サラの日記24(メランジェ先生は逃げ道?)

銀菓神暦2015年4月30日

本気で考えています。
ジャムやソースのことを専門にしようかな……って。
メランジェ先生の方に逃げ道を作っておきたくて。

ルセット先生と離れてしまうのは不安です。
離れたくないです。
毎日会いたい。
メランジェ先生に指導していただくようになれば、今までみたいには毎日会えなくなるかもしれない。
マヤちゃんやルシアちゃんたちは、これから先、どんどんルセット先生と親しくなっていくんだろうな……。

だけど、ルセット先生のことはきっと何かの事故です。
私は銀菓神使になるために研究室に入ったんだから。
このままじゃルセット先生のことばかり追いかけてしまって、何にも勉強できない。
きっと、ちゃんとした銀菓神使になれない。
今メランジェ先生の方へ動けば、それなりにちゃんとした銀菓神使になれるんじゃないかな……。

ちゃんとした……って何だろう……。

今はルセット先生のそばに居たい。
でも、銀菓神使としてはどうなりたい?

この、もやもやした感じはどうすれば晴れるのでしょうか。
こんな感じのままメランジェ先生にご指導仰いでもいいのでしょうか。
逃げ道にするために?
メランジェ先生は逃げ道?
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サラの日記23(いつの間にかルセット先生の車が横に来ていて、)

銀菓神暦2015年4月29日

図書館の電子コーナーでジャムのことを色々調べてみました。
季節の果物などを長期保存できる技術。
自然の尊さを感じられて、自然の恵みが愛(いと)おしくなります。
ジャムやソースのことを専門にするのも悪くないな……なんて思いました。
ついでに材料になる果物を育ててみるのも面白そうです。

色んな資料があって夢中になっていたら、あっと言う間に閉館時間でした。
図書館を出る前に雑誌コーナーの窓を覗いてみましたが、ルセット先生の車は不在でした。

で、今日はもうルセット先生には会えないんだな……って思いながらゆっくり門に向って歩いていたら、
いつの間にかルセット先生の車が横に来ていて、
ピカッとつやつやな窓がパカッと開いて、
「サラさん、お疲れさま」って声を掛けてくださいました。
びっくりして、とっさに会釈だけはしたけど、何も返せませんでした。
あーあ、何かしゃべればよかった……。

モノレールから車道を見下ろして先生の車を捜してみたけれど、
当たり前だけど、見付かりませんでした。
だけど、何だか にこにこ してしまいました。
周りの人に、一人で にこにこ して気持ち悪い人だと思われるかもしれないと思って、
にこにこするのを何度もやめたけど、
気が付いたらまた、勝手に にこにこ顔になってしまっていました。
外でこんなに にこにこできるのって楽しい。

サラの日記22(メランジェ先生がジャムの試食に誘ってくださいました。)

銀菓神暦2015年4月28日

来月になったら専門を決めないといけないのですが、まだ迷っています。

クリームの手絞りにも関心はあるのですが、
本気で練習できてないからなのか、ちっとも上手くならないので、これは専門とは別に取り組むことにしました。
専門とは別にしておけば、ルセット先生に会える機会が増えちゃうかも……、なんて不真面目な私。

それよりも、この間ルセット先生が「木べら」を使って見せてくださった、その「木べらさばき」がとっても格好良くて、印象に残っていて、「木べら」を使えるものにしたいってところまでは気持ちが固まっています。
動機が不純かもしれませんが、あの時のあの時間は宝物だから、ずっと忘れないためにそうしようと決めています。
あとは、木べらを使って何をするか……です。

図書館の窓から、今日もピカッとつやつや! な、ルセット先生の車を眺めていたら、
メランジェ先生がジャムの試食に誘ってくださいました。
メランジェ先生のところの研究室の皆さんとご一緒させていただきました。
初めての方々の中に入るのは不安でしたが、メランジェ先生のところの研究室の方々は皆さん気さくで、
何と言ってもメランジェ先生が一緒に居てくださるので安心でした。
いっそ、メランジェ先生の研究室に移れたら楽になるのかもしれません。
ジャムは構内の植物館で育てられているイチゴを使ったもので、出来立てのものでした。

まろやかで十分に美味しい物に仕上がっていると思ったのですが、
メランジェ先生、「ジャムはアロゼの称号を持った人が作ると格別なものになるんですがね……」って言われていました。
アロゼの称号は現在欠番中で、メランジェ先生の研究室にもアロゼの候補者はいないのだそうです。

アロゼの称号の人ってどんな仕事をするんだろう……。

サラの日記21(気が付いたら、一言も聞きもらさないように、一生懸命に聞いてしまっています。)

