サラの日記574(送り主は……シュウちゃん。)

銀菓神暦2016年10月31日

花綵(はなづな)アグルム城に、たくさんのカボチャが届きました。
送り主は……シュウちゃん。
意外な人からの意外な贈り物にびっくりしましたが、城の皆さんでおいしくいただくことにしました。

というわけで、夕食はカボチャパーティーでした。

・カボチャのスープ
・カボチャのサラダ
・カボチャの揚げ物
・カボチャのグラタン
・カボチャと4種のチーズの和え物
・カボチャのパイ
・カボチャのパウンドケーキ
・カボチャのプリン
・カボチャのアイスクリーム

あと何があったっけ……。
……ん、おいしかったっ。
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サラの日記573(留守神の打ち合わせがありました。)

銀菓神暦2016年10月30日

銀菓神さまが神在(かみあり)の集いに出掛けられている間の、留守神の打ち合わせがありました。
今年はルセット先生は当番にはなっていなかったので、私一人での参加でした。
案内役に、銀菓神局の方が一人来られるとのことだったのですが、ケンジさんでした。
ケンジさんは私の方をちらりと見られましたが、会釈程度のあいさつをしたあとは、特に個人的な言葉を交わすことはなく、淡々と仕事をこなしていく感じでした。

一通りの打ち合わせが終わって、帰り支度をしていると、ケンジさんが話し掛けて来られました。
「殿下とご一緒でないのは不安ですか?」
「えっ? ん……。 大丈夫です……」
私が戸惑いながら答えると、ケンジさんは、仕事モードだった表情を少し緩めて、小声でこんな話をされました。
「上層部に、サラさんと殿下がいつもご一緒なのを良く思っていない方がいるのです。僕、来年度からの転任希望を出しました。人事を希望で。サラさんと殿下のことは、できる限りお守りします」
「あ……。はい」
「それと、以前お話しいただいていたお友達の配属の件、うまく進んでいますからね」

サラの日記572(少し前のシュウちゃんからは感じなかった、大人の貫録のようなものを感じました。)

銀菓神暦2016年10月29日

研究室での用事は午前中に済ませ、午後からは実家の菓子工房ミヤマエの手伝いに行っていました。
で、カボチャのプリンとケーキを大量に焼きました。
この時期の、花綵(はなづな)アグルムの四次元時空間に当たる地方の菓子業界からの影響で、五次元時空間の菓子業界でも流行っているのだそうです。

果物屋さんのシュウちゃんが、今日は特別にカボチャを運んで来てくれました。
シュウちゃん家(ち)は果物専門なのだけど、青果つながりの知り合いから仕入れることができたのだそうです。

「サラちゃん。元気そうだね」
シュウちゃんはさらりと笑顔で声を掛けてくれました。
「うん……」
「今日は? 殿下は一緒じゃないの?」
「うん……。ミシェルは研究室の仕事があるから……」
「んじゃ、またね。今日はまだあと十件以上配達があるんだ。カボチャばかりね」
シュウちゃんは笑いながらトラックの方へと戻って行きました。
その後ろ姿に、少し前のシュウちゃんからは感じなかった、大人の貫録のようなものを感じました。

サラの日記571(ルセット先生の前ではできなかったのですが、)

銀菓神暦2016年10月28日

闇の西瀬忍を吹くことに慣れてしまうと、光の西瀬忍の力が引き出せなくなってしまいます。
光の西瀬忍を吹くことに慣れてしまうと、闇の西瀬忍の力が引き出せなくなってしまいます。
そんなことをずっと繰り返してばかりで、ルセット先生が言われる、闇と光の切り替えなんて、いつまでたってもできそうにありません。

