サラの日記604(未来の私たちのような気がしてなりません。)

銀菓神暦2016年11月30日

メランジェ先生と奥様の様子を見ていると、未来の私たちのような気がしてなりません。
まだはっきりとは聞いていないけれど、ルセット先生が遠くに行ってしまうような予感がしています。
離れても、メランジェ先生と奥様のように、信頼し合えて繋がり合える関係でいられるでしょうか。
考えれば考えるほど不安になってきます。
いっそのこと、はっきり訊いてしまえばいいのだけど、それも不安です。

そんなことを思っているだけで心の中に不安が渦を巻いて、私をすっぽりと覆ってしまいます。
不意に、ルセット先生の腕に優しく包まれました。
「大丈夫だよ。大丈夫……」
ルセット先生のその言葉を聞いて、ルセット先生に私の不安が伝わってしまったことを悟りました。
「守秘義務がある。まだ言えないんだ。ごめんね、サラ。こんな仕事で……」
「大丈夫。今ので、ちょっと強くなれた。……ミシェルと私も、メランジェ先生と奥様みたいになれたらいいね」
「うん……」
ルセット先生の腕に、少し力が入るのを感じました。
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サラの日記603(メランジェ先生が送ったものとそっくりです。)

銀菓神暦2016年11月29日

メランジェ先生に声を掛けられました。
「サラさんにお願いがあるのですが……」
「えっ? どうされたんですか?」
私にお願いだなんて、びっくりしました。
「付いて来てもらえませんか? 四次元時空間に」
「いいですよ。奥様ですね?」
すると、メランジェ先生は照れくさそうに うなずかれました。
「教え子の研修だとでも言い訳しないと、なかなか思い切れなくてね……」

四次元時空間のとある製菓店の控室。
メランジェ先生の奥様が、にっこりしながら私たちの方を見上げていらっしゃいます。
「ほら!」
私はそう言いながらメランジェ先生に笑い掛けました。
メランジェ先生は、私に笑い返してくださったあと、奥様に向かって何かを念じ始められました。
しばらくすると、奥様が、こっくりこっくりうなずきながら、数種類のクリスマスケーキのイラストを描き始められました。
メランジェ先生が送ったものとそっくりです。

サラの日記602(私だったら、気配だけでも嬉しいです)

銀菓神暦2016年11月28日

メランジェ先生が、研究室の机の上の空間に、手刀で小さな鳥居を描かれました。
そこへ向かって、クリスマスケーキの案のスケッチを見ながら念を送っていらっしゃいます。
どうやら、四次元時空間にです。

「奥様にですか?」
そうたずねると、メランジェ先生は少し恥ずかしそうに「そうですよ」と言われました。
「直接持って行かれないんですか?」
「持って行っても、結局は、直接渡すことはできませんからね」
「でも、気配は感じてくださるかもしれません」
「まあ、そうでしょうけどねぇ……」
「そうですよ。私だったら、気配だけでも嬉しいです」

サラの日記601(必要以上の言い訳を)

銀菓神暦2016年11月27日

ルセット先生が、弦の切れた木べらギターを抱えて、どこかから帰ってこられました。
「どうしたの? この前張り替えたばかりなのに。ミシェルがこんなに早く弦を切っちゃうなんて珍しいわね」
何気なく掛けた私の言葉に、ルセット先生は弦を張り替えながら、必要以上の言い訳を、たくさん たくさん しゃべられました。
言い訳が一通り終わると、こんなことを訊かれました。
「今日はあっちには行かなくていいの? ミヤマエ」
「うん。クリスマス前の静かなひと時よ」
「じゃあ、今日はシュウくんには会わないんだね」
「うん。でも、昨日会ったわ。あ、そうだ。昨日、ちょっとびっくりしちゃった。果物を届けに来てくれた時のシュウちゃんの雰囲気が、ミシェルにそっくりだったの」
「……そう」
ルセット先生は自分から訊いておいて、それ以上は話されませんでした。

アロゼの休憩室60「Peanuts Orchestra 第二巻の脱稿&入稿が完了しました」

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https://www.facebook.com/tanoshiikotokoubou/posts/1845796158986772

本日、めでたく『Peanuts Orchestra シリーズ2  カンド・ナッツ・ホールのひみつ』の脱稿&入稿が完了しました。
これからの約20日間は、印刷&製本が上がるのを待ちながら、楽しいこと工房のホームページを第二巻発売モードにいじる作業です。