銀菓神暦2015年4月27日

ルセット先生の講義中、ぼーっとしてみようとしました。
分からないことがたくさんできたら、放課後の質問のタネがたくさんできるんじゃないかと思いました。
質問の数だけ先生とおしゃべりすることが増えるんじゃないかと思いました。
放課後の製菓室に行くのは楽しみですが、
何の用意も無しに製菓室に行くのは、やっぱりとっても怖いのです。

だけど、どうしても一生懸命聞いてしまいます。
気が付いたら、一言も聞きもらさないように、一生懸命に聞いてしまっています。
講義に関係ないようなことまで、一つ一つ鮮明に覚えてしまっています。
質問のタネになりそうなことは見付かりませんでした。

もしかしたら……、もっともっと一生懸命に聞いたら何か見付かるのでしょうか。
だけど、どうすればこれ以上一生懸命に聞けるのでしょうか。

劣等生にも優等生にもなれません。
きっと、ただの、ごく普通の研究生です。
今までは、ごく普通でいることに憧れていました。
でも今は、ごく普通の研究生として埋もれてしまうことがとっても不安です。
銀菓神使になるための勉強が終わってしまったら、ルセット先生にお会いできる機会も自然に減っていくでしょう。
いつか、全く会えなくなってしまうのかもしれません。
まだ始まったばかりなのに、そんなことばかり考えてしまいます。

ルセット先生、今日は私が居る間には製菓室に来られませんでした。
淋しいのが半分と、ほっとしたのが半分。

アロゼの休憩室2「ゴールデンウィーク」

はーい(^O^)/!! めでたく2回目の「アロゼの休憩室」がやって来ましたー!

一応、1年間ほぼ毎日連載の予定で始めたのでね、
「アロゼの休憩室」はこの先30回以上やって来なきゃならんのです。
三日坊主ならぬ3回坊主にならないように頑張りまーす!(^^)!

☆彡★☆彡★☆彡★☆彡★☆彡★☆彡

さて、「サラの日記21」からのお話は、ゴールデンウィーク中も毎日22時UPです。

1話から読んでくださっている方は もうお気付きでしょうが、
お話は、場面緘黙を克服するちょっと手前で恋をしてしまったらどんなことになってしまうのか……という、
乙女のキュンキュン物語へと発展していっております。

小学生の我が娘にモニターになってもらい、
読んで面白いか、話が分かるか、をチェックしてから公開しているのですが、
娘はキュンキュンしちゃっているそうです。

サラを取り巻く環境や物語は全くのフィクションですが、
サラが感じていること、心の動きは自身の実体験をもとに綴っています。

日記形式で書いているのは、その方がサラの心情をストレートに表現できると思ったからです。

幼児期、児童期を場面緘黙で過ごし、思春期を迎えた頃に克服できそうになってきた……っていうパターン、結構あると思います。
本当は、あと一押しの支援があるといいのでしょうが、
第三者から見ると、日常のちょっとした挨拶やパターンが決まっている受け答えはできるようになっているため、
場面緘黙真っ只中の頃のようには保護してもらえません。
そして、初対面の人達にはそういう状況であることに気付いてもらえません。おとなしめの変わった子、ぐらいに見えてしまいます。
また、本人のアイデンティティーもほぼ完成しし、ちょっとしたプライドも確立しているお年頃なので、
幼児期、児童期の頃のように素直には周りの大人に頼れません。
つまり、最後の一歩は独りで乗り越えていくしかない……。
その辺りを描いていきたいと筆を進めています。

☆彡★☆彡★☆彡★☆彡★☆彡★☆彡

というわけで、ゴールデンウィークですね。
ウキウキですか? うんざりですか?
えっ? 五月病になりそうですか?

私も社会人になるまでは毎年かかってましたねぇ~、五月病。

社会人になって会社に勤めてからは、ゴールデンウィーク中も当番制で出勤日があったり、
月末の締め処理や月初の注文電話攻撃の応対など、
ただただ一生懸命仕事をしているうちに、いつの間にか日が過ぎていき、
五月病も何も、かかってる暇は無かったよ……って感じでした。

結婚してからは……、やっぱり五月病にかかってる暇は無いですねぇ。
結婚すると、生活全部が仕事ですから。
子どもが生まれたりするともっと。

一番辛かったのは小・中・高・大の学校生活時代かなぁ、やっぱり。
私には2歳ぐらいの頃からの記憶があるのですが、
場面緘黙うんぬんは抜きの日常的な感覚として、その頃から お友だちと遊ぶのは苦手でした。
お友だちの前だと、透明な繭(まゆ)の中に入っているような感覚がありました。
でも、小学生よりも幼い頃って、親に導かれるままに生きてますから、
幼稚園生活の中では、まだ五月病が辛いとかどうとかいうのは無かったです。