ルセット先生の前ではできなかったのですが、一人になった時、闇の西瀬忍も光の西瀬忍も、同じ方法で吹いてみました。
あの、青紫色の小さな光の粒を使ってみました。
光の加減によって、赤にも青にも見える粒。
どちらでもない波動を持つ光の粒。
光と闇の西瀬忍を作ったカリンさんと同じ波動を持つ、あの青紫色の光の粒の力を使えば、どちらの西瀬忍の力も引き出せるのではないかと思って。

ルセット先生が戻って来られる気配を感じたので、癒しのアロゼを振りまいて、カリンさんの波動の気配を消しました。
部屋に入って来られたルセット先生は、一瞬、「ん?」という表情をされましたが、特に何も訊かれませんでした。

アロゼの休憩室57「『カンド・ナッツ・ホールのひみつ』の発売日は2016年12月15日ごろです」

絵本『Peanuts Orchestra シリーズ 2 カンド・ナッツ・ホールのひみつ』の発売日が2016年12月15日ごろに決まりました。
現在、家事・育児・アルバイトの合間を縫って、コツコツと制作中です。
今回のお話は、タイトルの通り、「カンドナッツホールのひみつ」についてです。
どんな「ひみつ」なのかはまだ言えません(´艸`*)
が、ほっこり わくわく してもらえるような作品を目指して書(描)いています。
どうぞお楽しみに!

そしてもう一つ。
こちらは年明け以降の予定ですが、面白グッズの制作も予定しています。
まだ仮の企画の段階なので、そのグッズが何であるのかは発表できませんが、
「何かなぁ~」って思いながら楽しみにしていてください(^-^)

サラの日記570(「すぐに切り替えられるようになるまで練習するんだ」)

銀菓神暦2016年10月27日

昨日に引き続き、闇の西瀬忍を吹く練習をしています。
闇の波動を使うことに集中しながら闇の西瀬忍を吹くことに少し慣れてき始めた頃、ルセット先生は、闇の西瀬忍と光の西瀬忍を吹き比べてみるよう言われました。
光の西瀬忍を吹いてみて愕然としました。
光の西瀬忍とは思えないような、力のない、悲しげな音がします。
光の西瀬忍が持つ、本来の音ではありません。
私が、闇の波動を出しながら光の西瀬忍を吹いているからです。

「すぐに切り替えられるようになるまで練習するんだ」
ルセット先生は静かにそう言われました。

サラの日記569(闇の西瀬忍を、自分の中の闇の波動で支配しているような感覚)

銀菓神暦2016年10月26日

ルセット先生は、闇の西瀬忍の、ルセット先生流の吹き方を教えてくださいました。
今まで自分流に吹いていたのとは少し違います。
私は、闇の西瀬忍が発してくれる波動に身をゆだねる感覚で吹いていましたが、
ルセット先生は、闇の西瀬忍を、自分の中の闇の波動で支配しているような感覚で吹かれています。

私が息を吹き込む闇の西瀬忍に、ルセット先生が指を添えられます。
「違う。サラはまだ優し過ぎる」
ルセット先生は私の手から闇の西瀬忍を取ると、息を吹き込みながら、私に指を添えるよう促されます。
「こんな感じ。分かる?」
「うん。分かるんだけど、どうしたらそんな風になるのか分からない」
「光の西瀬忍を吹く時の全く逆をやればいいんだ。今のサラの吹き方では、光の力の方が強過ぎて、これの力を引き出せていない。光と闇の吹き分けができないと、僕の秘儀は使えない」
「はい……」

サラの日記568(「ちゃんと教えておく。サラができるようになるまで」)

銀菓神暦2016年10月25日

ルセット先生が、いつになく真面目な表情で言われました。
「ちゃんと教えておく。サラができるようになるまで」
ルセット先生が私に教えると言ってくださっているのは、手刀で描いた鳥居から闇の西瀬忍を取り出して、闇の西瀬忍が奏でる音色をきっかけに透明化する技のことだと、すぐに分かりました。
でも、どうして急にそう思うようになったのか、少し不安を感じて、返事をできずにいました。
「僕は花綵(はなづな)アグルムの王太子で、次期王。サラはいずれ王太子妃になって、次期王妃になる人。でも、僕たちは二人とも銀菓神使で、二人がずっと一緒に居られる保証は無い。だから教えておく。今の僕が今のサラに教えておけるものは、全部教えておく」
ルセット先生はまだ何か言いたそうでしたが、急に意識体の一部にロックを掛けられました。私も、無理にルセット先生の意識体を読もうとはしませんでした。