もちろん、『銀菓神使アロゼ~アロゼ誕生前の物語~サラの日記』の方も、どんどんお話を進めていきますよ~ヽ(^o^)丿
最近、ルセット先生の様子が謎めいています。

サラの日記600(「ごめん。殿下じゃなくて」)

銀菓神暦2016年11月26日

今朝は一人で菓子工房ミヤマエの手伝いに行きました。
でも……。
ルセット先生が近くに居るみたい。
不思議な感覚。

――あっ、ミシェルだ!――
そう思って入口の方を覗いたら、ルセット先生じゃなくてシュウちゃんでした。
シュウちゃんは私の表情からそのことを悟ったようで、「ごめん。殿下じゃなくて」って。
「ん、ううん。おはよう、シュウちゃん。果物?」
「うん。ここでいい?」
シュウちゃんは今日の分の果物が入った段ボールを置いて帰って行きました。

サラの日記599(ルセット先生は、王とお二人だけで長い時間お話しされていました。)

銀菓神暦2016年11月25日

ルセット先生は、王とお二人だけで長い時間お話しされていました。
何を話されていたのかは分かりません。
でも、最近ではほとんどのお話しをご一緒させていただいていたので、今日のは余程の極秘事項なんだろうなという察しはつきます。

お話が終わって部屋に戻って来られたルセット先生は、さっきまで泣いていらしたような目をされていました。
「ミシェル、何かあった?」
「なんでもないよ」
なんでもないはずはないのに、ルセット先生はそう言って、いつものように穏やかに笑ってくださいました。
それから、こう付け加えられました。
「王太子の仕事と、銀菓神使の仕事と、サラのパートナーをやってるだけだよ」

サラの日記598(もちろん、四次元時空間用です。たぶん。)

銀菓神暦2016年11月24日

シロップとジャムを炊くにはもってこいの朝でした。
鍋から伝わる熱で暖をとりました。
夏場にはわずらわしいなと思っていた銀菓神使スーツも、今朝は具合の良い防寒具でした。

今年も、四次元時空間でのあのイベントが近付いてきました。
最近、メランジェ先生が生き生きとした表情をされています。
いえ、決して普段が元気のない表情だという意味ではありません。
いつにも増して生き生きしていらっしゃるという意味で……。

メランジェ先生の机の上には、今年のクリスマスケーキの案をスケッチしたものが何枚も何枚も置かれています。
もちろん、四次元時空間用です。たぶん。

サラの日記597(僕らだけの、もう一つの新嘗祭だ)

銀菓神暦2016年11月23日

新嘗祭(にいなめさい)。
採れたての極早生(ごくわせ)や早生(わせ)のほかに、ほぼ徹夜で作ったお菓子が供えられました。
終了後、花綵(はなづな)アグルム城の皆さんでいただきました。

部屋に戻ってひと息つこうとしていると、ジャックさんがゾエさんと一緒に訪ねて来ました。
かごいっぱいの柿を抱えています。
「公(おおやけ)にはできないけどさ、俺たちの新嘗祭にはこれがあってもいいだろ?」
ジャックさんはルセット先生の顔を覗き込みます。
ルセット先生はいつも以上に穏やかに微笑まれました。
「いいよ。僕らだけの、もう一つの新嘗祭だ」

その様子を見ていたら、胸が苦しくなりました。
悲しくてとか、嫌なことがあっての苦しさではありません。
新しい一歩が、少しずつ現実になっていくんだなっていう思いでいっぱいの苦しさです。

サラの日記596(明日の新嘗祭(にいなめさい)に向けて)

銀菓神暦2016年11月22日

花綵(はなづな)アグルム城では、準備が進んでいます。
今日はそのための収穫に出掛けました。
今年の極早生(ごくわせ)は出来不出来にむらがあって、同じ木から採れたものでも酸っぱかったり甘かったりだったので、次の早生(わせ)もそんな調子なのかと心配していたのですが、早生(わせ)は良い加減に甘いものに育ってくれました。

だ・け・ど……。
むらがあって生食用には向かないなっていうものも美味しく加工するのが私たち銀菓神使の仕事。
早速今晩中に加工して、明日のお供えの一品に加えます。
今夜は忙しくなりそう。
でも、大切な行事。
頑張ろう。

サラの日記595(菓子工房ミヤマエに居る時の)

銀菓神暦2016年11月21日

やっぱり今日も感じました。
ルセット先生の意識体の全体量が、いつもより少ない。
なのに、ルセット先生はそれを復元しようとしていない。
減っていることに気付いていないの?
それとも、減ったままで構わないことが分かっているから、そのまま放っているの?