大学3年生、4年生の時、ゴールデンウィーク中だけのアルバイトというのに行きました。
広島では有名な某和菓子を、一つ一つ手作業で個包装する仕事でした。
新聞の求人広告で見付けて、申し込みの電話を掛けるのにちょっと勇気が要りましたが、

――あ、それで思い出しました。
その頃大学で取っていた科目の先生が講義の中で、「電話を何気なく使いますが……」みたいな話をされていて、
私は「あり得ん! あり得ん! 電話を何気なく? 前の日から下準備が要るじゃん! 台本書かんといけんじゃん! 何気なく使うなんて絶対あり得ーーーん!」と心の中で叫んだりしていました(^^;)。 
もう、この、一般との感覚の違いの、衝撃の大事件は、あれから約20年経った今でも忘れられません(笑)。
忘れられませんよ、先生~(笑)。――

(はい、脱線して失礼(^^;)。 元の話に戻りまーす。)

電話で申し込んだあとは特に面接も無く、人数が集まるまで早い者勝ちの受け付けだったので、
お菓子好きでおしゃべりが苦手な私にはラッキーな仕事でした。
やり方の説明を聞いたあとは しゃべらなくて大丈夫だし(食品の仕事なので、逆にしゃべらない方がいいのです。)、
ゴールデンウィーク中も外に出続けることで、休みの日と学校のある日の生活リズムのギャップがゆるやかになり、
結果として五月病予防になりました。

ん~、私の場合は、そんなふうに、休みの日も学校のある日も生活のリズムを同じように保つことが五月病予防になっていましたが、ちょっとは参考になるかなぁ……。

五月病ってのはよく聞くし、かかった経験もあるけど、
夏休み明け病、冬休み明け病、春休み明け病ってのはあんまり聞かないなぁ……。なんでかなぁ……。
ゴールデンウィークぐらいの、途中で飛び石になっていたりする、中途半端な長さで休みが続くのがいかんのかしら。
ふと疑問に思いました。

今回は少し長話になってしまいましたね(^^;)
では、良いゴールデンウィークを(^^)/

☆彡★☆彡★☆彡★☆彡★☆彡★☆彡

5月は場面緘黙啓発月間ということで、かんもくネットさんが啓発活動をされています。

かんもくネットさんのサイト

かんもくネットさんのfacebook

場面緘黙啓発月間

サラの日記20(ルセット先生のそばで仕事がしたいです。)

銀菓神暦2015年4月26日

研究室はお休み。
海を見に行きました。
銀菓神使たちが、ほかの惑星に派遣される時に使われる港です。

海の匂いがしました。
今まで気が付かなかったけれど、私、海の匂いは好きじゃないみたいです。
豊かな匂いのところどころに、何か淋しい匂いがします。
波の音も、希望と悲しみが不協和音を奏でています。
今まで感じたことの無かった、新しい発見でした。

今から半年ほど前、
銀菓神使になるために研究室に入ろうと決めた頃、
外の世界を感じることを知りませんでした。
外に出ると私の中の何かが閉ざされる。
ほかの惑星に派遣されることになっても、中身を閉ざした私の器をロボットのように動かして、
ただ仕事としてこなせばいいと割り切っていました。
誰も私の事を知らない場所に行ってしまった方が楽になれると思っていました。
怖くも淋しくも何ともなかった。
だけど今は、独りでほかの惑星に行くなんて、
怖くて、淋しくて、不安で不安で考えられません。

ほかの惑星への派遣、
選ばれないためには、うんと劣等生になればいいのでしょうか。
できれば、ずっと研究室に残って、ルセット先生のそばで仕事がしたいです。
ルセット先生のところに残るためには、うんと優等生でいなくてはいけないのでしょうか。

サラの日記19(ルセット先生の顔が見たくて、足音だけでも聞きたくて、)

銀菓神暦2015年4月25日

家の中に居る時の私、家の外に居る時の私、
最近、その間にそびえ立っていたはずの頑丈な壁が、
どんどん薄くてもろい物になっているのが分かります。

家の外に一歩出ると、シャッターを下ろしてしまったかのように何も感じなかった私の心は、
今はどこに居ても開けっ放しになっていて、
閉めてしまいたくても閉まらなくて、
どこに居ても全てのことが一つ一つ心に響きます。

