サラの日記732<最終話>(銀菓神局附属大学 花綵(はなづな)キャンパスで、学部と大学院合わせての入学始業式が行われました。)

銀菓神暦2017年4月7日

銀菓神局附属大学 花綵(はなづな)キャンパスで、学部と大学院合わせての入学始業式が行われました。

モンテ学長の、「新任で学部非常勤講師の、銀菓神使アロゼ先生です」という紹介とともに壇上に立ちました。
ほとんどの人たちが拍手で迎えてくださる中、一人、私の方に向かって大きく手を振っている人がいます。
気になって目を凝らすと、研究生に成り立ての、私の一番弟子、ナナちゃんでした。

入学始業式が終わって、控室に戻ろうとしていると、「アロゼ先生、待ってーっ!」とナナちゃんが走って来ました。
「ねえ、アロゼ先生。アロゼ先生は院には教えに来ないの?」
「院?」
「はい! 私、アロゼ先生にみてもらいたいから」
「そうねぇ……。銀菓神局かモンテ学長から辞令をいただかない限りは行かないかな……」
「そっかぁ……。じゃあ、私が学部に行くのは? それなら大丈夫ですよね? あ、もちろん、アロゼ先生のご都合にあわせます!」
「いいわよ。でも、所属研究室の先生に許可は取っておいてね」
「はい! それなら絶対大丈夫です! 所属、メランジェ先生のところだから!」
「フフッ……」
「えっ? なんで? どうして笑うの? アロゼ先生」
「……そうねぇ。どうしてかなぁ……」
「えっ? どうして、どうして?」
「どうしてなのかは、……自分で見つけるのよ、ナナちゃんが。これからじっくり二年掛けて」
「はぁーい」

<ねえ、ミシェル? 私、なんとなく思ってるの。今の私そのものが、ミシェルが手回ししておいてくれた仕掛け。……そうでしょ?>

今日も雪の花が、桜の花びらに交じって元気よく舞っています。


★★★★★★★★

『銀菓神使アロゼ~アロゼ誕生前の物語~サラの日記』 完
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サラの日記731(雨の匂いと桜の香り。)

銀菓神暦2017年4月6日

明日、新学期が始まります。
これまでとは立ち位置の違う新学期です。
着ていくスーツ、鞄の中身を何度も確認しました。
泣きはらした顔になっていないかも気になって、何度も鏡を見ました。
大丈夫。もう泣きません。
私を先生だと慕ってきてくれる学生たちのために。
私を信じて火星勤務に出ることを決めたルセット先生の、ミシェルのために。

外は小雨。
でも、久しぶりに外の空気が吸いたくなって、商店街の桜並木を散歩してみました。
五分咲き。
雨の匂いと桜の香り。
今の私の心の中と同じ。

すぐ近くに、ミシェルの波動を感じました。
まさかと思いながらも交信を試みてみました。
<ミシェル? ミシェルなの?>
でも、当たり前のことだけど、返事はありません。
だけど、波動はさっきまでよりも強くなりました。
ついでに、さっきまで落ち着いていた つわりもひどくなってきました。

<分かったわ。これはキズナね。ミシェルにそっくり……>

雨に散る桜の花びらに入り交じって、雪の花が舞いました。

アロゼの休憩室73「残すことろあと2話となりました。」

2015年4月7日より二年間に渡って書き続けてきた
『銀菓神使アロゼ~アロゼ誕生前の物語~サラの日記』
の連載も、残すところあと2話となりました。

長期間の応援、ありがとうございました。
(残り2話もよろしくお願いします。)

ルセット先生が火星勤務のために星間移動用鳥居をくぐって数日経ちましたが、
これまでの二年間ルセット先生に頼り切りだったサラちゃんの精神が完全復活するには、
多分、残り2話では難しいと思うんです。

また、サラちゃんが今回のことを乗り越えた頃に、その後のお話を、
『銀菓神使アロゼ 本編』として書きたいと思っています。

連載終了後のここのスペース、
そのままにしておくのはさびしいので、思い付きで時々何かを書きに来るかもしれません。
もしよかったら、思い付きで時々覗きに来てくださいね。

あ、こんなことを書くと、これで最後のような雰囲気になってしまいますが、
あと2話ありますからね。
どうぞ最後までお付き合いください。

サラの日記730(それは、存在するはずだったそのモノたちの存在を消してしまうこと。)

