サラの日記238(「ここだけの話ですがね、この時期が1番苦手なんですよ」)

銀菓神暦2015年11月30日

メランジェ先生の研究室で作業していたら、メランジェ先生が職員会議から戻って来られました。
今日の主な議題は、「クリスマス行事に関する4次元時空間への支援について」だったそうです。

メランジェ先生は少し はにかみながら、
「ここだけの話ですがね、この時期が1番苦手なんですよ」
と話し掛けてこられました。
メランジェ先生にも苦手な時期ってあるんだ……って思いながら聞いていたら、
「なんだかんだ からかわれてね。恥ずかしいような、くすぐったいような」
って笑われました。
「奥さんのことですか?」
とたずねると、メランジェ先生は笑ったまま うなずかれました。

「大丈夫です、メランジェ先生。私は からかったりしません。ちょっとびっくりしたけど。……でも、寂しくないですか? 奥さんに姿を見てもらえないのって」
「私は寂しくないんですよ。いつでも彼女の姿を見ることができますからね。寂しいのは彼女の方じゃないかと心配になることはありますよ。姿も見えない、なんだか分からないものを信じてくれているわけですから……。まあ、私はこういう生き方を選びましたが、教え子たちにはおすすめしませんね」
メランジェ先生は その場にあったステンレスボールを裏返しにされると、その丸みに沿って手をかざされました。
そこにはメランジェ先生の奥さんが映し出されていました。

メランジェ先生の私生活の一部を知ったことで、メランジェ先生の不思議な優しさの謎が、少しだけ解けたような気がしました。
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サラの日記237(留守神の仕事が終わったら次に待っていること。)

銀菓神暦2015年11月29日

ルセット先生の留守神の仕事が終わったら次に待っていること。
クリスマス!

銀菓神使たちは4次元時空間に、4次元時空間の人たちには気付かれないように、こっそりとお手伝いに行きます。
無事においしいお菓子ができあがるように。

研究室はお休み。
ルセット先生と一緒に下見に行ってきました。
色んなお菓子屋さんを覗いて回って、デートみたいで楽しかった。

熱心に試作を続けている年配の女性を そっと見守っている銀菓神使を見掛けました。
メランジェ先生?

「彼女がメランジェ先生の奥さんだよ」
ルセット先生が ささやきました。
「奥さん……? 4次元時空間の人? えっ? どういうこと?」
混乱していると、ルセット先生が話し始められました。
「メランジェ先生は彼女をパートナーに選んだんだ。メランジェ先生からは彼女の姿が見えるけど、彼女からはメランジェ先生の姿は見えないし、お互いに触れ合うこともできない。でも、2人は次元を超えて通じ合ってる」
「彼女は銀菓神使なの?」
「ううん。この時空間の、ごく普通の菓子職人。僕も初めて聞いた時は どうしてって思ったんだ。でも、彼女がお菓子を作っている様子を見ていたら、なんとなく分かった」

メランジェ先生が私たちに気付いて、にっこりしてくださいました。

サラの日記236(ルセット先生が留守神の仕事から帰って来られました。)

銀菓神暦2015年11月28日

夕方、ルセット先生が留守神の仕事から帰って来られました。
ルセット先生の無事な姿を見て安心しました。
安心したら涙が出てきました。

「ごめんね。心配掛けて……」
ルセット先生は そう言いながら そっと抱き締めてくださいました。

「西瀬忍、カリンさんから受け取ったよ」
西瀬忍をルセット先生の手に預けました。
ルセット先生は西瀬忍を撫でながら言われました。
「うん。まさか早速使わせることになるとは思わなかった。……カリンの仕事は完璧だ。タイミングまで」
「うん」
ルセット先生は それ以上は話さず、西瀬忍を私の手に返してくださいましたが、あとからメッセージが届きました。

<サラ。カリンを受け入れてくれてありがとう>
<……うん。カリンさんは、私にとっても大切なアウトサイド・パートナーだから>
ルセット先生は ちょっと驚いた顔をして私の方を見られましたが、何も言われませんでした。

サラの日記235(ルセット先生の交信相手が、もしも他の女性なら、 ひどい焼きもちを焼くのかもしれない。)

銀菓神暦2015年11月27日

ルセット先生に交信しようとしたら、
ルセット先生は誰かと交信中でした。
ちょっと変わった波動の……。
カリンさん?

ルセット先生とカリンさんは、何かを話しているわけではない様子。
カリンさんはルセット先生に言葉ではないものを伝えている。
ルセット先生は それに包まれている。
護られている。

ルセット先生の交信相手が、もしも他の女性なら、
ひどい焼きもちを焼くのかもしれない。
でも、カリンさんは不思議な人。
ルセット先生のことはもちろん、
私のことも、
嫉妬や憎しみの気持ちの無い、
穏やかな心で受け入れてくれているから、
私もカリンさんを受け入れざるを得なくなってしまう。
ただ、必死に抑え込んでいる悲しみや淋しさの感情は感じる。
その感情が溢れ出てしまうのを、
カリンさん自身が1番心配しているのを感じる。

全部出してくれれば楽なのに。
全部出してくれれば闘えるのに。
カリンさんはそれを望んではいない。
ただ遠くからルセット先生を護っている。
ルセット先生のアウトサイド・パートナー。
……私にとっても。