外では何も感じないことが当たり前だったのに、
急に全てのことに感情を覚えるようになってしまって、
ただ不安でいっぱいです。

ほかの人たちは、いつもこんなにたくさんの感情をうまくコントロールしているのでしょうか。

昨日のような気持ちになるのは嫌で、
ルセット先生の顔が見たくて、足音だけでも聞きたくて、
ただそれだけで製菓室に居ました。

いつもなら、会った時にどんな話をしようかと色々筋書きを考えるのに、
何も考えられなくて、何も思い付かなくて、
何にも準備せずに製菓室に居ました。

筋書きを何にも準備しないっていうのは本当に怖くて、
案の定、会話らしい会話はできなかったけれど、
いつものように戸締りに来られた先生にお会いして、それだけで安心できました。

サラの日記18(もし独りだったら……きっと泣いてた。)

銀菓神暦2015年4月24日

私が見た資料には「しゃもじ」って書かれていましたが、「木べら」とも言うそうです。
色々な大きさ、色々な形の物があるそうですが、
製菓の世界では、それらの総称として「木べら」と言うのが一般的なようです。
昨日のルセット先生が教えてくださいました。

放課後、図書館の、紙媒体の雑誌コーナーで過ごしました。
あんまり毎日製菓室に居るのもどうかと思ったから。
特に何を読みたいということも無かったのだけど、
紙媒体の雑誌だと、窓際で立ち読みしているふうにしながら先生の車を眺めていられるでしょ?

先生の車、ピカッとつやつや。
新品のステンレスボールをうつ伏せにしたみたい。
製菓道具と同じように、よく手入れされてる。
青い空が、きれいに映り込んでいました。

同じ研究室のマヤちゃんとルシアちゃんが、ルセット先生と何か話しながら通り過ぎて行くのが見えました。
なんだか楽しそう。
そうだよね。先生なんだから当たり前だよね。
私も、あんな風に気軽な会話ができたらいいのに……。
下準備をした、筋書きに沿った話し方じゃなくて、
自分の中でパターン化している受け答えじゃなくて、
その時思ったままの、その時感じたままの会話をしてみたい。

窓からそよ風が吹き込んできて、なんだか心がぽっかりしちゃった感じになっていたら、
「今日は風が気持ちいいですね」ってメランジェ先生が隣りに来られました。
―今は誰にも構われたくない― って、一瞬思ったけど、
もし独りだったら……きっと泣いてた。

サラの日記17(ルセット先生に面白い物をいただきました。 絞りの練習用クリーム。)

銀菓神暦2015年4月23日

製菓室で絞りの練習をしていたら、ルセット先生に面白い物をいただきました。
絞りの練習用クリーム。
固型の植物性油脂と砂糖を混ぜ合わせたもので、分離を気にせず何度でも練習できます。
かわいい樹脂ケースに入れてくださっていました。
「特別ですよ」って、作り方も教えてくださいました。
「しゃもじ」と「泡だて器」のこと、先生にお話しする筋書きを色々考えていたのに、
練習用クリームを作る時に先生が使いながら教えてくださったので、話のタネが一つ減ってしまいました。
でも、宝物です。
ルセット先生がくださった練習用クリームはもちろん宝物だけど、
ルセット先生と一緒に練習用クリームを作った時間、
その時のルセット先生との会話は何にも代えがたい宝物です。

ほかには誰も居なかったので、ゆっくりしかしゃべれなくても、ゆっくり聞いてくださいました。
製菓室なのに、先生、着装解除のままでした。これも特別?
先生の瞳は淡いブラウンで、視線は柔らかくて、目を合わせてお話ししていると吸い込まれそうになります。

だけど、そうやって何人もの銀菓神使を育ててこられ、私もその中の一人でしかないってこと、
ちゃんと分かっているから大丈夫です。

サラの日記16(まずはルセット先生の美しい絞りを目指して練習してみることにしました。)

銀菓神暦2015年4月22日

ルセット先生が戸締りに来られるまで製菓室に居ました。
「頑張ってますね、サラさん」って声を掛けてくださいました。
講義の時とは少し違う、ゆったりとした優しい話し方が大好きです。
もう、今すぐにでも言葉にして、口に出してしまいたいぐらい。
でも言わないことにしました。
「ルセット先生は良い先生」ですから……。
銀菓神使になれるまでは、きちんと真面目な弟子でいます。たぶん……。

これは、いつも感じる、心のシャッターが閉まっているような感覚とは違います。
ルセット先生のことを考えている時、心のシャッターは、閉め方がわからないぐらい開いています。
ちょっと油断すると口から飛び出してしまいそうな言葉を、自分の意志で止めています。

クリームを手で絞る練習をしています。
古典製菓の道具、色々使ってみたいのですが、
まずはルセット先生の美しい絞りを目指して練習してみることにしました。

放課後の製菓室、ルセット先生に会えるのは「おまけ」です。絞りの練習が目的です。
……のつもりです。
だけど……、ルセット先生の足音が近付いてくるとドキドキするし、遠ざかると淋しくなるし、ほかの先生が戸締りに来られたら がっかりします。