ルセット先生の顔に、いつもの穏やかな笑みが戻りました。
「さ、始めよう」
「はい」

サラの日記567(とてもざわついていることを感じます。)

銀菓神暦2016年10月24日

雲一つない、きれいな青空でした。
朝の冷たい空気と、昼間の強い日差し。
いつもと変わらない秋の感覚。

でも、三日前の大きな地震は、銀菓神界にも影響を及ぼしています。
また、震源地が花綵(はなづな)アグルム城から遠くはなかったため、花綵(はなづな)アグルム城への影響も少しあったようです。
具体的には、花綵(はなづな)アグルム城の地下にある聖石の母体。
とてもざわついていることを感じます。
私のペンダントになっているアグルムの聖石も、かなり波動が乱れていることを感じます。

ルセット先生から教えていただいている秘儀も早く修得したいのですが、今日は、花綵(はなづな)アグルム城の地下で、アグルムの聖石の波動を整えることに集中しました。

サラの日記566(全部ルセット先生の力だった)

銀菓神暦2016年10月23日

昨日のあれからルセット先生に新しい技を教えてもらっています。
でも、ルセット先生が秘儀だと言われているだけあって、なかなかできるようになりません。
学部に実習に行った時にできたのは、全部ルセット先生の力だったってことが分かりました。
名前だけは正式な銀菓神使になれたけれど、今の私は、まだ中身の入っていない入れ物の状態なんだってことも実感しました。

「焦らなくていいよ」
ルセット先生はそう言ってくださいます。
「うん……。でも、今できないと、これからの私を決められない」
「焦らなくていい。ただ目の前のことに真剣に取り組んでいれば、歩いてきた道も、歩くべき道も見えて来るんだ。銀菓神使七年目の僕は、そう感じてる」
「うん。分かってる。でも、何かをつかんでいないと迷子になってしまいそう」

サラの日記565(あれは僕が大事にしてる秘儀なんだ)

銀菓神暦2016年10月22日

「ね、ミシェル。お願いがあるの」
「何?」
「この前の、透明になる術、教えて」
「んー。どうしよっかなぁ……」
「ねえ、意地悪な事言わずに教えて。もう正式な銀菓神使なんだから大丈夫でしょ?」
「んー。あれは僕が大事にしてる秘儀なんだ」
「そう……」
しょんぼりしてルセット先生の研究室を出て、メランジェ先生の研究室に行こうとしていると、ルセット先生が呼び止めてくださいました。
「分かった。教える。でも、あれを何に使うの?」
「もう一回確かめたいの。学部の講師になること、どうするか」
「ん。分かった」

サラの日記564(マヤちゃんとの立ち話は一時間ほど続きました。)

銀菓神暦2016年10月21日

マヤちゃんがにこにこしながら近付いて来ます。
「サーラちゃんっ」
「なあに? 何かいいことあった?」
マヤちゃんは待ってましたとばかりにしゃべり始めました。
「あのね、内定したの。銀菓神局付(きょくづき)に。それがね、……」
マヤちゃんとの立ち話は一時間ほど続きました。
最後にマヤちゃんが私に訊いてくれました。
「で、サラちゃんは? どこかに内定した?」
「ん……。全くないわけじゃないんだけど、……まだ考え中なの」
「そっか。ま、サラちゃんはどっちにしても忙しくなるもんね。ダグルム=フェストン家のお嫁さんだもんね」
「う、うん……」
仕方のないことだとは分かっていても、そうはっきり聞いてしまうと、なんだかもやもやした気持ちです。

