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サラの日記114(決めたら言うよ)

銀菓神暦2015年7月29日

「銀菓製菓理論」の試験は午後からだったので、午前中は家で最終チェックをしていました。

自宅の1階は菓子工房です。
2階の私の部屋には、今日も朝早くから、焼き菓子の焼ける匂いが上がって来ました。
職人の父と、そこに嫁いだ母。
私は、銀菓神使の称号を取ったら、銀菓神使の仕事の傍ら(かたわら)、菓子工房も継いでいくつもりでいました。
――私がルセット先生のところへ行ったら、いずれは、ここを閉めることになるのかな……。
ルセット先生とも一緒に居たいし、工房も続けたい――

「銀菓製菓理論」の試験のあと、地下の製菓室に行きました。
少し緊張していました。
この問題を投げ掛けたら、ルセット先生はどう思われるのかを聞いておきたかった。

「聞いておきたいことがあるの」
「うん、いいよ」
ルセット先生の声は温かで、緊張がほぐれているのを感じました。
「称号を取ったら、実家の菓子工房を継ぐつもりだったの」
「うん」
「でも、花綵アグルム城に行くことになったら、継げなくなってしまう」
すると、ルセット先生は、ゆっくりと微笑まれ(ほほえまれ)ました。
「ごめんね。サラのことに気付いてすぐの頃、侍従(じじゅう)に頼んで調べさせてもらってた。サラのご実家のこと。サラを城に閉じ込めちゃうわけじゃないんだから、大丈夫だよ。方法はいくらでもある。そういうこともひっくるめて、サラと一緒に時代を変えたいと思ってる」
「……分かった。ちょっと安心した。……ありがとう」

私のことを考えてくれるのは当たり前で、そうでないと安心してルセット先生のところには行けないのだけど、
私の実家のことも、当初の目的が何だったのか、ルセット先生の「ごめんね」が少し引っ掛かりはするけれど、
それはこの際措いて(おいて)おくとして、随分早い時期から気に掛けてくださっていたことに、ルセット先生の誠実さを感じました。

「サラの試験の最終日はいつ?」
ルセット先生は、自分のスケジュールも確認しながら、そう聞かれました。
「8月1日で終わり」
「じゃあ、2日に、……会える?」
「うん、いいよ。2日ね? どこに行けばいい?」
ルセット先生は、「そうだなぁ……」と天井を見上げて、「決めたら言うよ」と、私の方に柔らかな視線を戻されました。
悪いことではなさそうな雰囲気でした。
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