サラの日記15(メランジェ先生は不思議な雰囲気のする先生です。)

銀菓神暦2015年4月21日

お昼休み、ベンチに座って、ルセット先生が中庭を横切って行かれるのを眺めていたら、
銀菓神使メランジェ先生が隣りに座って来られました。貫録のある、おじいちゃん先生です。
あったかい感じで、「ルセット先生は良い先生ですよ」って、ゆっくりそれだけ言って行かれました。

メランジェ先生は不思議な雰囲気のする先生です。
いつでも何でも分かっているような雰囲気のする先生です。
そばに居ると、とげとげした空気がまあるい空気に変わるんです。
今日もそうでした。
色々考えて とげとげになっていた気持ちが、まあるい気持ちに変わりました。
メランジェ先生の、銀菓神使としての力なのでしょうか……。
異なる物質同士を滑らかに混ぜ合わせる力。
白と黒とを滑らかに混ぜ合わせる力。
それらを受け入れる力。

サラの日記14(コードネーム銀菓神使ルセット先生、本名ミシェル先生。)

銀菓神暦2015年4月20日

コードネーム銀菓神使ルセット先生、本名ミシェル先生。
銀菓神使とその弟子は公(おおやけ)にはラストネームを名乗らない。護身のために。

お昼休みに中庭のベンチに座っていたら、
ルセット先生が、抱えていた書類を中庭にばらまいて……、じゃなくて風に飛ばされて、
先生、慌ててあちこち走って集めてて、
拾うのを手伝いに行きました。
その書類の中に先生の本名が書かれているものを見付けました。
「ありがとう、サラさん」って言ってくださって、その声の響き方がとっても素敵で、
ちょっと笑い掛けてくださって、
講義の時はもっと厳しい感じがするのに、その時は優しい感じで……。
折角お話しできるチャンスだったのに、にっこりするのだけで精一杯でした。

サラの日記13(古典の道具を使うことを専門にすれば、ルセット先生の近くにも居られるかもしれない。)

銀菓神暦2015年4月19日

研究室はお休みの日。
布団の中で色々考え事をしているうちにお昼になっていました。

先週の今頃考えていた「しゃもじ」と「泡だて器」の話、結局できないまま一週間経ってしまいました。
「しゃもじ」と「泡だて器」を使うことを専門にしようかな……。って、なんじゃそりゃ。
だけど、古典の道具を使うことを専門にすれば、ルセット先生の近くにも居られるかもしれない。

んーっ、だめだめっ! ルセット先生の近くに居るために研究するわけじゃないんだから。
だけど、そういうのもアリかなぁ……。無し 無しっ!

サラの日記12(朝の講義のあと、構内の植物館にお花見に行きました。)

銀菓神暦2015年4月18日

朝の講義のあと、構内の植物館にお花見に行きました。
毎年お花見の時期の1週間は構内の植物館が一般開放されるので、親子連れの方もいて賑(にぎ)やかでした。
ルセット先生は独身? こんなこと まさか直接聞けないし……。 どうしたら分かるかな?
そう言えば、先生の本名も知らない。本名、知りたいな……。

専門、古典関係のことにしたいと思っています。ルセット先生のご専門が古典処方箋だから。
だけど古典処方箋は多分選ばない。
ルセット先生と同じ専門だなんて、なんとなくできない。ちょっとだけ違うところに居たい。
ちょっとだけ違うんだけど、似てるところがたくさんあるのがいい。そんなに都合のいいのあるかな?

サラの日記11(朝、研究室に行く途中でルセット先生の車を見かけました。)

銀菓神暦2015年4月17日

朝、研究室に行く途中でルセット先生の車を見かけました。ラッキー!
モノレールから、ふと下を見ると、ちょうど先生が車で出勤されているところでした。
先生の車が変な趣味じゃなくて良かった……。

新学期から10日も経つと、色んなところでグループができています。
私は今回も、どこにも入り損なっちゃったなぁ。
お昼休みは独りで中庭のベンチに居るのが定番になっています。
今心配なことは、この場所がなくなっちゃうことです。
独りで居ることに気を遣ってくれる人があらわれてしまうことがとっても心配。
独りに慣れてしまった今となっては、もう色々入ってきて欲しくない。
でも、だからずっとこんななのかな……。

そういえば、放課後のもう一つの先生スポットを見付けました!
図書館です。雑誌コーナーの窓から先生の車が見えます。
朝見たのと同じ車です。
先生の姿は見えないけど……。

アロゼの休憩室1「作者自己紹介」

どうも~(^O^)/
『銀菓神使アロゼ』を書いている高橋倫子(たかはしともこ)です。
予告も無しに突然始まった「アロゼの休憩室」ですが、
ほぼ10日に1回ぐらいの割合でお届けしていこうかと考えています。