サラの日記234(カリンさんは どうしてルセット先生が拝殿に閉じ込められていることに気付けたんだろう。)

銀菓神暦2015年11月26日

ルセット先生を拝殿に閉じ込めたのが何者なのかは分かりませんでした。
でも、出発前からルセット先生が感じていた もやもやしたものと同じ気配が感じられました。
心配なので、時間の空いている時には銀菓神社に居ようかと思いました。
でも、ルセット先生は、
<拝殿の内側からは結界を破れなかったんだ。もしものために離れたところに居て欲しい>
と、私が銀菓神社に来ることを拒まれました。

<留守神の仕事、誰かと変わってもらえないの?>
と聞いてみましたが、
<銀菓神さまの命を受けた者にしかできないことになってる>
と返ってきました。

カリンさんとは昨日別れたっきりで、その後は連絡ありません。
カリンさんは どうしてルセット先生が拝殿に閉じ込められていることに気付けたんだろう。
私はルセット先生の異変に気付けなかった。
パートナーなのに。
1番近くに居るのに。

のし棒横笛と西瀬忍(にしせしのべ)を並べて見比べていました。
のし棒横笛にはルセット先生との思い出がたくさん。
西瀬忍には私の知らないものがたくさん。

カリンさんからは何かを乗り越えた強さを感じます。
乗り越えて、銀菓神使が発する強い波動にも耐え得る(うる)西瀬忍を作り出せるようになった。
なんだかそんな気がします。
カリンさんは、私には持つことのできない強さを持っている。

サラの日記233(準備室の鳥居の下にカリンさんがいました。)

銀菓神暦2015年11月25日

朝から遠くでカリンさんの笛の音が聞こえていました。
ほかに笛を吹く人は知らないから、私に聞こえるなら、多分カリンさんだと思うんだけど、
だけど、この間までとは様子が違っていて、
するどくて、訴えかけてくるような感じ。
本当にカリンさんかな……。

今日の講義が終わったあと、地下製菓室に下りて、
カリンさんに届くかな……って思いながら、あの笛の音がカリンさんなのかどうか確かめたいというものあって、のし棒横笛を吹いてみました。

準備室のドアから光が漏れているのが見えたので、おそるおそるドアを開けてみると、
準備室の鳥居の下にカリンさんがいました。
初めてだけど、カリンさんだって分かりました。

カリンさんは私の のし棒横笛を見ると、
「サラさん? これを……」
と、黒い漆塗りの横笛を差し出されました。
それから、
「ルセット先生が銀菓神社の拝殿に閉じ込められてる。結界を破ろうとしたんだけど、私1人じゃ破れないの。一緒に吹いて」
と、両手で横笛と私の手を包み込まれました。

「西瀬忍(にしせしのべ)? ですか?」
私が聞くと、カリンさんはにっこりして うなずかれました。

のし棒横笛よりも芯のある音がしました。

カリンさんは鳥居の下に銀菓神社の拝殿を映し出すと、もう1本持っていた西瀬忍を吹き始められました。
私もカリンさんに合わせて吹き始めました。

2本の西瀬忍から生み出される波動は、拝殿を、とぐろを巻いた龍のように覆い、締め上げるようにして結界を破りました。

サラの日記232(今日はルセット先生からの連絡がありません。)

銀菓神暦2015年11月24日

今日はルセット先生からの連絡がありません。

朝は連絡が無くてもなんとも思っていなくて、
お昼は忙しいから連絡する時間が無いのかな……って思っていて、
夕方になってから、なんでだろう……って気になりだしました。

表情に出ちゃうと、ジャックさんが過剰なぐらいに心配してくれるのは分かってるから、
一生懸命になんでもない顔をしてた。

こっちからメッセージを送ってみたけれど、何かで妨害されている感じです。
出発前にルセット先生が『拝殿は特殊な区域だから繋がりにくいかも』って言われていた、それかな?
ん、きっとそうだよね。
ルセット先生は かつての闇の銀菓神なんだから、大丈夫。私が心配しなくても。

夕食のあと、1人で部屋に居たら、遠くで名前を呼ばれたような気がしました。
えっ? って思って耳を澄ましてみたり、どこかから波動が流れて来ていないかを感じ取ってみようとしたけれど、
もう何も聞こえないし、何も感じませんでした。
気のせいかな?
ルセット先生が居ないことで、緊張して疲れてるのかな?
今日は しっかり休んでおこう。
何も無いとは思うけど、
もしも何かあったら、私は公私ともにルセット先生のパートナーなのだから。

サラの日記231(ルセット先生が居ない構内の、どこを見て過ごせばいいんだろうって感じがする。)

銀菓神暦2015年11月23日

キャンパスにルセット先生が居ない週明け。
いつもルセット先生だけを見ていたわけではないと思うけど、
ルセット先生が居ない構内の、どこを見て過ごせばいいんだろうって思ってしまう。
カリンさんもそうだったのかな……なんて考えてしまう。
研究室での勉強を修了して、ルセット先生の居ない生活が始まって、どこを見て過ごせばいいのか分からなくて、不安で、心細くて、あの日、訪ねて来たのかもしれない。

