サラの日記95(何だか疲れて、反発する気力も薄れて、何にも考えたくなくなって、……もう一つの気持ちに気が付きました。)

銀菓神暦2015年7月10日

大学には行きました。
でも、ルセット先生の講義には行けませんでした。
ずっと、図書館の一人用ボックス席に居ました。

これまでのことは全てルセット先生が計画的に進めてきたことなのかと思うと、何もかもに反発したくなりました。
受け入れられませんでした。

ルセット先生から、私への呼びかけが何度も届きました。
でも、何を答えていいのか分からなくて、何も返せませんでした。

閉館のアナウンスで、いつの間にか夕方になっていたことを知りました。

図書館を出てはみたけれど、そのまま帰る気にもなれなくて、図書館の前のベンチに座って、ぼんやりしていました。
何だか疲れて、反発する気力も薄れて、何にも考えたくなくなって、……もう一つの気持ちに気が付きました。

過去に何があったとか、ルセット先生に振り回されてたとか、そういうのを取っ払ったら……、取っ払っても……、

<今、この時間のルセット先生と一緒にいたい>

<……サラ?>
<やっぱりルセット先生と一緒にいたい!>

一生懸命走って、涙でべちょべちょになって、地下の製菓室に着いたら、
ルセット先生が とっても心配そうな顔をして待っててくださっていました。
――ごめんなさい―― と言おうと思ったのに、息が切れて、ちゃんと声になりませんでした。
ルセット先生が、抱き留めて、手を取ってくださいました。

<ごめんなさい。過去のことはよく分からないけど、今の時間のルセット先生と一緒にいたい>
<僕も、……勝手に思い出に巻き込んで、ごめん……>
<ううん。……私は何も覚えていなかったのに、……1000年も……想っていてくれてありがとう>

「だけど先生……」
「……」
「逃げるのはやめて」
「……」
「家に戻って、ちゃんと継いで。……私は……一緒になれなくてもいいよ。今の時間に、……同じ時代にいられるだけでいい」
「変わらないね……」
「変わらない?」
「1000年前も、500年前も、そう言ってくれた……」
「……」
「逃げないよ。でも……、認めてもらえる方法を考える」
ルセット先生はそうおっしゃると、銀菓神使スーツを着装して、
マスク越しに唇を重ねてこられました。

誰かが階段を駆け下りて来る足音が聞こえたような気がしたけど、
ルセット先生は気にされていない様子だったので、そのままでいたら……、
「サラちゃん! だ……大丈……夫……みたいだね」って、
気まずそうな感じのジャックさんが……。

<もしかして……、ルセット先生、ジャックさんに見せ付けた?>
<んー……、うん。いや……、うっかりしてた>
<もう! 絶対気付いてた!>
<ううん……。全然気付かなかった>
<うそ!>
<ごめん、……見せ付けた……。サラを一番厄介なライバルに取られたくない>
私、ルセット先生に軽く肘鉄(ひじてつ)。

ジャックさんには、ルセット先生と私の、この ごたごたした やり取りは聞こえていません。
多分、私がいきなりルセット先生に肘鉄した……って見えてる。
私って、凶暴な女?