サラの日記563(この星の不思議を感じます。)

銀菓神暦2016年10月20日

研究論文。本格的に取り組まなくてはならない時期になってきました。
大まかなものはだいたい出来上がっているのですが、そこから先がなかなか進みません。
メランジェ先生は「私に見えるところでやりなさい」という方針なので、朝からメランジェ研究室にこもっていましたが、だんだん息苦しくなってきて、気分転換に屋上に出てみました。
青空に、空を流れて行くような雲が広がっています。
この星の不思議を感じます。
私たちがこれを、大きいとか、美しいとか、気持ちいいなどと感じること。
もちろん、人工物にほっとするものを感じることもあるけれど、人工物だって元をたどればこの星から生まれたもの。
特に教えられたわけでもないのに、ちゃんとそう感じる心が備わっていること。

サラの日記562(聞こえる……ではなく、伝わってきます。)

銀菓神暦2016年10月19日

放課後、銀菓神社の下見に行きました。
担当区域の本殿以外にも、ぐるっとひと回りしてみました。
特に嫌な感じがするところも無く、気になるところも見当たりませんでした。

折角銀菓神社に来たんだし、ついでに参拝もしておこうかなと思って、拝殿の方に向かっていると、背後に人の気配を感じました。
悪い気配はしませんでしたが、なんだか怖いので、振り向かず、歩く速さも変えず、ただ真っ直ぐ拝殿に向かいながら、背後の気配に警戒していました。

すると、誰かがくすくすと笑う声が聞こえてきます。
聞こえる……ではなく、伝わってきます。
<……フフフッ。サラ? 気付いてる?>
「えっ? ……ミシェル? なの?」
私が振り返ると、それを待っていたかのようなタイミングでルセット先生が現れました。
「もう! 何やってるの? 怖かったんだから!」
私が怒ると、ルセット先生はこんなことを言われました。
「ごめんごめん。試したんだよ。誰にも気付かれずにサラの補佐ができるかどうか」
「もう、やだ。姿は見えなくても気持ち悪かったわ」
「うーん……。じゃあ、他の方法を考えるか……」

サラの日記561(そういうの得意でしょ?)

銀菓神暦2016年10月18日

今年の銀菓神社の留守番の担当が決まりました。
ルセット先生は留守番の担当から外れ、私は本殿の担当です。
拝殿の方は今年仮称号を取った一年生が担当するようです。

「もう世代交代なのかなぁ……」
ルセット先生が少し淋しそうに、ぽつりと漏(も)らされました。
「世代交代とかじゃなくて、少し上の人になっていくんじゃないの?」
元気づけたつもりでした。でも、ルセット先生は淋しそうな表情のままこう言われました。
「……上の人にはなりたくないんだ。現役の銀菓神使でいる限り、現場で色んなことを見ていたい」
「じゃあ……。じゃあ、参拝客にまぎれて私の補佐に来て。そういうの得意でしょ?」
私がそう言うと、ルセット先生は穏やかに微笑んでくださいました。

アロゼの休憩室56「優先順位第一位」

朝の空気が冷たくなってきました。
秋ですね。

いつもなら、毎年秋はどこかしらの体調を崩しているのですが、
今年は、時々栄養ドリンクのお世話になってはいますが、
体調を崩している暇が無いぐらい忙しくしています。

なのに、こんなに忙しい時に限って、やりたいことは次から次へと増えていくのです。

学生時代、試験勉強をしなければいけない時に限って、次から次へとやりたいことが浮かんで仕方のなかった私ですが、
大人になっても変わっていませんでした(^^;)

「Peanuts Orchestra シリーズ2」の執筆を優先順位第一位に引き戻そうと頑張っている今日この頃です。

サラの日記560(ナナちゃんは少し口をとがらせました。)