ルセット先生は気付いていないのかもしれないけれど、
カリンさんはルセット先生のアウトサイド・パートナーなんじゃないかと思う。
パートナーやセカンド・パートナーにはできないけれど、それでも何かの力で繋がってしまう人。
ルセット先生の波動に、カリンさんの波動が強い力で引き寄せられているのを感じる。
ひょっとしたら、過去に何かで繋がっていた人なのかもしれない。
カリンさんは抵抗してくれてる。ルセット先生と私を傷つけないために。
でも、どうしようもできなくて困っているのを感じる。

カリンさんは、研究室を修了して半年以上経った今でも、ルセット先生の居ない世界での生活を、手探りでさまよってる。

なんだか、カリンさんのことばかり考えてしまう1日だった。

夕方、ルセット先生からメッセージが届きました。
<サラ? 変ったことは無かった?>
<うん。大丈夫だったよ>

アロゼの休憩室23「横笛買いました。」

表題の通りでございます。
先日、横笛を買いました。
カリンさんの横笛、『西瀬忍(にしせしのべ)』のモデルになった横笛です。
愛媛県今治市の
七曜工房さんが作っていらっしゃる、オリジナル横笛です。
ただいま練習中。
準備ができ次第、動画upする予定です。
お楽しみに(#^.^#)

ルセット先生は現在 留守神の仕事中。
この留守神の仕事中に起きるできごとの中で、カリンさんの横笛が活躍します。
こちらも お楽しみに(*^_^*)

サラの日記230(「『仮』か……。『仮』じゃあ まだ任せられない。早く本物になれ」)

銀菓神暦2015年11月22日

研究室はお休み。

「サラちゃん、今日 時間ある?」
ジャックさんが部屋を訪ねてきました。
「うん。あるけど?」
そう答えると、ジャックさんは いたずらっ子のような顔をして にやっと笑いました。
「んじゃ、月まで付き合ってよ」
「月? ……グラセさんのところ?」
「うん。ね? 兄貴の居ない間に」
返事に困っているうちに、ジャックさんに ぐいぐい手を引かれて屋上の鳥居の前に着きました。
そのまま、ジャックさんのペースで月の支局に到着。

「あれ? 珍しいお客さんだね」
入口の窓から中を覗いている私たちに気付いたグラセさんは、中に案内してくださいました。

「ルセットは?」
グラセさんは そう言いながら、お茶を淹れてくださいました。
「留守神なんです」
私がそう答えると、ジャックさんが、
「鬼の居ぬ間に、グラセさんに報告」
なんて言い出しました。
「ん? 何だい?」
グラセさんもソファに座られました。
「仮称号、取りました。もう無称号だとは言わせない。グラセさんが月勤務の間、地球でのタツキちゃんは俺が守る」
ジャックさんはグラセさんに向かって、前のめりの姿勢で険しい表情をしました。
するとグラセさんは顎に手をやって、ゆっくりとした口調で、低い声で、
「『仮』か……。『仮』じゃあ まだ任せられない。早く本物になれ」
とジャックさんを にらみました。
ジャックさんがそのまま固まっていると、グラセさんは、
「なーんてね」
って笑ってた。

サラの日記229(ルセット先生は朝早くに銀菓神社に向かわれました。)

銀菓神暦2015年11月21日

ルセット先生は朝早くに銀菓神社に向かわれました。
今日から1週間、ルセット先生の講義は休講です。
でも、毎日講義があるわけじゃないから、いつもとそんなに変らないかな……。

ジャックさんがずっと一緒に居てくれました。
そんな大げさにされても……って思ったりもしたけど、
でも、ありがとう。

「夕食、俺ん部屋においでよ。マリーとウィルも一緒だから」
ジャックさんが誘ってくれました。
「うん」

みんなで食事をしていたら、ルセット先生からメッセージが届きました。
<サラ? 今日は大丈夫だった?>
<うん。ジャックさんが大げさなぐらいに完全ガードしてくれてる。今もみんなで一緒に夕食を食べてるところ。ミシェルは?>
<取り敢えず今日は無事に終わりそうだよ。参拝に来る人も少なくて暇だし……>
<ミシェル、……寂しい?>
<寂しくないよ。サラの意識の半分は僕の中にある>
<うん>

メッセージのやり取りのあと、ジャックさんが
「兄貴と交信してた?」
って聞いてきました。
「え?」
ってジャックさんの方を見たら、
「全部顔に出てる」
って言いながら、銀のトレーを私の目の前に持ってきました。
にやにや と ほっこりを足して割った感じの私が映ってた。
恥ずかしい……。
私はトレーをジャックさんに押し返しました。

サラの日記228(不安と緊張で冷たくなっていた唇が、ルセット先生の唇で温められました。)

銀菓神暦2015年11月20日

夕方、花綵(はなづな)アグルム城に帰ったルセット先生は、明日からの留守神の仕事に持って行く荷物の準備をしながら話されました。
「留守神の仕事中はさ、いつでも交信できるから。参拝者の話を聞いていない時なら」
「うん」
「あ、拝殿に居る時には繋がりにくいかもしれない。あそこはちょっと特殊な区域なんだ」
「うん」
「困ったことがあったらウィルかマリーに」
「うん」
「人を介すのがわずらわしければ、王や王妃に直接話しても構わないし……」
「うん」
「サラ?」
「うん。……え?」
いつの間にかルセット先生の顔が目の前にありました。
それから、不安と緊張で冷たくなっていた唇が、ルセット先生の唇で温められました。