だけど、不思議なことがありました。
菓子工房ミヤマエに居る時のルセット先生の意識体の全体量は、いつもの通り。
どういうことなんだろう……。

サラの日記594(意識体の全体量が)

銀菓神暦2016年11月20日

研究室はお休み。
いつもなら一緒に居るはずのルセット先生の姿がありません。
どこに出掛けられたのかも分かりません。

ただ、遠くではない気配だけは感じることができます。
前にも一度、同じようなことがありました。
あの時と同じような気配を感じます。

夕方になって戻って来られたルセット先生は、少し疲れていらっしゃるようでした。
いつもはウィルさんかマリーさんが淹れてくださるお茶を、今日は自分で淹れさせてもらいました。
癒しのアロゼ入りで。

ルセット先生の意識体の全体量が、いつもより少ないような気がします。

サラの日記593(この時期の四次元時空間で盛んに行われている)

銀菓神暦2016年11月19日

ルセット先生に誘われました。
この時期の四次元時空間で盛んに行われている、イルミネーションを観に行こうって。
久しぶりの四次元時空間は、全身にずしりと重みを感じます。
どんどん背中が丸くなって、どんどん顎(あご)が前に出てきます。

「サラ、おばあちゃんみたいだよ」
ルセット先生がしゃきしゃき歩きながら笑います。
「……はぁ。やっぱりたまには四次元時空間にも出て来ないとだめね。こんなにきついと思わなかった」
「そうだろ? だから誘ったの」
ルセット先生はしたり顔です。

サラの日記592(当時はよく分からなかったことが)

銀菓神暦2016年11月18日

学部生時代のテキストを今の立場で読んでみると、当時はよく分からなかったことがなんとなく理解できるようになっています。
毎日同じことの繰り返しばかりのようだけど、少しずつ勉強は進んでいるんだなって思えました。

「ねえ、サラ。これもあげるよ」
ルセット先生はそう言って、本を数冊私の前に差し出されました。
その本は、私が今読み返している学部生時代のテキストと同じものでした。
「……ん? おんなじ……」
「うん。おんなじだったよ。ただの印刷物だった頃はね。でも、サラのとは違う、僕の波動が染みついてる」
ルセット先生はそう言ってにっこりされました。

どこかで聞いたことがあります。本に残っている波動の欠片の話。
――あ。ケンジさんだ……――

「もらっていいの?」
「うん。持ってて。サラが持ってくれていると分かっていれば安心だ」

サラの日記591(だって、今すぐ読みたかったんだもん)

銀菓神暦2016年11月17日

留守神の当番が明け、一週間ぶりにいつもの時間が戻ってきました。
やりたいことは……。
本をたくさん読みたい。なんでもいいから。
というわけで、朝、菓子工房ミヤマエの手伝いに行ったついでに、学部生の頃使っていたテキストを鞄に詰め込んで帰って来ました。
来年度から学部生の講師だし、もう一度読み返しておくのもいいかなと思って。
でも、ルセット先生が言うんです。
「もうすぐあっちに引っ越すのに、こんなに持って来ちゃったの?」
「だって、今すぐ読みたかったんだもん」
「そんなことしてて、論文は大丈夫なの?」
「大丈夫よ。だって、読みたいのを我慢してると余計に進まないもん」

アロゼの休憩室59「『Peanuts Orchestra シリーズ2 カンド・ナッツ・ホールのひみつ』は 2016年12月15日ごろの発売予定です」

さて、最近のアロゼの休憩室はずっとこの話題なんですけど、
絵物語『Peanuts Orchestra シリーズ2 カンド・ナッツ・ホールのひみつ』は
2016年12月15日ごろの発売予定で制作が進んでおります。
http://tanoshiikotokoubou.web.fc2.com/

6月に第一巻を刊行した時とは違って、今回は主婦+バイト生活との兼業。
入稿しなければならない日まであと2週間。
果たして間に合うのでしょうか(^^;)
でも、忙しくてできない……と予定を延ばしていたら、結局いつまでたってもできないですからね。
がんばりますよ~!(^^)!
今置かれている状況と仲良くしながら。
入稿日に間に合うことを願っていてください^m^

サラの日記590(銀菓神局でも警戒しているモノたち)

銀菓神暦2016年11月16日

留守神の最終日。
ケンジさんが護衛に付いてくださっています。
私に襲い掛かって来た謎の力の欠片も、きれいに掃除してくださいました。

「サラさんに襲い掛かって来た昨日のは、銀菓神局でも警戒しているモノたちの仕業じゃないかと思われるんです」
「それって一体何者なんですか?」
「ごめんなさい。詳細はまだ銀菓神局の外部には……」
「そうなんですか……。もしかして……」
「そうです。昨日のモノたちが、サラさんとルセット先生が一緒に居ることを妨害しようとしているモノたち。でも大丈夫です。お二人のことは僕たちが必ずお守りしますから」

サラの日記589(飛べ! どこでもいい!)

