サラの日記111(二番目とか三番目とかでもいいよ……)

銀菓神暦2015年7月26日

<おはよう、ミシェル>
昨日、気になって一晩中考えてしまっていたことがあったので、研究室はお休みだったけど、ルセット先生にメッセージを送ってみました。
<おはよう、サラ。どうした?>
<あのね、花綵アグルムの王太子妃って……一人だけ……なの?>
<ん?>
<私、やっぱり職人の娘だし、そういう教育受けてきてないし、二番目とか三番目とかでもいいよ……って思ったり……>
<ね、サラ? 今から会える?>
<うん……>
<じゃあ、植物館の鳥居の前で待ってる>
<……はい>

鳥居の前に行ってみたら、ルセット先生が先に着いていらっしゃいました。
「四次元でいい?」
ルセット先生は鳥居に手をかざしながら、私の手も取られました。
前に来た草原。前に来た時よりも力強くなった草花が、静かに風に揺れていました。

「サラに出会うのが、あと1年遅かったら……、サラを二番目にしようと思ったかもしれない」
ルセット先生は、私の手を引いて、歩き続けられました。
「今、両親にサラのことを話したら、……二番目なら許してもらえるかもしれない」
ルセット先生は、足を止めて、私に向き合って、目を覗き込みながら話してくださいました。
「でも、僕は、サラだけをアグルムに迎えたい。婚約の話が進む前にサラに出会えたんだ。もう、無責任に形だけで誰かを迎えるなんて……できない」
「……ありがとう。でも、途中で……、職人の娘なんかやめておけば良かったって思うかもしれない。いつか、やっぱり違うって思うかもしれない」
「大丈夫。気持ちは1000年経っても変わってない。それどころか、『永遠の記憶の呪縛』のおかげで、忍耐力には磨きがかかってる」
ルセット先生は、にっこり笑うと、優しく抱き締めてくださいました。
「サラ。不安に思わせてごめんね……」
私も、ルセット先生に、ぎゅっと抱き付きました。
「ミシェル、今日はプライベートの匂いがする……」
「サラも……」

ルセット先生は、もう一度、私の目を覗き込み直されました。
「夏休みになったら、サラを僕の両親に紹介しようと思ってる。サラのご両親にも、ご挨拶に伺おうと思ってる。銀菓神使の称号があれば、身分を越えられる」
「……でも、私、まだ称号は」
「大丈夫。サラにはもう、仮称号と同じぐらいの力が付いてる。闇の銀菓神の記憶を持つ僕が保証する」
「……はい」