銀菓神暦2017年4月5日

急に涙が止まるわけもなくて、
急に気持ちが吹っ切れるわけもなくて、
でも、日々やらなければならないことはあって……。

やらなければならないこと……。
どうしてやらなければならないんだろう。

私が、それをやめてしまったら、それは一体どうなるんだろう。

やらなければならないことがあるということは、
私の居場所があるということ。
私がそれをやめてしまったら、
私によって生み出されるはずだったモノたちの存在はなくなる。
それは、存在するはずだったそのモノたちの存在を消してしまうこと。

だったら、
涙が止まらなくても、
気持ちが吹っ切れなくても、
私は止まれない。
ただ、私の居場所でできることをやり進めていくだけ。

サラの日記729(それ故の、深い、深い温かさ。)

銀菓神暦2017年4月4日

今日は着装無しでは自分の部屋を出ることができませんでした。
一晩中泣いて、それでも涙が止まらなくて、
朝になったら、まぶたが真っ赤に膨れ上がっていました。

こんな顔、誰にも見せられない。

それでも菓子工房ミヤマエの仕事場では、
いつものように私の仕事が待っていました。
仕方がないから、着装して仕事に出ました。

両親はミシェルの火星勤務のことを知りません。
ミシェルの姿が必要な時は、シュウちゃんにお願いしています。
多分、それがミシェルではなくシュウちゃんであることに、両親は気づいていません。

だから、こんな顔をして両親の前に出ることはできないのです。

でも、自分の部屋に居る時や食事の時にまで着装姿でいるのは変だと思われるだろうから、
カリンさんに側にいてもらうことにしました。

部屋に一人の時、カリンさんは手を繋いでいてくれました。
不思議な感覚が伝わってきます。
ミシェルの、ルセット先生のもとから離れようとした時の、嵐のような感情の流れと、
それを乗り越えて、手に入れた強さ。
誰にも頼ることはできず、ひとりで乗り越えた強さ。
それ故の、深い、深い温かさ。

サラの日記728(いつもの時間に交信が無いこと。)

銀菓神暦2017年4月3日

分かってはいるけれど、
覚悟もできていたけれど、
それでもやっぱり……

さびしい。

いつもの時間に交信が無いこと。
それでももしかしたらと交信を試みること。
やっぱりそうよね……と思うこと。

私の中に、
ミシェルの意識体の半分が存在している 。
でも、それはミシェルじゃない。
ミシェルの意識体の力を持った、私の一部でしか

ない。

サラの日記727(……今……から……くぐる……よ)

銀菓神暦2017年4月2日

<……サラ? ……今……から……くぐる……よ>
<……うん。……行ってらっしゃい>
<何……か言い忘れ……てることな……いかな>
<忘れてたらすぐに帰って来て>
<そ……うだね。そう……す……るよ>
<うん>
<行っ……てきま……す>
<行ってらっしゃい>
<……じゃ……あ>
<……じゃあね>
<……愛……してる。サ……ラ……>
<……愛してる。……ミシェル>

サラの日記726(気に……入らな……い?)

銀菓神暦2017年4月1日

<……サ……ラ? 就任式はど……うだ……った?>
<うん。無事に終わったわ。今日からあのキャンパスの講師よ。非常勤だけど>
<そっ……か。おめ……でとう。『非常……勤だけど』なんて言……うぐらいなら、半……年を待たずに長期へ……の契約更新を申し……出てみれば? サラな……らきっと大丈……夫だよ>
<ううん。非常勤でいいの。多分、銀菓神使アロゼの居場所は学校じゃないから>
<そ……うだね。サラがそ……う思うのなら、そうなのかもし……れない。あ、そうだ>
<なあに?>
<名前。考……えたんだけ……どさ。絆(きずな)ってい……うのはど……うかな>
<絆……>
<うん。気に……入らな……い?>
<ううん。いいわ。絆……。絆・ブルジョン・ダグルム=フェストン>
<じゃあ、絆……で。間に合っ……てよかったよ。明日星間移動……用鳥居をくぐ……る>
<うん……>
<くぐ……る前に、必ず交信を入……れるから>
<うん……。待ってる>
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