銀菓神暦2016年10月17日

放課後、ナナちゃんがメランジェ研究室を訪ねて来ました。
「アロゼ先生! 私、昨日、見に行ったんですよ! やっぱりかっこよかったです!」
「あ、ナナちゃん。ありがとう」
「あーあ、やっぱり気付いてなかったんですね。私が見に行ったの……」
ナナちゃんは、私の表情から、昨日、私がナナちゃんの存在に気付いていなかったことを察したようで、少ししょんぼりしていました。
「ごめんね。緊張で、周りを見る余裕が無かったの」
私がそう言うと、ナナちゃんは少し口をとがらせました。
「えーっ、本当ですかぁ? アロゼ先生、とっても堂々として見えてたのに……」
「堂々と? ……ありがとう、ナナちゃん」
私はそう答えながら、昨日のカリンさんの波動のことを考えていました。
「アロゼ先生、大丈夫ですか?」
ナナちゃんが私を覗き込みます。
「ん?」
「なんだか、いつもより元気がないみたい……」
「え? あ、大丈夫よ。……昨日の緊張でちょっと疲れたかな」

サラの日記559(銀菓神社に奉納演奏に行きました。)

銀菓神暦2016年10月16日

銀菓神社に奉納演奏に行きました。
心配していたお天気も、爽やかな晴天です。

出番前の舞台袖で、ルセット先生が穏やかに微笑みながら言われます。
「サラ、ジャック。銀菓神使としての初舞台、おめでとう」
「そんなこと言われたら緊張しちゃう……」
私はルセット先生やジャックさんに表情を見られるのが恥ずかしくなって、急いで銀菓神使スーツの特殊着装をしました。
「や、やだよぉ。サラちゃんがそんなだったら、俺も緊張するじゃん」
ジャックさんはそう言いながら、私のあとを追いかけるように着装しました。

銀菓神使スーツの外側から内側へと、ルセット先生の優しくて温かい波動が流れ込んできます。
<だめよミシェル。今こんなことに力を使ったら、出番までに疲れちゃう>
<大丈夫だよ。緊張してるサラと一緒に舞台に上がる方が疲れるよ>
<ありがとう>

観客の中に、カリンさんの波動を感じました。
カリンさんの姿を見付けようと、波動の強い方強い方へと視線をやると、 花綵(はなづな)アグルム城の楽師さんの姿がありました。
――どうしてあの人からカリンさんの波動が……? ん? これはあの人の波動じゃない。あの人の波動はちゃんと別に感じる――

サラの日記558(いやーん、なんか本物ーっ……)

銀菓神暦2016年10月15日

メランジェ研究室での用事を終えて、ジャックさんと一緒に地下製菓室に奉納演奏の練習に行こうとしていたら、
訪ねて来たナナちゃんに呼び止められました。

「あっ! アロゼ先生! どこかに行くんですか?」
「う、うん。明日の奉納演奏の練習に……」
「へえー。いいなぁー。見たいです。ちょっとだけでいいから」
「うーん。じゃあ、ルセット先生と相談してからね」

私はルセット先生にメッセージを送ります。
<ナナちゃんが来てるの。奉納演奏の練習、見たいって……>
<うーん……。分かった。いいよ。でも、地下はまずいな……。屋上に場所を変えよう>

私は小声でジャックさんに伝えました。
「屋上に変更」
「オーケーっ」
ジャックさんも私に合わせて小声で答えてくれました。

「あの……」
状況がよく分からないナナちゃんがもじもじしています。
「いいわよ。ルセット先生に許可もらえたわ。屋上よ」
私がそう言うと、ナナちゃんは嬉しそうに瞳を輝かせました。
「どうやって許可もらったんですか? 波動の交信ですか? いやーん、なんか本物ーっ……」
ナナちゃんはそんなことを言いながら、私たちに続いて屋上への階段を上りました。