「大丈夫だよ。僕の半分はここに。いつも一緒に居る」
ルセット先生は私の胸をそっと押えられました。
「うん」

サラの日記227(「……ん、ちょっとね。闇を感じる。なんだかもやもやする。でも、なんなのかは分からない」)

銀菓神暦2015年11月19日

ルセット先生の留守神の仕事まで あと2日になりました。

「僕に万が一のことがあって、サラが城を離れることになっても、サラの実家の支援はできるように王に話してあるから。サラが城に残ってくれるなら、その時のことも王にお願いしてある」
ルセット先生がそんなことを話し始められました。
「万が一って? 留守神ってそんなに危険な仕事じゃないでしょ? 何か感じるの?」
「……ん、ちょっとね。闇を感じる。なんだかもやもやする。でも、なんなのかは分からない」
ルセット先生はそう言うと、もやもやする何かのイメージを私の意識に流してこられました。
私にも、それがなんなのかは分かりませんでした。

「何かあったら、すぐに知らせてね。私とジャックさんで間に合わないのなら、大学の人たちに頼ることだってできるんだから」
私は もやもやの正体を見付けようと、ルセット先生の瞳の奥を見詰めました。
「うん、ありがとう」
ルセット先生は静かに微笑まれました。

「ごめん。聞こえた」
半開きになっていたドアの向こうから、ジャックさんの声がしました。
「俺、パートナー候補もセカンド・パートナーもいるからさ、定員オーバー。サラちゃんを迎えるわけにはいかないんだ。それとさ、気楽な第二王子の座から後継者に引きずりおろされるなんてごめんだからな。兄貴、絶対無事で帰って来いよ」
ジャックさんはそう言いながら部屋に入って来ると、ルセット先生の肩を ばしっとたたきました。
それから3人で顔を見合わせて笑ったけど、3人とも知ってた。
セカンド・パートナーに定員なんてない。

サラの日記226(カリンさんの存在が私を強くしてくれる。 銀菓神使同士では触れることの無い、別次元の波動を教えてくれる。)

銀菓神暦2015年11月18日

カリンさんの存在が私を強くしてくれる。
銀菓神使同士では触れることの無い、別次元の波動を教えてくれる。
でも、ルセット先生には内緒。
要らない心配は掛けたくない。
いつか花綵(はなづな)アグルムの王になるルセット先生を、
私たちはそれぞれの立場で、それぞれの力を補い合って護る。

私は、パートナーとしてルセット先生の1番近くに居られる。
でも、1人でルセット先生の全部は護れない。
自分に足りないものは周りに助けてもらえばいい。
カリンさんは そのことを知っていて、私に別次元の波動を教えてくれている。

だけど……、
カリンさんが私に仕掛けていたとしたらどうする?
味方のような顔をして近付いて来て、
私の居場所を奪おうとしていたらどうする?
だから、あの時、ルセット先生はカリンさんに対して結界を張ったんじゃないの?

アグルムの聖石が語り掛けてきてくれました。
――だから彼女は銀菓神使にならなかった。自分に想いを断ち切れる自信が無かったから、ミシェルとパートナーになれる可能性を残さなかった――

……分かった。
私は、カリンさんの想いを無駄にはできない。
強くなりたい。

サラの日記225(なんだかんだ言って、ルセット先生はやっぱり優しい。 だから色んな方面から もてちゃうんだ。)

銀菓神暦2015年11月17日

ルセット先生の研究室に寄りました。
カリンさんのキキョウを生けた花瓶の水を換えようと思って。
だけど、私が覗いた時には もう、ちゃんと手入れがしてありました。

なんだかんだ言って、ルセット先生はやっぱり優しい。
だから色んな方面から もてちゃうんだ。
でも、それでいい。
将来、花綵(はなづな)アグルムの王になる人なんだから。
慕ってくれる人、助けてくれる人は多い方がいい。
私は、それを受け入れられる人にならなくちゃ。
でないと、ルセット先生は安心して仕事ができない。
でないと、ルセット先生から人が離れて行ってしまう。
なれるかな……。

そんなことを考えながら花瓶のキキョウに目をやりました。
カリンさんからのメッセージが届いたような気がしました。
――大丈夫。もう、私を受け入れてくれてるじゃない?――
カリンさんって、お姉さんのような波動を持った人。

「何かいいことあった?」
背中越しにルセット先生の声がして気付きました。
カリンさんのことを考えている私は、ちょっと温かい気持ちになって、自然と笑顔になっています。

サラの日記224(昨夜、ルセット先生が話してくださいました。 「カリンに仕事を頼んであるんだ」)

銀菓神暦2015年11月16日

昨夜、ルセット先生が話してくださいました。
「カリンに仕事を頼んであるんだ」
「仕事?」
「サラ用の西瀬忍(にしせしのべ)を頼んである」
「西瀬忍……を?」
「うん。カリンは去年のメランジェ研究室の修了生。僕のことも慕ってくれていた教え子。今は西瀬戸の島で笛師をしてる。女竹(めだけ)のことを忍竹(しのべだけ)ともいうんだけど、西瀬忍は西瀬戸の島で忍竹で作られた笛。それをカリンに頼んである。僕が1番信頼している笛師だ。彼女に頼んでおけば間違いない。それ以上のことは、サラが心配しているようなことは何もない」
ゆっくりうなずいたら、ルセット先生の腕にすっぽり包まれました。