今日は「作者自己紹介」ということで進めていきまーす。

夫1人、子ども1人の40代の主婦です。
(知りたくはないと思いますが、
万が一作者の経歴など知りたいという方は
宇宙製菓学研究室の講師紹介のページに載せていますのでご覧ください。)

物心ついた頃からおとなしめキャラではありましたが、
将来の夢はモモレンジャーで、
幼稚園のトランポリンでジャンプの練習をしたり、ブロック塀によじ登ってポーズをつけて飛び降りる練習をしてみたりと、やってることは活発なタイプの女の子でした。

場面緘黙の症状がはっきりと現れたのは、父の転勤のため、小学校入学後1週間で転校という体験をしたあとです。
転校先の方言に馴染めず、方言で話しかけられても何を言われたのか分からず、分からないので何も答えられず、気が付いたら学校でしゃべれない子になっていました。と同時に、学校でスムーズに動けない子になっていました(このことを「緘動」というそうです)。

当時は今のように情報ツールも発達しておらず、それが場面緘黙であるということを知らぬまま、そしてもちろん自然に治るということも無いまま、小中学生時代を過ごしました。
実は、小学生の時、緘黙を疑ってくださった先生もいらしたのですが、
私の場合、手を挙げて発表したり音読したりはできることや、子ども同士では話せなくても先生になら話ができる……ということから、その時は緘黙ではないという判断をされてしまったため、専門医などに掛かることはありませんでした。

父は転勤族でしたので、誰も自分のことを知らない環境で「しゃべれる子」に変身するチャンスは何度かあったのですが、転校しても転校しても治りませんでした。

「あれ? 治るかも……」と思ったのは、受験を控えた中学3年生の1月半ば、父の転勤で転校した時です。
転校が決まった時には、「どうして今? もう少しで卒業なのに……」と思いましたが、今思えば「治るかも……」という感覚に出会えた転機でした。

転校先の方言が、私の耳に心地良かったのです。
このリズム、このアクセントなら、まねしてしゃべれる! と思いました。
その時点ではまだ「場面緘黙」というものを知らなかった私は、そこから「自分の努力で治す」という戦いを始めました。

場面緘黙という言葉を知ったのは、大学生の時の教育心理学の講義中のことでした。
教科書に1行だけの記載。でも、これは私には大きな収穫でした。

大学卒業後、地元の中小企業の事務員として就職しました。
当時は必死で仕事をしていたつもりでしたが、報連相(ほうれんそう/報告・連絡・相談)のできない問題社員だったと思います。
電話応対も情けないほど苦手で、自分の机の電話の横にはセリフを書いた紙を貼りつけていました。ほかの机の電話を取らなければならない状況の時はセリフを書いた紙を見ることができず、頭の中がドタバタ騒ぎでした。

だから、結婚して家庭を持つなんてあり得ないと思っていたのです。
ところが……、家で家族としゃべるのと同じ感覚でしゃべれる人に出会ってしまったのです。
それが今の主人。

で、場面緘黙を(多分)克服した私は、『銀菓神使アロゼ』のような活動を始めてしまったのです。
これまでの人生が、こういうことのためにあったような気がして。

ざざーっと急ぎ足で書いたので分かりにくいところ満載だと思いますが、
『銀菓神使アロゼ』はこんな私が書いています(*^-^*)

どうぞよろしく~ (^_-)-☆

サラの日記10(ルセット先生が製菓室の戸締りに来られるまで居残りしていたら、必ず会えるんだ!)

銀菓神暦2015年4月16日

製菓室で居残りしました。
古典製菓道具の棚に、昨日ルセット先生が見せてくださったのと同じような絞り袋と口金があるのを見付けました。
昨日のようなことがなかったら、この道具を手に取ることはきっと無かった……と思いながら、作業台の上に絞り袋と口金を並べて、ずーっと ずーっと眺めていました。
気が付いたらすっかり日が暮れていて、片付けをしていたら、
なんと、ルセット先生が入って来られました!
「もうそろそろ閉めますよ」って。
――そっか、ルセット先生が製菓室の戸締りに来られるまで居残りしていたら、必ず会えるんだ!――
なんて思ってしまいました。
製菓室、やっぱり真面目には使えない……。

サラの日記9(ルセット先生と同じぐらいに絞れるようになりたい!)

