。

「ここは? 出るの?」
「今夜出て、花綵アグルム城に帰る」
「手伝うわ」

夜、花綵アグルム城で、国王陛下と王妃に迎えられました。
国王陛下はおっしゃいました。
「こういう形でしか、力になってあげられなかった。すまない。……それから、混乱している国の民(たみ)への説明も兼ねて、近いうちに婚約の儀を執り行おうと思うのですが、サラさん、大丈夫ですか?」
「はい。どうぞ、よろしくお願いいたします……」
頭を下げていると、私のためにこんなことになって……という思いがどんどん大きくなってきて、涙が止まらなくなりました。
王妃が言ってくださいました。
「ミシェルはもう、王太子として、この国を動かし始めているのですよ。サラさんと一緒に。私たちにできることがあれば、力になりますから、ミシェルのこと、よろしくお願いしますね」
私の手を包んでくださった王妃の手は、ルセット先生によく似た温かさをされていました。

荷物を部屋に運び終わって、帰り支度をしていると、後ろから、ルセット先生に抱き締められました。
「もう少し一緒に居て」
「……明日からここで手伝えるように、両親に話してくるから」
ルセット先生の腕をゆっくりほどいて、部屋を出ようとすると、
ウィルさんが、「ならば、殿下もご一緒の方が」と、私とルセット先生に目配せ(めくばせ)されました。
ルセット先生が言われました。
「ならば、王と王妃も一緒に」

私の実家での話し合いが済んで、当面必要な荷物だけを持って、花綵アグルム城に戻ったのは、日付が変わって5時間程あとのことでした。
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