ルセット先生は、私の のし棒横笛を手に取ると、笛の波動がカリンさんに届かないように掛けていた術を解いてくださいました。
ルセット先生は のし棒横笛を返してくださいながら、
「サラが揺れるとカリンも揺れる。不用意にカリンの波動に近付かない方がいい」
と言われました。
「ミシェルは? ミシェルはカリンさんを……」
「1番信頼できる笛師。サラが笛で生み出す波動の力は、直(じき)に のし棒横笛の容量を超える。次の笛を作るなら、依頼できるのはカリンしかいないと思っていた。僕たちは、国のことも背負いながら銀菓神使もやっていくんだ。信頼できるかどうか分からない人に大切な仕事は頼めない。カリンも、それを分かって受けてくれた。それだけだよ」

今日、メランジェ研究室に生けられているキキョウを数本もらって、ルセット研究室にも生けさせてもらいました。
メランジェ先生は、
「何かありましたか?」
って、不思議そうにされていました。
「ここにしか無い方が気になってしまうんです」

サラの日記223(言葉にはされないけれど、「しっかりしろ」と言われているような気がしました。)

銀菓神暦2015年11月15日

研究室はお休み。

ルセット先生が、
「どんなことしてるか見せてあげる」
と、銀菓神社に連れて行ってくださいました。
言葉にはされないけれど、「しっかりしろ」と言われているような気がしました。

「今なら参拝のチャンスだよ。サラのお願いごとが終わるまで ここで待ってる」
ルセット先生はウインクすると、拝殿の方に向かって私の背中を押しました。

お願いしたいこと、たくさんあるにはあったけど、急にしろと言われても難しい。
勢いで、とっさに願ってしまったことは……。
お願いごとは、しゃべってしまうと叶わないって言われているから、ルセット先生にも内緒だし、ここにも書かないけど、
うん、ちゃんとお願いしました。
でも、銀菓神さまの守備範囲なのかどうかは分からない。
困るパターンの参拝者だったりして……。

今日のルセット先生は いつもと違って見えました。
私をぐいぐい引っ張ってくれる。
自分のことも必死に引っ張ってる。
何かの迷いを断ち切るかのような、するどい勢いを感じました。

そうだよね。
未来に全部は持って行けない。
何かを選んで、何かを手放さなければならない。
分からなくなった時は、苦しくなった時は、
今日のルセット先生みたいに、
無理矢理にでも引っ張ってって欲しい。

サラの日記222(メランジェ先生の研究室の花瓶にキキョウが生けられていました。)

銀菓神暦2015年11月14日

メランジェ先生の研究室の花瓶にキキョウが生けられていました。
眺めていたら、後ろでメランジェ先生の声がしました。
「私が会議で居ない間に来ていたみたいでね。助手のミナミ先生が『用事はこれだけ?』って聞いたら、『これだけです』ってキキョウだけ生けて帰ってしまったらしいんですよ」
「……その人、カリンさん……ですよね?」
「おお、ご存知でしたか」
「お名前だけ……」

ミナミ先生には言えなかったんだろうな……。
本当は ここじゃなくて、ルセット先生の研究室に……。

カリンさんは もうここには、……もうルセット先生の研究室には来ない。
そんな気がしました。

でも、
想いの波動は消えていない。
その波動は、
私のことも受け入れてくれている。

アグルムの聖石が教えてくれています。

彼女は、
いつの日か 花綵(はなづな)アグルムの王になったルセット先生を、
私たちとは別の世界から守ってくれる人。
いつの日か 花綵(はなづな)アグルムの王になったルセット先生には、
なければならない人。

サラの日記221(もしも言葉というものが、想いを詰め込むための入れ物なのならば、)

銀菓神暦2015年11月13日

早朝。
実家の工房に着いたらシュウちゃんが待っていました。
いつもなら運び終わっているはずの果物を、
ゆっくり、ゆっくり運んで待っていました。
ルセット先生が一緒なのも構わずに、私に声を掛けてきました。

「疲れてない? 元気?」

もしも言葉というものが、想いを詰め込むための入れ物なのならば、
シュウちゃんの言葉からは、
幼なじみの情を超えた、触れると砂の様に崩れてしまいそうに繊細な想いが溢れていました。
口を開けば一緒に崩れてしまいそうで、黙って小さくうなずきました。
多分、この自分では制御のできない、どうしようもない感情は、
ルセット先生の中にある私の意識を通して、ルセット先生に伝わってしまっています。

「おーい、シュウ。早くしろよー」
出入口の向こう側で、樫野のおじさんの声が聞こえました。

「またね」
シュウちゃんは にっこりしながら私に手を挙げ、ルセット先生に会釈をすると、駆け足で工房から出て行きました。

今日のジャムは販売用にはしたくないなって思いました。
ジャムの中に、おいしさとは反対のアロゼが入ってしまったかもしれない。
気持ちが大丈夫になったら加工用に炊き直します。

アロゼの休憩室22「陰のヒロイン、カリン?⇒ゆるーく」

今月は旧暦の神無月(神在月)です。
この物語の銀菓神さまも神在りの行事に参加されるらしく、ルセット先生が留守神の当番をされるようです。
カリンさんが(音色だけではなく、実体として)登場しそうな気配もするし、何かが起こりそうですね。