銀菓神暦2015年4月15日

ルセット先生と研究生3名での懇親会がありました。
と言っても、学食でランチをしながらおしゃべりするだけのものでしたが……。

何をしゃべっていいのか思い付かなかったし、どのタイミングでしゃべり始めていいのかもつかめなかったので、
先生やマヤちゃん、ルシアちゃんが話しているのを聞きながら、
話の内容に合った表情をしながら相づちを打つことだけには一生懸命に参加しました。
マヤちゃんとルシアちゃんが「笑うのこらえなくていいのに」って何度か言ってくれました。
笑うのをこらえてるんじゃなくて、一生懸命笑おうとしているんだけどなぁ。
人から見るとそんなふうに見えるんだ……。

その懇親会で、ルセット先生が面白いものを見せてくださいました。
自分の手でクリームを絞る、古典製菓の技術です。
円錐形の袋に口金をセットして、その中にクリームを入れて絞るんです。
学部生の時の教科書や、話には聞いたことがあったけど、目の前で本物を見たのは初めてだったので感動しました!
もっと手がべたべたになったりするものだと思っていたけど、先生は手も周りも汚すことなく、ささっと簡単そうに絞っていらしゃいました。
機械が絞り出す線よりも繊細で美しい!
ルセット先生と同じぐらいに絞れるようになりたい!

サラの日記8(ルセット先生に会えるかな……と思って。)

銀菓神暦2015年4月14日

放課後、製菓室に行ってみました。ルセット先生に会えるかな……と思って。
ドアの外で、ルセット先生と他の先生が何かを話されているのが聞こえました。
製菓室には私の他には誰も居なかったので、ドアの近くに寄って話し声を聞いていました。
何を話されているのかまではわからなかったけれど、ルセット先生の声の響きが素敵でした。
先生方の足音が遠ざかって行くのが聞こえました。
ルセット先生に会いたかったけれど、本当に製菓室に入って来られたらどうしようかと、実はドキドキしていました。
頭の中で、「しゃもじ」と「泡だて器」の質問の筋書きがグルグルしていました。
製菓室でこんな事をしている私。明日からは真面目に使います、製菓室。
マヤちゃんとルシアちゃんが製菓室に来なくて良かった……。

サラの日記7(何度も何度も頭の中でシミュレーションしてみたけど、ルセット先生にはお話ししませんでした。)

銀菓神暦2015年4月13日

一通りのガイダンスが終わったので、製菓室への立ち入り許可が出ました。
設備は学部生用のものと変わらない感じ。
もっとすごいのかと思っていたので、ちょっと気が抜けました。
でも、もしかしたら、学部生用の製菓室の設備が相当なものだったっていうこと?

研究生用の製菓室に入る時は、本来は銀菓神使スーツ着装なのだけど、私達はまだ着装訓練を受けていないので、学部生の時に着ていた製菓コートでの入室です。

「しゃもじ」と「泡だて器」の話、何度も何度も頭の中でシミュレーションしてみたけど、ルセット先生にはお話ししませんでした。

サラの日記6(ルセット先生は古典処方箋も勉強されていたとお聞きしたので、)

銀菓神暦2015年4月12日

研究室はお休み。
ルセット先生は古典処方箋も勉強されていたとお聞きしたので、先生との話のタネになればいいな……と思って、色々調べてみました。そしたら、面白いものが色々……。

今気になっているのは「しゃもじ」という道具です。木製のものの一部は、使い込むと色が変わって育つんですって。どんな感じなんだろう……。
あと、「泡だて器」。古典処方箋では「泡だて器」っていう道具を使って卵やクリームを泡立てるようになっているんだけど、動力も何もないのに泡立つのかな……。でも、もしこれが本当に使えるものなのだとしたら、動力源を気にせず使えるってことか……。

サラの日記5(ルセット先生の姿を1回でも多く見たくて、夕方まで構内にいました。)

銀菓神暦2015年4月11日

研究室での勉強は朝の1時間だけだったのだけど、ルセット先生の姿を1回でも多く見たくて、夕方まで構内にいました。
お昼休みの先生、今日は着装解除していらっしゃいました。で、学生食堂で食事をしていらっしゃいました。
いつものベンチとは90°東側のベンチに座ると、学生食堂の様子が少し見えるんです。
先生、何歳なのかな。若く見えることもあるけど、中身が……、魂がすごく大人な感じがする……。
先生の周りに学生が何人か寄って来てました。講義中の厳しい感じの先生とは少し違っていて、とっても柔らかい雰囲気で談笑されていました。私も……、あんなふうに行ってみてもいいんだよね。

ベンチでお弁当していたら、同じ研究室の二人が通り過ぎていきました。二人ともにっこりして手を振ってくれたので振り返しました。ちょっと嬉しかったし、なんか安心しました。

サラの日記4(そんな所から私が見てたなんて、先生、気付いていないんだろうな……。)

銀菓神暦2015年4月10日

一日中雨でした。
昨日、中庭には屋根が無いし、雨の日はどうしよう……なんて考えていた私、早くもピンチ!
どこかいい場所ないかな……ってうろうろしていたら、中庭に面した建物の1階がガラス張りになっているのに気が付きました。なんとそこにちょっとしたソファがあるんです。雨の日の場所、ここに決めました!