サラの日記557(ルセット先生の瞳は一瞬大きく開いて、)

銀菓神暦2016年10月14日

明後日は、銀菓神社での奉納演奏です。
空き時間を利用して、地下製菓室で、ルセット先生、ジャックさんと一緒に練習をしました。

思い切ってルセット先生に言ってみました。
「あのね……。訊いてみるだけなんだけど……」
「うん、何?」
「カリンさんは、一緒には出られないの?」
ルセット先生の瞳は一瞬大きく開いて、すぐにいつもの穏やかな瞳に戻りました。
「彼女は銀菓神使じゃないからね。一緒には出られないよ。でも、どうして?」
「時々遠くで聞こえるカリンさんの音色、私、好きだから」
そう言ってルセット先生の顔を見上げて、ルセット先生が何か言ってくださるのを待ちます。
「……奉納演奏ではない時に」
ルセット先生はつぶやくようにそう言って、すぐに練習に戻られました。

「何、何? なんの話?」
ジャックさんが私たちを覗き込みます。
「ううん。なんでもないの。ね、ここんとこ、私のタイミングで合ってる?」
私は話をそらしました。

サラの日記556(眺めているだけで豊かな気持ちになれます。)

銀菓神暦2016年10月13日

一人で銀菓宝果(ぎんがほうか)のお世話に行きました。
色付く前のたくさんの実。
眺めているだけで豊かな気持ちになれます。
でも、来年の今頃、今年と同じようにたくさんの実を見ることができるのかどうか、とっても不安です。

ルセット先生に訊いてみます。
「もしもね。もしもなんだけどね。もしも私の代で銀菓宝果を絶やしてしまうようなことがあったらどうしよう」
「そうだなぁ……。四次元時空間からそれっぽいのを拝借してきて育ててみよっか。管理権がサラにしか無いんなら、きっと誰も気付かない」
「もう! ミシェルはそんなことばっかり思い付くんだから」
私はルセット先生の肩を軽く叩きながら言いました。
「だけどさ、サラはもう正式な銀菓神使なんだから、四次元時空間から拝借してきた橘(たちばな)をサラが育てれば、それは銀菓宝果になるはずだよ。だろ?」
「うん、まあそうだけど……」
「楽になった?」
ルセット先生は私のおでこを指で軽く弾き(はじき)ました。
「うん……」
「大丈夫だよ。サラはこれまでの色々をちゃんとやってきた。きっとできるよ。できなくても修正方法は見付かった」
ルセット先生は、ジャックさんとよく似たいたずらっ子のような表情で、私に笑い掛けてくださいました。

サラの日記555(おやおや、いい香りですね。)

銀菓神暦2016年10月12日

少しずつ冷たくなっていく秋の風。
今年もまた、私の仕事には都合の良い季節がやって来ました。

朝一番の、少し肌寒いメランジェ製菓室でジャムを炊いていると、タツキちゃんとジャックさんが寄って来て、鍋に手をかざします。
「サラちゃんの仕事、うらやましい……」
タツキちゃんは甘えた上目づかいです。
ジャックさんが私の鍋を指差しながら言います。
「あったかいの飲もうぜ。これ入れて」
みんなでジャム入りの紅茶をいただきました。

カップの温度と掌(てのひら)の温度が同じになった頃、メランジェ製菓室のドアがゆっくり開きました。
「おやおや、いい香りですね。私も仲間に入れてもらえますか?」
メランジェ先生が入って来られました。

サラの日記554(きっと、ルセット先生の周りに寄って来る人たちは、)

銀菓神暦2016年10月11日

ルセット先生と一緒に居ると、色んなことが心配になります。
でも、ルセット先生と一緒に居ると、色んなことが大丈夫に思えてきます。
きっと、ルセット先生の周りに寄って来る人たちは、ルセット先生のそんなところを魅力に感じているのかもしれません。

このまま、本当にずっと一緒に居られるのならいいんだけれど。
本当にいいのかな……、私で。
ルセット先生の……パートナー。

ルセット先生のことを考える時、心に浮かぶのはカリンさんのこと。
ルセット先生の気持ちも、カリンさんの気持ちも、そうではないということをちゃんと確かめたはずなのに。
どうして……?