カリンさんのこと、たくさん書きたいんですけど、
『サラの日記220』の段階では まだ謎に満ちた人物ということになっているので、思う存分書けるのはもう少し先ですかねぇ……。
サラちゃんはもちろんこの物語の主人公なのですが、カリンさんは陰のヒロインと言うか……、ん、まあ、そんな役どころです。

『銀菓神使アロゼ』の執筆は、製菓を通した環境教育・科学教育及び場面緘黙児支援のための活動として始めたわけですが、
書き進めているうちに、
「なんだか違う方向へ進んで行っちゃってるんじゃないの?」
って感じになっているような気もします。

まあ、もしもそうなってしまったら、
「元場面緘黙児だった主婦がお話を書いてみたらこんなのができました」
みたいなことでもいいかな……と、ゆるーく構えていたりしますので、
ゆるーく読んでみてくださいな、ってことで (^^;)

サラの日記220(神在りの行事が終わるまでは、銀菓神さまへの参拝は控えた方が正解かも……。)

銀菓神暦2015年11月12日

ルセット先生は、留守神の引継ぎが始まったみたいです。
拝殿にも入ったりするらしいんだけど、
銀菓神さまに関係の無いお願いごとをする人もいたりして、色々大変みたい。

えーっと……。
ってことは、
神在りの行事が終わるまでは、銀菓神さまへの参拝は控えた方が正解かも……。
だって、ルセット先生にお願いごとをするってことでしょ?
ルセット先生って、そんなに力のある銀菓神使なの?
分霊しても銀菓神さまの力に変わりないんだったら、留守神なんて要らないんじゃない?

力……。

500年前、
私たちは、
力のある銀菓神だった?
銀菓神界を治める力のある銀菓神だった?

できなかったから、
終わったんだよね……。

全て終わって、
『永遠(とわ)の記憶の呪縛』が解けたら、
ルセット先生は自由になれる。
そして、……カリンさんも。

サラの日記219(ルセット先生は苦しんでる。 先に出会ってしまったのが彼女だったから。)

銀菓神暦2015年11月11日

ルセット先生は苦しんでる。
先に出会ってしまったのが彼女だったから。

ルセット先生は優しいから、
彼女をセカンドパートナーには しなかった。
彼女もそれを悟って、
銀菓神使にはならなかった。

私にできることは……、
もう、何も知ろうとは思わないこと。

でも、
求めてくれさえすれば、
頼ってくれさえすれば、
いつでも話を聞こうと思う。
いつでも力になろうと思う。

そうできるだけの力を、
付けておこうと思う。

それが、
ルセット先生のパートナーである、
今の私にできること。

天戸キャンパスに出掛けるルセット先生が、背中越しにこう言われました。
「今日も遅くなるから、あと、頼んだよ」

サラの日記218(今までなら、ちゃんと理由を教えてくれていたルセット先生が、 カリンさんのことは何も教えてくれない。)

銀菓神暦2015年11月10日

今までなら、ちゃんと理由を教えてくれていたルセット先生が、
カリンさんのことは何も教えてくれない。
――きっと、聞かない方がいいんだよね――

カリンさんの音色も聞こえて来なくなりました。
でも、風が吹く度、カリンさんのあの音色を捜してしまう。
違う世界に生きる者同士なのに、
カリンさんの音色の中に、私の中の何かと同じものを感じてしまう。
なんだろう、この感じ……。

放課後の地下室で、
カリンさんには届かなくなってしまった のし棒横笛を吹いていました。
それでも ひょっとして、何かの拍子に届いたりするんじゃないかと思って……。

届いたりするんじゃないかと思って……。

……届く?
……届けたい?
あれっ?

――あの音色はカリンさんの波動そのもの?――

ルセット先生が何も教えてくれない理由が分かったような気がしました。
ルセット先生は優しい。
カリンさんを拒んではいない。
私にカリンさんの音色が聞こえてしまうのは、
私の中にあるルセット先生の意識の半分が、カリンさんの音色を拒んではいないから。

私は、
ルセット先生のことを、
まだ、
ほんの少ししか知らない。

サラの日記217(<だめだよ、サラ。彼女はだめだ> <どうして? とってもいい音色なのに>)

銀菓神暦2015年11月9日

昨日の、カリンさんと音色を重ね合わせた時の心地良さが忘れられなくて、
お昼休みの地下製菓室で、目を閉じて、耳を澄ませて、あの音色が流れて来るのを待っていました。
すると、あの音色ではなくて、ルセット先生からのメッセージが流れて来ました。
<だめだよ、サラ。彼女はだめだ>
<どうして? とってもいい音色なのに>
<だめなんだ。関わるな>
ルセット先生は いつものように穏やかでした。でも、心が、動揺で震えているのを感じました。
それと……、
自分を責めているような感情も。

廊下で、ルセット先生とメランジェ先生が話されているのが少し聞こえました。
「……仕事を頼んだんです」
「カリンさんには少し早過ぎましたか……」

どういうことなの?
何が起きてるの?
ルセット先生はカリンさんに何を頼んだの?
何が早過ぎたの?
私はパートナーなのに、
意識の結合だってしてるのに、
どうして何も教えてもらえないの?