ルセット先生は今日も銀菓神使スーツのまま中庭を走って行かれました。
先生、お昼休みも着装解除しないなんて、そんなに忙しいのかな。
そんな所から私が見てたなんて、先生、気付いていないんだろうな……。

研究室の方を見上げたら、同じ研究室の二人がお弁当を食べているのが見えました。一緒にいなくて大丈夫なのか、ちょっと心配。でも、一緒にいても会話に入っていけないから苦しくなってしまう。やっぱり、変わった人って思われちゃってるかな。

サラの日記3(銀菓神使スーツの裾(すそ)がひらひらしているのがカッコよかったです。)

銀菓神暦2015年4月9日

研究室での勉強、自分では楽しいと思っているけど、多分彼女たちにはそう見えていないんだろうな……。
楽しいんだけど、彼女たちと何を話したらいいのか思い付かない。
あれこれ考えて変な雰囲気になってしまうのも嫌だし、研究室の外に出て、少し散策しました。
お昼は中庭のベンチで過ごすことにしました。
中庭には屋根が付いていないので、雨の日はどうしようかな……ってちょっと心配だったりしますが、
独りなら慣れてるし、そこなら自分のペースでゆっくりできるし、なんと、ルセット先生が通り掛かるのが見えることがわかったんです。
今日のルセット先生は、銀菓神使スーツのまま、ちょっと急ぎ足で中庭を横切って行かれました。銀菓神使スーツの裾(すそ)がひらひらしているのがカッコよかったです。

サラの日記2(ルセット先生と色々話したいのだけれど、これという話題が見付かりません。)

銀菓神暦2015年4月8日

今日は銀菓神と銀菓神使についてのお話を聞きました。
ほかの物も全部そうなのだけど、菓子もこの銀河の恵みを利用して作られている物。少しの環境の変化によって作ることが不可能になってしまうこともある。それを管理するのが銀菓神の役目。銀菓神だけでは管理しきれないものをそれぞれの分野で護るのが銀菓神使の役目。そういった内容でした。
現在、銀菓神はこの銀河に1名、銀菓神使は26名居るそうです。ほかの惑星に派遣されている人もいるみたい。私にそんなことできるかなぁ……。専門も決めていないし……。
ルセット先生と色々話したいのだけれど、これという話題が見付かりません。

サラの日記1-2(と言うか、私の好きなタイプの方でした!)

銀菓神暦2015年4月7日 夜

今日初めてルセット先生にお会いしました。
詳しいことは何も知らずに研究室に入ってしまったけど、実際にお会いしてみて、素敵な先生だったので安心しました。
と言うか、私の好きなタイプの方でした! でもこれは誰にもナイショ……。
研究室のメンバーは私のほかに二人いました。二人とも女の子。彼女たちはルセット先生のことをよく知っていてルセット先生の研究室を選んだ様子でした。ルセット先生も親しそうにお話しされていました……。
ルセット先生は銀菓神使のコードネームを受けられているだけあって、その場にいらっしゃるだけで凄み(すごみ)があります。
明日が楽しみです。

サラの日記1(今日から銀菓神使ルセット先生の下で、銀菓神使になるための勉強が本格的に始まります。)

銀菓神暦2015年4月7日 朝

今日から銀菓神使ルセット先生の下で、銀菓神使になるための勉強が本格的に始まります。
ルセット先生のご専門は処方箋(レシピ)の研究とのことですが、私はまだ専門を決めていません。
ルセット先生のご指導を仰ぎながらゆっくり考えようと思っています。

あらすじ

古代銀菓神(ぎんがしん)より伝わる秘伝のソース。
食した者にはささやかではあるが永遠の幸せが訪れると伝えられている。
レシピの正統後継者はコードネーム「アロゼ」を名乗る銀菓神使(ぎんがしんし)ただ一人。
秘伝のソースにはこの銀河系での収穫が難しくなりつつある銀菓宝果(ぎんがほうか)が使われている。
その銀菓宝果がどこにあるのかはコードネーム「アロゼ」を名乗る銀菓神使以外に知る者はない。
アロゼよ!! レシピと銀菓宝果を護るのだ!!

と、その前に……、

銀菓神使になるため
銀菓神局附属大学 花綵(はなづな)キャンパス 大学院の研究室で勉強を始めたサラ(後のアロゼ)の、
キュンと切ないラブストーリーを日記形式でお届け。
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