銀菓神暦2016年11月15日

嫌な空気を感じます。
でも、何かが起こっているわけではありません。
――なんだろう……――
そう思った次の瞬間、<飛べ! どこでもいい!>とルセット先生からの交信がありました。
とっさにその場に手刀で鳥居を描いて、もぐりこみました。

もぐりこんだ先は、カリンさんの居る島でした。
<ミシェル? 何があったの? どうしたの?>
<どこに出た?>
<カリンさんの島……>
<長居はまずいな……。サラ。そこから銀菓神局に飛べるか?>
<う、うん>
<銀菓神局に飛んで、ケンジに応援を頼むんだ。それで通じるはずだ>
<はい>

サラの日記588(先代のアロゼ)

銀菓神暦2016年11月14日

休憩時間に少しうとうとしていました。
夢なのか現実なのか、先代のアロゼさんに会いました。
と言っても、先代のアロゼさんはすっぽりと光に包まれて、顔ははっきりと見えませんでした。
<あなたに……>
先代のアロゼさんからのメッセージがぼんやりと伝わってきました。
何かの力をくださったようですが、なんの力なのかは分かりません。

<ねえ、ミシェル?>
<……ん、何? 何かあったの?>
久しぶりのルセット先生の声です。すぐに応答してくれました。少し安心しました。
<先代のアロゼさんが何かの力をくれたの>
<先代の? ……そういうこともあるかもしれないね>
いつも通り、何を聞いても慌てない、穏やかなルセット先生に、さっきよりも もう少し安心しました。

サラの日記587(ヒントも無しに自分で見付けるってことは難しい)

銀菓神暦2016年11月13日

今日も銀菓神社は穏やかな一日でした。
お天気の方も快晴。

でも、ふと思いました。
何か問題が起きて、それを解決するために行動することよりも、何も問題が無い時に、それを保とうとすることの方が難しい。
与えたれたことをこなすことは、ただ目の前にあることだけをすればいいのだから簡単。
でも、なんのためにどう動けばいいのか、ヒントも無しに自分で見付けるってことは難しい。
穏やかな時にこそ、銀菓神使の力量が試される。

――ミシェルなら、こんな時に何をする?――

サラの日記586(あなたの力が否定されているわけじゃない)

銀菓神暦2016年11月12日

胸の、アグルムの聖石のペンダントから、ざわざわしたものを感じました。
ざわざわがより強い方へと視線を移すと、銀菓神社の拝殿にジャックさんとゾエさんの姿がありました。
ジャックさんとゾエさんの波動が、 花綵(はなづな)アグルムとプラクミーヌの波動が、不思議なバランスで混じり合っています。
長いアグルムの歴史の中で育まれてきた、純粋なアグルムの力を持つ聖石には、その不思議なバランスを、急には受け止めきれなかったようです。

アグルムの聖石を両手で包み込みました。
――大丈夫。少しずつ、時代が流れてゆくだけ。あなたの力が否定されているわけじゃない――

アグルムの聖石に求められているような気がして、闇の西瀬忍を吹きました。
戸惑いと淋しさ。でも、その中から新たな希望が生まれることを想いながら。

サラの日記585(ナナちゃんは院へ。私は学部へ)

銀菓神暦2016年11月11日

銀菓神社三日目。
退屈だと言ったら贅沢なのかもしれないかれど、大きな仕事のないまま、穏やかな時間が流れています。

持ってきていた光の西瀬忍を吹いてみました。
今日もやっぱり、青紫色の光の粒が光の西瀬忍の波動と一緒に舞います。
初めて青紫色の光の粒を感じた時は、不安な気持ちでいっぱいでした。
でも、今日感じたのは安心感。
カリンさんに見守られているような、一人じゃないって思える安心感。

「アロゼ先生!」
聞き覚えのある声がしました。
学部生のナナちゃんです。
私が留守神の当番をやっていることを知って、わざわざ私が当番のところをねらって、院の合格祈願に来てくれたそうです。
――ナナちゃんは院へ。私は学部へ――