ルセット先生に のし棒横笛を取り上げられました。
夜になって返してくださいましたが、
手に取った瞬間に感じました。
カリンさんにはこの笛の音色は届かない。
届かないように術が掛けられています。

サラの日記216(――結界を張らなければならないほどのことなのに、どうして『すまない』なの?――)

銀菓神暦2015年11月8日

研究室はお休み。
ルセット先生は天戸キャンパスと留守神の事前準備で終日留守です。

ルセット先生が『すまない』と言いながら結界を張っていた場景が、何度も何度も頭の中をぐるぐる回っています。

――結界を張らなければならないほどのことなのに、どうして『すまない』なの?――
ぼんやりそんなことを考えていたら、遠くであの音色が流れているのが聞こえてきました。
なんとなく のし棒横笛を手に取って、その音色に重ねて吹いてみました。
危険なのかもしれないけれど、そうせずにはいられませんでした。

しばらくすると遠くのあの音色がやみましたが、そのまま吹き続けていました。
すると、今度は私の のし棒横笛に重ねるようにして、再び遠くのあの音色が流れ始めました。

カリンというのがどんな人なのか分からないけれど、音を重ねているぶんには嫌な感じは全然無くて、ずっとこのまま吹き続けていたい感じがしました。

カリンさんが奏でているのは、おそらく何かの横笛です。
のし棒横笛の音色に似てる。
だけど、愁い(うれい)を帯びた音色。
内に秘めた愁いをすっぽりと包み込むように、温かさで覆われた音色。

あ、ジャックさんが銀菓神使の仮称号試験に合格しました。
明日メランジェ先生を通して教えてもらえるはずなんだけど、それまで待ち切れなくて、自分で銀菓神局まで行ってきちゃったみたい。

サラの日記215(悪い波動は感じない。 なのに、ルセット先生はなぜ結界を張るの?)

銀菓神暦2015年11月7日

「すまない、カリン……」
夜中に、ルセット先生が小さな声でそう言いながら部屋に手刀で結界を張っているのが見えました。
私はそのまま眠っているふりをしていました。

なんとなく分かりました。
カリンって人が、あの、切なくて温かくて心地良い音色を流しているのだと。
でも、悪い波動は感じない。
なのに、ルセット先生はなぜ結界を張るの?

ルセット先生は私の髪を撫でて、
「ごめんね。起こした?」
って、私が起きていることに気付いていらっしゃいました。

「どうして結界を張ったの?」
と聞いてみたけれど、
ルセット先生は、
「なんでもないよ。大丈夫」
とベッドに入ってくると、すぐに眠り始められました。

ルセット先生は午後から天戸でした。
「何か変わったことがあったら いつでも連絡くれて構わないから。……あ、間に合わない時は のし棒横笛を吹けばいい。笛の波動がサラを守ってくれる」
ルセット先生はそう言い残して出掛けられました。

取り敢えず今日は、のし棒横笛の出番はありませんでした。

サラの日記214(ルセット先生は何かを警戒しているような様子でした。)

銀菓神暦2015年11月6日

夜中に目が覚めると、いつの間にかルセット先生が隣りで眠っています。
帰って来るのは私がベッドに入ったあとで、
いつ帰って来ているのかは分かりません。
朝はゆっくり話している時間は無いし、
昼間の仕事中は もちろん ゆっくりは話せない。

ルセット先生が留守神の仕事に行かれるまで あと2週間。
――ミシェル、こんな感じのまま留守神の仕事に行ってしまうのかな……――
不安……っていうよりも、ちょっと淋しい。

淋しいと思いながら中庭のベンチに座っていたら、
風の音に混ざって、昨日と同じ何かの音色が、遠くで流れているのが聞こえました。
誰が奏でているのか、何の音なのか、どこから聞こえてくるのか分からないけれど、
なんとなく心地いい。

ルセット先生の研究室の窓と、メランジェ先生の研究室の窓が、ほとんど同時に開くのが見えました。
ルセット先生もメランジェ先生も、何か不思議なものを見るような目で私を見ていらっしゃいます。

ルセット先生が手刀で私の周りに結界を張るのが見えました。

<サラ、大丈夫?>
ルセット先生は何かを警戒しているような様子でした。
<うん。……何かあったの?>
私には、ルセット先生が なぜ結界を張ったのか分かりませんでした。
<なんでもない。無事ならいいんだ>
ルセット先生は結界を解くと、研究室の窓を閉められました。

いつの間にか、あの心地良い音色は聞こえなくなっていました。

メランジェ先生は、ルセット先生が窓を閉めるのを見届け、自分も窓を閉められました。

サラの日記213(窓もドアも締め切ったメランジェ製菓室の中なのに、 心地良いそよ風を感じました。)

銀菓神暦2015年11月5日

午後、ルセット先生が天戸(あまと)キャンパスに出掛けるのを見届けたあと、ほっとしている自分に気付きました。
以前はルセット先生とゾエさんとの関係が気になって不安だったけど、
今は、ゾエさんなら大丈夫だと、ゾエさんを信じている自分に気付きました。

あの、誰だか分からない彼女がどういう人なのかを知りたい……。
――彼女は誰?――
アグルムの聖石(ひじりいし)に問い掛けてみました。

窓もドアも締め切ったメランジェ製菓室の中なのに、
心地良いそよ風を感じました。
不思議だな……って思いながら、目を閉じてそよ風を感じていました。
遠くに、切なくて優しくて温かい、何かの音色が聞こえていました。