サラの日記553(管理権が私に移ったあとは)

銀菓神暦2016年10月10日

銀菓宝果(ぎんがほうか)の管理権を私に移す日が一週間後に決まりました。
今日、銀菓神局への書類の提出を終えました。
管理権が私に移ったあとは、パートナーのルセット先生にも銀菓宝果の管理に関する話は一切できなくなります。
不安です。
銀菓神使の研究生になって以来ずっと、ルセット先生が居るから、ルセット先生と一緒だから、何にでも挑戦してこられたし、頑張ってこられたのに。
パートナーでも情報の共有が許されていないなんて。

不安がっている私の緊張をほぐそうとしてくださったのか、ルセット先生はふざけた感じでこんなことを言ってくださいました。
「管理権の法規は銀菓神局が理想論で定めた決まり事。ひとたび何かが起これば、現場で動いている人間の方が強いんだ。大丈夫だよ。僕は規則違反一歩手前の腕利きなんだ。メランジェ先生公認のね。もしもサラが本当に困っていたら、手を貸さないこともない」

サラの日記552(ルセット先生は、少し憂い(うれい)を含んだ視線を私の方に向けられました。)

銀菓神暦2016年10月9日

研究室はお休み。
ルセット先生と一緒に、銀菓宝果(ぎんがほうか)を管理している空間で過ごしました。

昨日から不思議に思っていたことを、ルセット先生に話してみました。
「ねえ。昨日気が付いたんだけど、ここに居る時、闇の波動を少し出していると楽なの」
ルセット先生はちらりと私の方を見て、また視線を銀菓宝果の方に戻しながらこう言われました。
「サラの力が強くなったんだよ。強すぎる力同士では反発し合う。だから、闇の波動を少し出していると楽なんだ」
「ミシェルもそうなの?」
ルセット先生は銀菓宝果の方を見詰めたまま答えられました。
「うん。僕も、何年か前から闇の波動を使ってる」
「じゃあ私、闇の波動を使えるようになったことはラッキーだったのね?」
「そうだね。でも、闇を知らなければ知らないで、なんでもないことだったのかもしれない。一度楽な方法を覚えると、いつもそれに頼るようになる」
ルセット先生は、少し憂い(うれい)を含んだ視線を私の方に向けられました。

サラの日記551(少しだけ闇の波動を出しながら触れた方が)

銀菓神暦2016年10月9日

もう、あれこれ心配したり悩んだりするのはやめました。多分……。
今の私にできることは、ただ目の前のことを精一杯やっていくだけです。

というわけで、来月の銀菓神社の留守番の準備と、銀菓宝果(ぎんがほうか)の管理をひとりでできるようになることを中心に動き始めてみることにしました。

来月の銀菓神社の留守番は、仮称号だった去年のようにはいきません。
まだ研究生ではあるけれど、正式に銀菓神使の称号をいただいた以上、それなりの仕事はこなさなければなりません。

今日はルセット先生に付き添っていただいて、銀菓宝果の管理の基本を復習しました。
銀菓宝果。少しだけ闇の波動を出しながら触れた方が楽なのはどうしてなんだろう……。

アロゼの休憩室55「辛うじて続いていますよ~」

はい!
タイトルの通りでございます。
ただいま更新予定時刻の約30分前。
ギリギリでございます(^^;)

昔、連続テレビドラマの収録が間に合わなくて生放送だったことがあるっていう話を聞いたことがありますが、
私もほとんど それ状態です。

今日は早朝からなんやかんやあって疲労困憊で、
「ちょっと寝てから……」と思って横になってしまったのです。
で、起きたらこの時間。

でも!
あと180日ほどなのに、これまで550日続けてきた毎日連載をここでお休みしてしまったら、折角ここまで積み上げてきたものが台無しになってしまいます。
辛うじてでも何でもいいから、続けますよ~。