サラの日記584(銀菓神局ともチームですね。よろしく)

銀菓神暦2016年11月10日

お昼前に、ケンジさんが銀菓神社に来られました。
銀菓神社や留守神の当番の人たちに異常が無いかの見回りです。

「サラさん、夜は大丈夫でしたか?」
「はい」
「あ、学部の講師、決められたんですね。昨日、銀菓神局に登録されたのを偶然目にしたんです」
「そうなんです。自信ないんですけど……」
「大丈夫ですよ。学部での仕事なら一人じゃないじゃないですか。銀菓神局ともチームですね。よろしく」
ケンジさんが握手の格好で手を差し出されました。
「あ、はい。よろしくお願いします」
ケンジさんの握手に応じました。
ケンジさんの手は寒さで冷たくなっていましたが、なんだか温かい波動を感じる手でした。

あとになって気が付きました。
あの握手の時、私の中に広がっていた不安の欠片を、ケンジさんはこっそり集めて掃除してくださっていたみたいです。

サラの日記583(午前中に菓子工房ミヤマエの手伝いと研究室の用事を済ませて、)

銀菓神暦2016年11月9日

午前中に菓子工房ミヤマエの手伝いと研究室の用事を済ませて、午後から銀菓神社に留守神の仕事に行きました。
本殿は拝殿ほど人通りは無くて、秋の木の葉が風に揺れる音が心地良く聞こえます。
ルセット先生と一緒ではない初めての仕事。正直に言ってしまえば不安です。
でも、拝殿を担当している一年生の様子を見ていると、不安だなんて言っていられません。
初めての仕事なのに、それなりにちゃんとこなしている。
まあ、銀菓神局からの命を受けるぐらいだから、一年生とは言え、それなりの力のある人たちの集まりなのだろうけど。
――あれ? 私、一年生の姿に元気付けられてる……――

今夜は銀菓神社に泊まりです。

<おやすみ、サラ>
ルセット先生からの交信です。
<おやすみなさい、ミシェル。今日は何も無い、いい一日だったわ>

サラの日記582(モンテ学長に話しに行く前に、)

銀菓神暦2016年11月8日

もう迷っていません。多分。
明日からの留守神の仕事に集中するためにも、今日、きっぱりと決着をつけておこうと思いました。

モンテ学長に話しに行く前に、メランジェ先生に報告しました。
「昨日の話なんですけど……」
それだけ言ったところで、メランジェ先生はもう話が全部分かったかのような表情で、にこにことうなずいて、こう言われました。
「よく決心されましたね。よろしくお願いしますね、アロゼ先生。学部の先生達が腕利きだと、私たちはゆとりをもって仕事ができますよ。院で一から教え直すのは大変ですからね」
「え、あの……」
「一緒に行きますか? 学長室」
「あ、はい……」

いつもこうです。
最後の一歩はメランジェ先生にうまく丸め込まれます。
でも、嫌な感じはしません。
丸め込む前に、自分でしっかり悩めるだけの十分な時間をくださるから。

サラの日記581(「明日まで待ってください。明日、必ずお返事しますから」)

銀菓神暦2016年11月7日

モンテ学長に呼び出されました。
学長室に行ってみると、メランジェ先生もいらっしゃいました。
「そろそろ学部の方に返事をしなければならないんです」
モンテ先生が切り出されました。
「取り敢えず一学期間だけの契約でやってみませんか?」
メランジェ先生がそう言われました。

しばらく黙っていました。
迷っていました。
色んなことが頭の中をぐるぐると回ります。

「明日まで待ってください。明日、必ずお返事しますから」

学長室を出て、使えるようになったばかりの透明化の術で、学部の敷地内をゆっくり歩いてみました。
学部生たちの、若くて希望がいっぱいのエネルギーに押しつぶされてしまいそうです。
――私に、ここでの仕事ができる? まだ、銀菓神使としてのスタートラインに立ったばかりの私に……――
ルセット先生に相談したい気持ちを抑えつけました。
これは自分で決める。ちゃんと自分で決められるって、ルセット先生に安心してもらいたいから。

アロゼの休憩室58「表紙のイラストを特別公開!」

表紙用イラスト2ただいま『Peanuts Orchestraシリーズ2 カンド・ナッツ・ホールのひみつ』を制作中です(*^-^*)

←本日は表紙のイラストを特別公開!