メランジェ製菓室のドアがそっと開きました。
「おや? サラさんでしたか……。ちょっと懐かしい人の気配を感じたのでね」
メランジェ先生の声がしました。
「懐かしい人……ですか?」
私は目を開けて、メランジェ先生の方を向きました。
「サラさんたちとは入れ違いで私の研究室を修了した人ですよ。ちょっと不思議な子でね……」
メランジェ先生の目が遠くなりました。
私はそのままメランジェ先生のお話を聞いていました。
「私も なんとなくは気付いていたんですけどね、……まあ、結局、銀菓神使にはならなくてね。今は、小さな島でお菓子ではないものを作ってるらしいんですよ。その子の気配がしたので、ひょっこり遊びにでも来たのかと思ったんですがね。サラさんでしたか……」
メランジェ先生は にっこりしながら何度もうなずかれていました。

構内の植物館の今秋のキキョウの花は9月に終わっています。
だけど見付けてしまいました。
ここには有るはずのない青紫色のキキョウの花が1輪、足元に落ちているのを。
あの彼女と同じ波動を感じて、慌てて拾おうとすると、キキョウの花はすっと姿を消しました。

サラの日記212(もっともっと たくさんの頼まれごとを引き受けて、花綵(はなづな)アグルム城に帰る時間が無くなっちゃえばいいのにって思ってしまいます。)

銀菓神暦2015年11月4日

メランジェ先生が色々なことに誘ってくださいます。
今日は、まだ着装がうまくいかない人たちへの指導補助をお願いされました。
あと、製菓道具の点検や整備も。
昼間、大学院に居る間は寂しくありません。
もっともっと たくさんの頼まれごとを引き受けて、花綵(はなづな)アグルム城に帰る時間が無くなっちゃえばいいのにって思ってしまいます。
本当はルセット先生と色々話をしてみた方がいいって分かっているけど、
ルセット先生のスケジュールが……なんて、話ができない言い訳を どんどん考えてしまいます。

パートナーになれば、ずっとそばに居れば、気持ちもずっと繋がっているものだと思っていました。
でも……違う。
繋がることを選ぶのか、
離れることを選ぶのかは、
時間や距離じゃない。

私は……
離れることを選ぼうとしている?

自分の中で迷子になってしまいそう。

「ちょっとお願いし過ぎましたね。疲れましたか?」
メランジェ先生が声を掛けてくださいました。
今日も、このなんでもない言葉が、とても温かく感じられました。
ほんの一瞬なのだけど、全部を忘れられる。

サラの日記211(なんとなく分かってしまうから近付けない。)

銀菓神暦2015年11月3日

一緒に居るのに遠い。
なんとなく分かってしまうから近付けない。
それに加え、留守神の準備で忙しそうで、会話らしい会話もできない。

ルセット先生も彼女も、
努めて流さないようにしている。
努めて受けないようにしている。

ルセット先生と彼女の間に何があったの?
ルセット先生が会いに行くと言っていた人は……彼女?

だとしたら、『西瀬忍(にしせしのべ)』は彼女に関係のあることなの?
彼女は西瀬流の忍者?
生きる世界が違うからパートナーにはなれなかった人?
ならなかった人?

パートナーではないのに、
銀菓神使同士でもないのに、
別の世界に生きる者同士なのに、
こんなにも信頼し合った波動が流れているのは……なぜ?

彼女は……誰?

メランジェ製菓室で窓の外をぼんやり眺めていたら、メランジェ先生が隣りに来られました。
「何か見えますか? サラさん?」
なんでもない その言葉に、少しほっとしました。
メランジェ先生は、私が眺めていたのと同じ方を覗きながら、
「クリームを扱うのには いい季節になりましたね」
と、つぶやかれました。

アロゼの休憩室21「この物語に託していること」

サラちゃんは気付いてしまいました。
意識の結合をして、全てを知っていると思っていたルセット先生の中に、自分の知らないルセット先生が居ることを。
『サラの日記210(http://arroser2015.blog.fc2.com/blog-entry-235.html)』

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さて今回は、私がこの物語に託していることについて少しおさらいをしてみようと思います。

このブログで連載している『銀菓神使アロゼ~アロゼ誕生前の物語~サラの日記』の執筆は、
以前からお伝えしているように、製菓を通した環境教育・科学教育及び場面緘黙児支援のための活動です。
登場人物の中に(サラちゃんだけではなく、色んな登場人物にばらまいています。)、場面緘黙時代の私の心の動きを少しずつ乗せて描いています。

それとは別に、もう1つ、この物語に託していることがあります。
私の大切なものを娘に残すこと。
これからしばらくの間は、そちらを中心にしたお話が続きます。

私の大切なものを、
ある時はサラちゃんに、
ある時はルセット先生に、
ある時はジャックさんに、
ある時はメランジェ先生に、
ゾエちゃんや、そのほかの人たちにも乗せて描いています。

そしてこの度、
もうそろそろ登場しそうな雰囲気の彼女にも、
私の一部を乗せて描いていく予定にしています。
ネタバレになるので細かいことは書きませんが、
彼女は忍者ではありません(^^)

忍者ってなんのこと? と思った人は、
『サラの日記208(http://arroser2015.blog.fc2.com/blog-entry-233.html)』を復習してねヽ(^o^)
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