て言うか、前もって数話先まで書いとけよ……という話ですね^_^;

サラの日記550(届けに使うらしい書類を机の上に用意しながら)

銀菓神暦2016年10月7日

ルセット先生からお話がありました。
「サラはもう正式な銀菓神使だからね、あれの管理はサラに任せようと思うんだ」
「あれ?」
「銀菓宝果(ぎんがほうか)だよ」
「はい……」
「いつからにする? 銀菓神局に届けなくちゃいけないんだ」
ルセット先生は、届けに使うらしい書類を机の上に用意しながらそう言われました。
「ミシェルと一緒に……じゃだめなの?」
私がそう訊くと、ルセット先生は少し厳しい表情になってこう言われました。
「公私は分けよう。銀菓宝果の管理は銀菓神使アロゼの仕事だ。……いつからにする?」

サラの日記549(気遣いの波動が)

銀菓神暦2016年10月6日

多分、ルセット先生は気付いているんだと思います。
私がカリンさんの出身を知ったこと。
昨夜ルセット先生に触れた時、ルセット先生から気遣いの波動が流れ込んで来たから。
でも、どう応えていいのか分からなくて、ただ、ルセット先生からの気遣いの波動を受け入れることしかできませんでした。

今朝、ルセット先生には言わずに、いつもよりも少し早く城を出て、商店街を端から端まで歩いてみました。
カリンさんのお家を捜すためです。
でも、見付けることはできませんでした。
ルセット先生の闇の波動が、私に目隠ししています。
諦めて菓子工房ミヤマエの手伝いに入った時、背後に、ルセット先生の気配を感じました。
振り返ると、真顔で私を見詰めているルセット先生が居ました。
「笑って。いつもみたいに」
私がそう言うと、ルセット先生から闇の波動の気配がすっと消えていきました。

サラの日記548(ルセット先生が、城の楽師の方とお話しされているのを耳にして知りました。)

銀菓神暦2016年10月5日

偶然、ルセット先生が城の楽師の方とお話しされているのを耳にして知りました。
カリンさんが、私の実家がある商店街の出身だということを。
聞こえてしまったこと、まだルセット先生には話していません。

それほど大きくはない商店街なのに、カリンさんのことは知りませんでした。
カリンさんは私のことを知っていたのでしょうか……。
物心ついた頃から現在までの、あの商店街での思い出が、私の頭の中を一気に駆け抜けていきます。

カリンさんがあの島に移ることにした心の動きが、これまでよりも具体的に分かってきたような気がしました。

サラの日記547(花綵(はなづな)アグルム地方に非常に強い台風が近付いています。)

銀菓神暦2016年10月4日

花綵(はなづな)アグルム地方に非常に強い台風が近付いています。
銀菓神使の波動にも、少し乱れが出始めています。
銀菓神使の力は自然現象と直結しています。
先の大きな地震の時にも波動の乱れで大変な目に遭いましたが、今回のような台風でも、やっぱり影響を受けてしまうのです。
銀菓神使の力を次の代、そしてまた次の代へと繋げていくためには、自然を理解し、自然を守り、自然を育んでいかなければならないのです。
でも、その全てを銀菓神使だけでどうにかしようというのには無理があるから、銀菓神使は、その中の製菓の分野を中心に活動しています。

今日のジャムにも青紫色の光の粒が入ってしまいました。
青紫色の光の粒が入ったものと、それを癒しのアロゼで治めたものを食べ比べてみました。
不思議です。味には影響がないみたい。
なのに、もうひと匙(さじ)、もうひと匙と食べたくなるこの感覚は、やっぱり青紫色の光の影響なのかな……。
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