さて、ここはどこなのでしょう。
そして、ここからどんな物語が……。

どうぞお楽しみに!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『銀菓神使アロゼ~アロゼ誕生前の物語~サラの日記』では、
少しずつ自分の足で前に進み始めたサラちゃんのお話を展開中。
こちらもぜひ応援してくださいねヽ(^o^)丿

サラの日記580(この間の私、そういう気分だったのよ)

銀菓神暦2016年11月6日

今日も城にはルセット先生の姿はありません。
でも、気にしないことにしました。
気にせず、私は秘儀の練習です。
闇の波動に乗って、闇の波動を断ち切る。
思ったタイミングでできるようになるまで、その練習を何度も繰り返しました。

ドアの向こうにルセット先生とウィルさんの話し声。
透明化の状態で待ち伏せしてみました。
部屋に入って私の姿を捜しているルセット先生。
私の気配に気付かれたのか、ウィルさんに部屋の外へ出るよう話されているのが聞こえました。

「いいよ、サラ。居るんだろ?」
そんなルセット先生の背後に、透明化のまま近付きました。
「ね。気持ち悪いから出てきてよ」
ルセット先生は見えない私に言われます。
私は姿を現しながら言います。
「でしょ? 気持ち悪いでしょ? この間の私、そういう気分だったのよ」

サラの日記579(ルセット先生が、カリンさんではない誰かに会いに行っています。)

銀菓神暦2016年11月5日

ルセット先生が、カリンさんではない誰かに会いに行っています。
誰かに会いに行ったのは確かなのだけど、
帰って来たルセット先生からは、カリンさんの波動は感じませんでした。
――誰なんだろう……――
ルセット先生から感じられる、かすかに残った誰かの波動からは、ルセット先生と同じ、穏やかで温かいものを感じます。
ルセット先生と違うのは、銀菓神使ではなさそうだということ。
――嫌な感じはしないし、まあいいかな……――
そう思いました。

「訊かないの?」
ルセット先生がぽつりと言われました。
「訊かない。……必要な時は、教えてくれるんでしょ?」
私がそう答えると、ルセット先生は「やられた」というような表情でにっこりしてくださいました。

サラの日記578(ルセット先生の声が、薄い壁の向こう側からのような響きで聞こえます。)

銀菓神暦2016年11月4日

「さあ、今日は仕上げようか」
ルセット先生は張り切った声です。
ルセット先生は私が持っていた闇の西瀬忍をひょいと手に取り、吹きながら姿を消されました。
しばらくすると、「はい、やってみて」とルセット先生が姿を現されました。

青紫色の光の粒で闇の西瀬忍を包み込み、目を閉じてそっと息を吹き込みます。
――うまくいきますように――

「いいよ。それでいい。できてるよ、サラ」
ルセット先生の声が、薄い壁の向こう側からのような響きで聞こえます。
<怖い。戻れない……>
<大丈夫。今感じている闇の波動を断ち切るんだ>
<……だめ。できない>
<切れ! 気をしっかり持つんだ! 飲み込まれるな!>

気が付くと、ルセット研究室のソファの上でした。
「……だから秘儀なんだ。誰にでも使える技じゃない。教えておいてなんだけど、サラにもあまりおすすめしない」
ルセット先生は心配そうに私の顔を覗き込みながら、そんなことを言われました。

サラの日記577(極秘の護衛官)

銀菓神暦2016年11月3日

「もう一度、正式に申し込んできた」
「……カリンさん?」
すると、ルセット先生はゆっくりとうなずいて、こう言われました。
「カリンは戸惑っていたけど、僕らにはカリンの力が必要だから、カリンにもう一度、アウトサイド・パートナーを申し込んできた」
「受けて……もらえたの?」
その質問に、ルセット先生は首を横に振られました。
「断られたよ。だから、銀菓神使としてではなく、花綵(はなづな)アグルムの王太子としてお願いしてきた」
「で、どうだったの?」
「アウトサイド・パートナーというのではなく、僕らの護衛役としてなら、受けてくれると……。カリンを、僕とサラ専属の、極秘護衛官として迎えることにした」
「じゃあ、カリンさんもここで暮らすの?」
「ううん。今まで通りあの島で。極秘の護衛官だからね」
「どうして? どうして急にカリンさんを?」
「サラを守るためにできる限りのことは、今、しておきたいから」
「ミシェル、次の派遣先……」
私がルセット先生に訊こうとしたその言葉を、ルセット先生はさえぎるようにしてこう言われました。
「次の派遣先は関係ないんだ。今できることを、今しておきたいだけだよ」
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